すべての整数$n}$に対して$f(n)}$が整数となるような多項式$f(n)}$を整数値多項式という.
$k}$次式$f(n)}$が整数値多項式であるための必要十分条件として,\ 3つの同値な表現がある.
これを知識としてもっておくと,\ 問題の見通しがよくなる.
また,\ 数Bの数列を学習済みならば理解しやすくなる.
$[1]$\ \ $f(0)が整数}\ \ かつ\ \ 階差f(n+1)-f(n)が常に整数$
$[2]$\ \ $連続するk+1個の整数nに対してf(n)が整数である$
$[3]$\ \ $a_n,\ ・・・,\ a_0\,を整数},\ P_k(n)をk次階乗関数とするとき$
[1]}\ \ 3つの中で最も単純で扱いやすい表現である.
\ \ f(n+1)-f(n)が常に整数は,\ f(1)-f(0),\ f(2)-f(1),\ ・・・\ がすべて整数ということである.
\ \ f(0)=(整数)かつf(1)-f(0)=(整数)より,\ f(1)=(整数)となる.
\ \ f(1)=(整数)かつf(2)-f(1)=(整数)より,\ f(2)=(整数)となる.
\ \ これを繰り返すと,\ すべての整数n\,(≧0)に対してf(n)=(整数)となるのはほぼ明らかである.
\ \ 階差が常に整数は,\ f(0)-f(-\,1),\ f(-\,1)-f(-\,2),\ ・・・\ がすべて整数ということでもある.
\ \ f(0)=(整数)かつf(0)-f(-\,1)=(整数)のとき,\ f(-\,1)=(整数)となる.
\ \ よって,\ 負数も含めたすべての整数nに対してf(n)=(整数)となることもわかる.
\ \ 逆に,\ すべての整数nに対してf(n)が整数のとき,\ f(n+1)-f(n)は明らかに整数である.
\ \ よって,\ [1]は必要十分条件である.
\ \ 一般に,\ f(n)がk次式のとき,\ f(n+1)-f(n)はk-1次式}となる.
\ \ 階差を考えることで,\ より次数の低い多項式に帰着するわけである.
[2]}\ \ f(n)が2次式ならば,\ 「連続する3個の整数nに対してf(n)が整数」が必要十分条件}である.
\ \ 例えば,\ 2次式f(n)に対して,\ f(0),\ f(1),\ f(2)がすべて整数であるとする.
\ \ これだけで,\ すべての整数nに対してf(n)が整数となることが確定する(後で証明).
\ \ 逆「\,2次式f(n)が常に整数\ ⇒\ f(0),\ f(1),\ f(2)は整数」は明らかである.
[3]}\ \ k個の連続整数の積n(n-1)・・・(n-k+1)をk!\,で割った関数をP_k(n)}とする.
\ \ P_k(n)はk次式}であり,\ これをk次階乗関数}と呼ぶ.
\ \ k個の連続整数の積はk!\,で割り切れる}のであったから,\ P_k(n)は常に整数である.
\ \ よって,\ 「\,f(n)=a_nP_k(n)+・・・+a_0\ ⇒\ f(n)は整数値多項式」が成り立つ.
\ \ なお,\ n≧ kのとき,\ P_0(n)=C n0,\ P_1(n)=C n1,\ P_2(n)=C n2,\ ・・・,\ P_k(n)=C nk\ とも表せる.
\ \ 「\,f(n)は整数値多項式\ ⇒\ f(n)=a_nP_k(n)+・・・+a_0\,の形で表せる」は後で示す.
が整数値多項式であることを示せ. \\
$n(n-1)(n-2)$は連続3整数の積}であるから,\ $3!=6$の倍数である.
∴ f(n)は整数値多項式である.}f(n+1)-f(n)$nとn+11$は偶奇が異なる}から,\ $n(n+11)$は偶数}である.
∴$ $f(0)もf(n+1)-f(n)も整数}なので,\ 帰納的にf(n)は整数}である.$}
低次の具体的な多項式が整数値多項式であることを示すのは難しくない.
通分すると,\ 分子が6の倍数であることの証明に帰着する.
例によってn=6k,\ 6k+1,\ ・・・,\ 6k+5と場合分けして証明することもできるが,\ 面倒である.
一般に,\ 連続k整数の積はk!\,で割り切れる}から,\ 無理矢理連続3整数の積の形を作る.
