ペル方程式x²-Dy²=±1の性質と正則連分数展開

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不定方程式$x^2-Dy^2=±\,1\ (x,\ y:整数,\ D:平方数ではない自然数})$をペル方程式という.}  図形的には,\ 双曲線(数III)上の格子点$(x,\ y座標がともに整数)$を求めることに相当する. & 数式 & 解の図形的意味 & 対象 & 備考 \hline 1次不定方程式 & ax+by=c & 直線上の格子点 & 初級者 & 別項で解説済 ピタゴラス数 & x^2+y^2=z^2 & 円上の格子点 & 中級者 & 別項で解説済 ペル方程式 & x^2-Dy^2=±\,1 & 双曲線上の格子点  & 上級者 & 本項と次項で解説  $x^2-Dy^2=±\,1$は,\ $D$が平方数のときは因数分解できるから,\ 初級者でも容易に解ける.  例えば,\ $x^2-4y^2=1$の整数解は,\ $(x+2y)(x-2y)=1$として求めれば済む.  よって,\ $D$が平方数ではない自然数の場合をペル方程式と呼び,\ 考察対象とするのである.  また,\ ペル方程式$x^2-Dy^2=1$は,\ $(±\,1,\ 0)$という自明な解をもつ.  さらに,\ $(x,\ y)$が解であるとき,\ 自動的に$(-\,x,\ y),\ (x,\ -\,y),\ (-\,x,\ -\,y)$も解にもつ.  よって,\ 自然数解($x>0,\ y>0$を満たす解)のみを考察対象とすれば十分である.  関連問題を解く上で,\ 以下を知識としてもっておくことを推奨する.  証明は難しいので取り上げない{ペル方程式の性質   [1]\ \ $x^2-Dy^2=1}$の自然数解$(x,\ y)}$は無数に存在する.   [2]\ \ $x^2-Dy^2=-\,1}$の自然数解$(x,\ y)}$は存在するとは限らない.   [1]}\ \ 存在するならば,\ 無数に存在する.   [3]\ \ $x^2-Dy^2=±\,1}$の全ての自然数解は$√ D}$の正則連分数展開による近似分数に現れる.  ペル方程式の最小解   自然数解の中で$x+y√ D}$を最小にする解を最小解という.\ $(x_0,\ y_0)$と表すことにする.   $√ D$を正則連分数展開したときの循環の周期を$k$,\ 第$n$次近似分数を$P_n}{Q_n}$}とする.   $k$が偶数}のとき $x^2-Dy^2=1$の最小解は  $(x_0,\ y_0)=(P_{k-1},\ Q_{k-1})}$   $k$が偶数のとき} $x^2-Dy^2=-\,1$の解は存在しない.}   $k$が奇数}のとき $x^2-Dy^2=1$の最小解は  $(x_0,\ y_0)=(P_{2k-1},\ Q_{2k-1})}$   $k$が偶数のとき} $x^2-Dy^2=-\,1$の最小解は $(x_0,\ y_0)=(P_{k-1},\ Q_{k-1})}$ 後の問題でわかるように,\ ペル方程式は最小解さえ求まれば,\ それを元に無数の解を生成できる. 最小解は,\ √ D\,の正則連分数展開を利用して求められることが知られている. 正則連分数展開については別項で既に解説済である. まとめると上のようになるが,\ 理解するには具体例が必要だろう.\ \ x^2-7y^2=±\,1の例を示す. 2次無理数(整数係数2次方程式の解となる無理数)を正則連分数展開すると循環するのであった. 循環する部分を上線で表すと √7=\gauss{2\ ;\,\overline{1,\ 1,\ 1,\ 4}\,}   循環の周期は4\ (偶数) よって,\ x^2-7y^2=-\,1の解は存在しない. 一方,\ x^2-7y^2=1の最小解は,\ 第3次近似分数の分子と分母である(循環の1つ前で打ち切る). 実際,\ \gauss{2\ ;\,1,\ 1,\ 1}=2+1}{1+1}{1+1}{1=8}{3}\ より,\ 8^2-7・3^2=1が成り立つ. x^2-13y^2=±\,1の例を示す.  √{13}=\gauss{3\ ;\,\overline{1,\ 1,\ 1,\ 1,\ 6}\,}   循環の周期は5\ (奇数) x^2-13y^2=1の最小解は,\ 第9次近似分数の分子と分母である. これは周期5を2つ分で1つの周期10\,(偶数)とみなし,\ 1つ前で打ち切ることに相当する.  \gauss{3\ ;\,1,\ 1,\ 1,\ 1,\ 6,\ 1,\ 1,\ 1,\ 1}=649}{180}\ より,\ 649^2-13・180^2=1が成り立つ. x^2-13y^2=-\,1の最小解は,\ 第4次近似分数の分子と分母である.  \gauss{3\ ;\,1,\ 1,\ 1,\ 1}=18}{5}\ より,\ 18^2-13・5^2=-\,1が成り立つ. ペル方程式と正則連分数展開が無関係ではないことは,\ 直感的には以下のように理解できる. √2\,を有理数で近似するとしよう. √2≒ xy\ (x,\ y:自然数),\ つまりx^2-2y^2≒0となる自然数x,\ yを探せばよい. しかし,\ √2= xy\,は成り立たないから,\ x^2-2y^2=0を満たす自然数x,\ yは存在しない. =0になりえないから,\ 0の次のx^2-2y^2=±\,1を満たすx,\ yが最もよく近似できるわけである. (a^2-nb^2)(c^2-nd^2)=(ac+nbd)^2-n(ad+bc)^2$が成り立つことを示せ. (2)\ \ $x^2-2y^2=1$の自然数解$(x,\ y)$が無数に存在することを示せ. (3)\ \ $x^2-2y^2=-\,1$の自然数解$(x,\ y)$が無数に存在することを示せ. (4)\ \ $x^2-3y^2=-\,1$の整数解は存在しないことを示せ. \\  (1)\ \ 左辺と右辺はいずれも$a^2c^2-nb^2c^2-na^2d^2+n^2b^2d^2$であるから成り立つ. $\left[l} ブラーマグプタの恒等式}の証明であり,\ 両辺を展開するだけである. よく見かけるのは,\ n=-\,1のときの(a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac+bd)^2+(ad-bc)^2\,である. よって,\ ①の自然数解$(a,\ b)$から新たな自然数解$(a^2+2b^2},\ 2ab})$を作り出せる. ①の自然数解$(3,\ 2)}$に対して,\ この操作を無限に繰り返すことができる. この操作で作られるすべての自然数解は互いに異なる. ∴$ $x^2-2y^2=1}$の自然数解は無数に存在する. 自然数解$(a,\ b)$から新たな自然数解$(3a+4b},\ 2a+3b})$を作り出せる. ①の自然数解$(3,\ 2)}$,\ ②の自然数解(1,\ 1)}に対し,\ この操作を無限に繰り返せる. この操作で作られるすべての自然数解は互いに異なる. ∴$ $x^2-2y^2=±\,1}$の自然数解は無数に存在する.  [\,漸化式を利用して(2),\ (3)をまとめて証明}\,] $(1+√2\,)^n=a_n+b_n√2}$となるように自然数$a_n,\ b_n$を定める. このとき,\ $a_{n+1}=a_n+2b_n},\ \ b_{n+1}=a_n+b_n}$が成り立つ. また,\ $(1-√2\,)^n=a_n-b_n√2}$と表せる(ここまでの証明は前項を参照). 2式$(1±√2\,)^n=a_n±\,b_n√2$の両辺を掛けると $(-\,1)^n={a_n}^2-2{b_n}^2}$ $n$が奇数}のとき     $x^2-2y^2=-\,1}$の解$(a_n,\ b_n)$から$x^2-2y^2=1}$の解$(a_{n+1,\ b_{n+1)$を作り出せる. $n$が偶数}のとき     $x^2-2y^2=1}$の解$(a_n,\ b_n)$から$x^2-2y^2=-\,1}$の解$(a_{n+1,\ b_{n+1)$を作り出せる. $x^2-2y^2=-\,1$の解$(a_1,\ b_1)=(1,\ 1)}$に対し,\ この操作を無限に繰り返すことができる.} $a_{n+1}=a_n+2b_n>a_n}$より,\ この操作で作られるすべての自然数解は互いに異なる. x^2-2y^2=±\,1}$の自然数解は無数に存在する. 一般解を求めずとも,\ 無数の解を作り出す方法さえ示せば十分}である. (1)の等式をどのように利用するかが問われる.\ とりあえず,\ n=2とする. さらに,\ ac+2bd=A,\ ad+bc=Bとすると,\ (a^2-2b^2)(c^2-2d^2)=A^2-2B^2\,となる. a^2-2b^2,\ c^2-2d^2,\ A^2-2B^2\,がいずれもx^2-2y^2\,の形をしていることが重要である. (a,\ b),\ (c,\ d)がx^2-2y^2=1の解ならば,\ a^2-2b^2=1,\ c^2-2d^2=1より1=A^2-2B^2\,となる. これは,\ (A,\ B)もx^2-2y^2=1の解であることを意味する. 