三角比から三角関数へ
数Iでは,\ 三角比$\sinθ,\ \cosθ,\ \tanθ$について学習した.
三角形の計量を目的としていたので,\ $θ$は$0°$から$180°$の範囲で考えれば十分であった.
$\sinθ,\ \cosθ,\ \tanθ$を$θ$の関数としてより一般的に考えるのが三角関数分野である.
このとき,\ 「一般角」と「弧度法」が必要になるので,\ 先に学習する.
一般角
平面上で原点Oを端点とする半直線OPを点Oを中心として回転させる.
この半直線OPを動径といい,\ 動径の最初の位置を表す半直線OXを始線という.
反時計回りを正の角,\ 時計回りを負の角として,\ 始線からどれだけ回転したかを表す.
このように,\ 回転の向きと大きさを表す量として全ての実数に拡張した角を一般角という.
$±\,360°$回転で元の位置に戻るから,\ $θ+360°× n\ (n:整数)$が表す動径は同じ位置}にある.
が表す動径は同じ位置にある.}
長らく,\ 1回転分の角の大きさを360$°$とする度数法によって角度を表してきた.
360という数は1年の日数に由来すると言われるが,\ いかんせん数学的な根拠に乏しい.
常に一定であるものを基準として角度を定義するのが数学的である.
同じ中心角$60°$をもつ以下の3つの相似な扇形に着目してほしい.
なお,\ 半径$r$,\ 中心角$60°$の扇形の弧長は$2π r×60°}{360°}=13π r$である. \\
角が同じである以上,\ 扇形の大きさに影響されず一定値をとる定義でなければならない.
実は,\ この3つの扇形の中に隠れた一定が存在するのだが,\ 気付けるだろうか.
一定なのは弧長と半径の\.{比である.
$(弧長):(半径)=13π:1=23π:2=π:3$であり,\ 扇形の大きさによらず一定である.
以上から,\ 角の大きさを$弧長l{半径r$と定義するのが数学的であるといえる.
このような角の大きさの表し方を弧度法といい,\ 単位は\.{便}\.{宜}\.{的にラジアンとしておく.
上の扇形の例でいえば,\ $60°=π}{3}\,ラジアン$となる.
教科書や参考書ではより単純化させた定義がなされている.
半径1の円の弧長1に対する中心角を1ラジアンと定義する.
扇形の大きさによらないのであれば,\ 半径1の扇形で角の大きさを考えれば十分である.
$ lr$において半径$r=1$とし,\ さらに弧長も$l=1$としたとき中心角が1ラジアンとなる. \\
ただし,\ 1ラジアンを基準とするのは実用性に欠ける.
弧長と中心角の大きさは比例するから,\ 弧長$θ$のときの中心角は$θ$ラジアンである(右図).
要するに,\ 半径1の円で考えると弧長と中心角の大きさが等しくなる.
半径1の円の周長は$2π$であるから,\ $360°=2π\,ラジアン$となる.
それゆえ$180°=π\,ラジアン$であり,\ これを基準とするのが最も実用的である.
なお,\ $180°=π\ ラジアンより,\ 1ラジアン}=180}{π}°≒180}{3.14}°=57.3°}\ である.$
さて,\ 先程も少し触れたが,\ 単位のラジアンは弧度法を示す便宜上のものにすぎない.
実際には,\ 単なる比なのであるから無次元(単位なし)である.
つまり,\ 上図の1ラジアンは,\ 正確には単に1\ (←これが角度)である.
弧度法を用いることで,\ 角の大きさが普通の実数値になるのである.
よって,\ 単位をつけず,\ $180°=π$のように書くのが普通である.
次の角を,\ 度数は弧度に,\ 弧度は度数に換算せよ.
扇形の弧長と面積 \\
半径$r$,\ 中心角$θ$ラジアンの扇形の弧長を$l$,\ 面積を$S$とする.
中心角2π\,ラジアン(360°)に対する弧長は2π r\ (円周の長さ)である.
よって (中心角):(弧長)=θ:l=2π:2π r}\ より l=rθ
なお,\ θ= lr\,と定義した場合には直ちにl=rθ\,が導かれる.
中心角2π\,ラジアン(360°)に対する面積は\,π r^2\ (円の面積)である.
よって (中心角):(面積)=θ:S=2π:π r^2}\ より S=12r^2θ
中学で学習した度数法の場合の以下の公式と比較すると,\ 弧度法がいかに本質的であるかがわかる.
扇形と弧長の面積は導き方も含めて暗記}しておくことが望ましい.
ちなみに,\ 扇形(円)の面積をrで微分すると弧長に,\ 弧長をrで積分すると面積}になる.