[3]の事実を考慮すると自然な発想である.
実際には,\ n(n-1)(n-2)=n^3-3n^2+2nを作り,\ つじつまを合わせればよい.
数II}を学習済みならば,\ n^3-3n^2+2nで割り算すると考えることもできる.
ちなみに,\ n(3n-1)=6・n(n-1)}{2}+2nより,\ f(n)=C n3+6C n2+2C n1\ (n≧3)である.
別解は,\ 階差f(n+1)-f(n)を利用するものである.
2次式に帰着するが,\ 計算が面倒で,\ 結局はその2次式が整数となることを示すための変形を要する.
また,\ f(0)と階差が整数となるときf(n)が常に整数となることを自明としてよいかは微妙である.
同じ操作を繰り返せばほぼ明らかに成り立つ場合,\ 「帰納的に」と記述して済ませる方法がある.
すべての整数nに対して,\ f(n)=an^2+bn+c\ \ (a,\ b,\ c:実数)\ が整数となるための$
$a,\ b,\ cの必要十分条件を求めよ.$ \\
{g(n)=f(n+1)-f(n)}$とする.
すべての整数$n$に対して$f(n)$が整数であるとする.
このとき明らかに,\ $f(0)$は整数で,\ なおかつすべての整数$n$に対して$g(n)$は整数である.
$f(0)$が整数で,\ なおかつすべての整数$n$に対して$g(n)$が整数であるとする.
$n$が正の整数}のとき $f(n)=f(0)+\{g(0)+・・・+g(n-1)\}$は整数}である.
$n$が負の整数}のとき $f(n)=f(0)-\{g(-1)+・・・+g(n)\}$は整数}である.
よって,\ すべての整数$n$に対して$f(n)$は整数である.
$f(n)が常に整数となるための必要十分条件は$
$f(0)=c\ が整数}\ \ かつ\ \ f(n+1)-f(n)=g(n)=2an+a+b\ が整数}$}
$g(n)が常に整数となるための必要十分条件は$
$g(0)=a+b\ が整数}\ \ かつ\ \ g(n+1)-g(n)=2a\ が整数}$}
∴ 2a,\ a+b,\ cがすべて整数}となることが必要十分条件である.$}
「\,f(0)が整数\ かつ\ f(n+1)-f(n)が常に整数\ ⇔\ f(n)が常に整数」を利用する.
\Longleftarrow は明らかだろう.\ \ ⇒ は先程「帰納的に」で済ませたが,\ 今回はきちんと記述した.
解答がわかりにくいならば,\ 具体的な整数で考えてみればよい.
f(n)は以下のように,\ f(0)とg(0),\ ・・・,\ g(n-1)の和で表される.
f(0),\ g(0),\ ・・・,\ g(n-1)がすべて整数であるならば,\ f(n)も整数である.
一見巧妙な変形に思えるかもしれないが,\ 数 Bで学習する階差数列の公式に他ならない.
つまり,\ f(n)の階差数列がg(n)であるから,\ f(n)=f(0)+Σ{k=0}{n-1}g(k)\ というだけの話なのである.
ただし,\ 数列では基本的に考えない負の整数の場合も考慮する必要がある.
f(n)は2次式なので,\ 2回階差をとると定数のみの式}となり,\ 必要十分条件が求められる.
f(n+1)-f(n)=a(n+1)^2+b(n+1)+c-(an^2+bn+c)=2an+a+b
g(n+1)-f(n)=2a(n+1)+a+b-(2an+a+b)=2a
f(n)=an^2+bn+c\ \ (a,\ b,\ c:実数)とする.$
(1)\ \ $f(-1),\ f(0),\ f(1)がすべて整数ならば,\ すべての整数nに対してf(n)が整数で$
\ \ あることを示せ.
(2)\ \ $f(2019),\ f(2020),\ f(2021)がすべて整数ならば,\ すべての整数nに対してf(n)$
\ \ が整数であることを示せ. \\
f(0)=c} & ・・・・・・\,①
\ f(1)=a+b+c} & ・・・・・・\,②
\ f(-1)=a-b+c} & ・・・・・・\,③
n(n+1),\ n(n-1)\ は連続2整数の積}であるから,\ 偶数である.$
∴ すべての整数nに対してf(n)は整数である.}$} \\
(2)\ \ $g(n)=f(n+2020)}$とおくと
$g(n)=a(n+2020)^2+b(n+2020)+c=an^2+b’n+c’\ \ (a,\ b’,\ c’;実数)$\ と表せる.