2組の解(a,\ b),\ (c,\ d)から新たな解(A,\ B)=(ac+2bd,\ ad+bc)を作り出せる}わけである. a,\ b,\ c,\ dが自然数のときac+2bd,\ ad+bcも自然数であるから,\ (A,\ B)は自然数解である. さらにc=a,\ d=bとすると1組の解(a,\,b)から新たな解(a^2+2b^2,\,2ab)を作り出せるようになる. この新たな解を(M,\ N)として,\ さらに新たな解(M^2+2N^2,\ 2MN)を作り出せる. 1組の解さえあれば,\ それを元に次々と新たな解を作り出せる}というわけである. Dの値が小さい場合は,\ しらみつぶしでも最小解を見つけることが可能である. しらみつぶしすれば十分である. (2,\ 1),\ (3,\ 1),\ (3,\ 2)までで,\ x^2-2y^2=1が(3,\ 2)を解にもつことがわかる. ここから,\ (3,\ 2)\ →\ (17,\ 12)\ →\ (577,\ 408)\ →\ ・・・・・・\ のように新たな解を作り出していける. なお,\ この方法ではx^2-2y^2=1のすべての自然数解を作り出すことはできない. 無数に存在することを示すには,\ 解が循環しないことの確認}が必要である. a,\ bが自然数のときより,\ 新たな解のxの値は元の解のxの値よりも必ず大きくなる.=””=”” よって,\=”” 新たな解が既存の解と再び一致することはない.=”” =”” 本解の方法は初見でも気付きやすいが,\=”” (3)には通用しないのが難点である.=”” a^2-2b^2=”-\,1のとき,\” 2乗によって1=”(a^2+2b^2)^2-2(2ab)^2\,となってしまうからである.” 実は,\=”” c^2-2d^2=”1となるように設定}すると,\” 2乗されないので(3)の場合も同様に証明できる.=”” ±\,1のいずれであっても,\=”” (a,\=”” b)から新たな解(3a+4b,\=”” 2a+3b)を作り出せることがわかる.=””=”” x^2-2y^2=”1の自然数解  (3,\” 2)\=”” →\=”” (17,\=”” 12)\=”” (99,\=”” 70)\=”” (577,\=”” 408)\=”” ・・・・・・\=”” 1)\=”” (7,\=”” 5)\=”” (41,\=”” 29)\=”” (239,\=”” 169)\=”” 前項でも少し触れたが,\=”” (a±√=”” b\,)^n\,の共役性と漸化式を利用する方法}もある(別解2).=”” 試験ではこの解法に誘導されることが圧倒的に多いので一番重要である.=”” {a_n}^2-2{b_n}^2=”(-\,1)^n\,は ” nが偶数のとき {a_n}^2-2{b_n}^2=”1″ nが奇数のとき {a_n}^2-2{b_n}^2=”-\,1″ }=”” (a_1,\=”” b_1),\=”” (a_3,\=”” b_3),\=”” ・・・\=”” はx^2-2y^2=”-\,1,\” \=”” (a_2,\=”” b_2),\=”” (a_4,\=”” b_4),\=”” つまり,\=”” (a_n,\=”” b_n)から(a_{n+1},\=”” b_{n+1})を作り出すと,\=””=””  (1,\=”” (3,\=”” ・・・・・・=”” √2\,の正則連分数展開による近似分数に現れる.=””  √2=”\gauss{1\” ;\,\overline{2}\,}より \gauss{1\=”” ;\,2}=”32,\” \gauss{1\=”” ;\,2,\=”” 2}=”75,\” 2,\=”” 逆は一般には成り立たない.\=”” すべての近似分数がx^2-dy^2=”±\,1の解になるとは限らない.” √2\,の場合はたまたま循環の周期が1なので,\=”” すべての近似分数がx^2-2y^2=”(-\,1)^n\,の解となる.”  (4)}\=”” 一方,\=”” $(右辺)}=”-\,1≡2±od3}$であるから,\” これは矛盾}である.=””  x^2-3y^2=”-\,1の整数解は存在しない.}$” 不定方程式が解をもたないことの証明は,\=”” 両辺の余りの不一致を示す}のが基本であった.=”” 係数3があるので3で割ったときの余りを調べてみると,\=”” 左辺は0,\=”” 1,\=”” 右辺は2となり矛盾する.<="" div="">
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高校数学A 整数
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