整数分野は非常に厄介な分野である。
整数自体は小学生のときから慣れ親しんできた。よって、問題文の意味だけならば小学生や中学生でも理解できるものが少なくない。ところが、実際に問題を解こうとすると思いの外難しいことに気付かされる。
難しさの1つは、整数問題に対してのアプローチは他分野とは大きく異なり、独特であるものが多いことにある。整数問題は他分野とは独立しており、多角的な理解が難しいのである。ただし、数列分野とはかなりの関連がある。
さらに、他分野ほどパターンや解法が画一的でないことも厄介である。もちろん、ある程度のパターンや原理・法則などは存在する。しかし、実際には自分の手や頭を動かして、様々に実験したり工夫したり思考したりということが要求される。「とりあえずこの方法を試してみよう」「こっちの方法ならどうかな」「これを組み合わせて使ってみようか」などと試行錯誤する必要がある。普段からパズルなどを好む人にとっては面白く感じられるだろうが、そうでない人にとってはかなりの負担となる。
整数問題は難関大学であるほど入試において大きな比重を占め、ほぼ毎年のように出題されている。2014年受験生までの長い間、整数分野はそもそも教育課程にはない分野であった。そのため、整数問題に対して強烈な苦手意識を持っている学生が多かった。どんなに頭の良い学生でも習ってもおらず勉強してもいないものを解けるはずはない。にもかかわらず、整数の基本性質は中学までに学習済みという理屈の元、入試で当然のごとく出題されていたのである。教育課程に含まれた2015年以降、整数問題は各大学で堂々と出題されている。
当カテゴリでは、一応パターンと思われるもの、応用上原理の理解が重要と思われるものなどを取り上げる。単純にパターンとして丸暗記するのではなく、発想として習得しておき、実際の試験では各問題ごとに柔軟に対応してほしい。
教科書などとは順序が異なるが、先に以下のカテゴリで整数の扱いに慣れておくと、当カテゴリの内容が学習しやすくなる。ような気がする。。。
また、数Bの数列など他分野との融合問題も取り上げているので、その部分は各分野を学習後でよい。
当カテゴリ内記事一覧
- 素数と合成数、約数の対称性、素因数分解の一意性、分数が整数となる条件
- 約数と倍数、整数問題の極意
- 約数の個数と総和、平方数であることの証明
- 素数の定義と性質、素数が無限にあることの証明
- 3と9、4と8、6と12の倍数(余り)の判定法
- 最大公約数と最小公倍数の数式表現
- 互いに素であることの証明、互いに素な自然数の性質
- 互いに素な自然数の個数(オイラー関数)
- 階乗の素因数の個数(階乗の末尾に連続して並ぶ0の個数)
- 整数の除法、除法の原理 a=qb+r (0≦r<b)
- 余りが一致する条件、2乗で下2桁が変わらない自然数
- 合同式の基本 a≡b (mod p)
- 累乗数の余りと下位桁の数を求める3つの方法
- 剰余類と連続整数の積による倍数の証明
- 剰余類と素数の分布、三つ子素数が1組しかないことの証明
- 平方剰余とピタゴラス数a²+b²=c²の性質の証明(背理法)
- 互除法の原理と証明、ユークリッドの互除法、既約分数であることの証明
- ax+by=1 (a,b:互いに素) の整数解の存在性、格子点と直線の最短距離
- 2元1次不定方程式 ax+by=c の整数解
- ax+byで表せる整数とax+by=Nの解の構造
- 整数係数方程式の整数解・有理数解に関する定理の証明
- 記数法の変換(整数)(n進法→10進法、10進法→n進法)、記数法の決定
- 記数法の変換(小数)(n進法→10進法、10進法→n進法)
- 2進法の四則演算
- n進数の桁数
- n進数の各位の数の決定
- n進法の順序(n種類の数字で表された自然数列)
- 整数からなる数列の漸化式
- すべての整数xに対してf(x)=ax²+bx+cが整数となる条件(整数値多項式)
- ガウス記号[x]の方程式
- pCkの素因数とフェルマーの小定理
- (a+√b)nと(a-√b)nの共役性