ここで,\ $g(-1)=f(2019),\ \ g(0)=f(2020),\ \ g(1)=f(2021)$はすべて整数}である.
よって,\ (1)よりすべての整数$m$に対して$g(m)$は整数}である.
∴ すべての整数nに対してf(n)=g(n-2020)は整数である.}$
(1)\ \ a+b,\ a-b,\ cがすべて整数であるとき,\ f(n)が常に整数となる}ことを示すことになる.
\ \ わかりやすくするためにa+b,\ a-bを1つの文字でおくとよい.
\ \ 後は,\ a,\ bを消去してl,\ m,\ cで整理する}と,\ l,\ m,\ cが整数であることを利用できる.
\ \ 逆は明らかであるから,\ a+b,\ a-b,\ cがすべて整数であることは必要十分条件である.
\ \ 前問の結果と異なるが,\ 同値な表現は無数にある.
\ \ 実際,\ 「\,2a,\ a+b,\ cが整数\ ⇔\ a+b,\ a-b,\ cが整数」である.
\ \ これは,\ (a+b)+(a-b)=2aという関係から明らかだろう.
(2)\ \ 一旦g(n)=f(n+2020)という関数を考えると,\ (1)を利用できる.
\ \ 図形的には平行移動}に相当する.
\ \ x軸方向にa平行移動するとき,\ x\ →\ x-aと変換するのであった.
\ \ n\ →\ n+2020として,\ -\,2020平行移動したわけである.
\ \ nの2次式g(n)に対してg(-1),\ g(0),\ g(1)がすべて整数なので,\ g(n)は整数値多項式である.
\ \ 平行移動したg(n)が整数値多項式ならば,\ 元のf(n)も整数値多項式である.
n$を自然数とする.\ \ $n$次多項式$f(x)$に対して$f(0),\ f(1),\ ・・・,\ f(n)$が整数ならば,
$f(x)$が整数値多項式であることを示せ. (上級者用) \\
[1]\ \ $n=1$のとき $f(x)=ax+b}$とおく.
\ \ $n=1$のとき} $f(0)=b,\ f(1)=a+b$がともに整数ならば,\ $a,\ b$は整数である.
\ \ $n=1$のとき} よって,\ $f(x)$は整数値多項式である.
[2]\ \ $n=k$のとき
$k$次多項式$f(x)$}に対して
$f(0),\ f(1),\ ・・・,\ f(k)$が整数ならば, $f(x)$が整数値多項式であると仮定}する.
\ \ $n=k+1$のとき
$k+1$次多項式$f(x)$}に対して$g(x)=f(x+1)-f(x)$}とする.
$f(0),\ f(1),\ ・・・,\ f(k+1)$が整数ならば,\ $g(0),\ g(1),\ ・・・,\ g(k)$は整数}である.
よって,\ 仮定より$k$次多項式$g(x)$は整数値多項式}である.
$f(0)$が整数で,\ 階差も常に整数なので,\ $k+1$次式$f(x)$は整数値多項式}である.
∴$ [1],\ [2]\,より,\ すべての自然数$n}$に対して$f(x)}$は整数値多項式である.
一般的な場合の証明は数学的帰納法}(数 B:数列)による.
数学的帰納法を利用する問題は様々あるが,\ その中で最も難しいものの1つである.
何を前提として何を示せばよいのかが非常に紛らわしいので,\ 慎重な思考が要求される.
特に,\ f(x)は特定の多項式ではなく,\ 任意(すべて)の多項式である}ことに注意してほしい.
n=1のときに示すべきは次である.
どんな1次式f(x)に対しても,\ f(0),\ f(1)が整数ならば,\ f(x)が整数値多項式である.}
a,\ bが整数ならば,\ 1次式f(x)=ax+bのxにどんな整数mを代入してもf(m)は整数である.
n=kのときに成り立つことを仮定したのは次である.
どんなk次式f(x)に対しても,\ f(0),\ ・・・,\ f(k)が整数ならば,\ f(x)は整数値多項式である.}
この仮定を利用してn=k+1のときに示すべきは次である.
\scalebox{.92}[1]{$どんなk+1次式f(x)に対しても,}\ f(0),\ ・・・,\ f(k+1)が整数ならば,\ f(x)は整数値多項式である.}$
f(0),\,・・・,\,f(k+1)が整数ならば,\ g(0)=f(1)-f(0),\ ・・・,\ g(k)=f(k+1)-f(k)は整数である.
k次多項式g(x)に対してg(0),\ ・・・,\ g(k)が整数であるから,\ g(x)は整数値多項式である.
$n$を自然数,\ $a_n,\ a_{n-1},\ ・・・,\ a_0$を整数,\ \ $P_n(x)=x(x-1)・・・(x-n+1)}{n!}$とする.
$n$次の整数値多項式$f(x)$が,\ $f(x)=a_nP_n(x)+a_{n-1}P_{n-1}(x)+・・・+a_1P_1(x)+a_0$と
表せることを示せ. \ (上級者用) \\
n$次式$f(x)$は$f(x)=a_nP_n(x)+・・・+a_0\ (a_n,\ ・・・,\ a_0:実数)$と表せる}$\ ・・・\ (*)$を示す.
[1]\ \ $n=1$のとき $f(x)=a_1P_1(x)+a_0\ (a_1,\ a_0:実数)$と表せる.
[2]\ \ $n≦ k$のとき $(*)$が成り立つと仮定する.
\ \ $n=k+1$のとき
$k+1$次式$f(x)$を$k+1次式P_{k+1}(x)$で割ったときの商を$a_{k+1}$,\ 余りを$g(x)$}とする.
このとき,\ $f(x)=a_{k+1}P_{k+1}(x)+g(x)$となる.
$g(x)$は$k$次以下の式であるから,\ 仮定より$n=k+1$のときも$(*)$が成り立つ.
∴$ [1],\ [2]\,より,\ すべての自然数$n$について$(*)$が成り立つ.} \\
$f(x)$が整数値多項式であるとすると,\ $f(0),\ f(1),\ ・・・,\ f(n)$は整数である.
$f(0)=a_0=(整数)$\ より $a_0$は整数
$f(1)=a_1P_1(1)+a_0=a_1・1+a_0=(整数)$\ より $a_1$は整数
$f(2)=a_2P_2(2)+a_1P_1(2)+a_0=a_2・1+a_1・2+a_0=(整数)$\ より $a_2$は整数
$\vdots$
$f(n)=a_nP_n(n)+a_{n-1}P_{n-1}(n)+・・・+a_1P_1(n)+a_0$
$f(n)}=a_n・1+a_{n-1}・ n+・・・+a_1・ n+a_0=(整数)$\ より $a_n$は整数
よって,\ $a_n,\ a_{n-1},\ ・・・,\ a_1,\ a_0$はすべて整数}である.
∴$\ \ $n}$次整数値多項式は$f(x)=a_nP_n(x)+・・・+a_0\ (a_n,\,・・・,\,a_0:整数)}$と表せる.
まず,\ すべてのn次式f(x)が\dot{実}\dot{数}\,a_n,\ ・・・,\ a_0\,とP_n(x)を用いて表せることを示す.}
その後,\ f(x)が整数値多項式ならばa_n,\ ・・・,\ a_0\,が整数となることを示す}という二段構えである.
一段階目では,\ 整式の割り算}(数II})を利用する.
n次式f(x)をn次式P_n(x)で割ると,\ 余りはn-1次以下の式となる.
それをさらにn-1次式P_{n-1}(x)で割るといったことを繰り返していくと,\ f(x)を(*)と表せる.
n=1のとき,\ P_1(x)=xより,\ すべての1次式は実数a_1,\ a_0,\ P_1(x)を用いて表せる.
n次式で割ったときの余りはn-1次式とは限らず,\ n-1次\dot{以}\dot{下}の式である.
よって,\ n=kのときだけでなくn≦ kのときをすべて仮定する数学的帰納法}を用いた.
f(x)が整数値多項式であるとき,\ 当然n+1個の数f(0),\ ・・・,\ f(n)はすべて整数である.
これを利用すると,\ a_0,\ a_1,\ ・・・,\ a_n\,が整数であることを順次確認できる.
f(0)=(整数)よりa_0\,が整数とわかり,\ これとf(1)=a_1+a_0=(整数)よりa_1\,が整数とわかる.
順次繰り返していけば,\ a_0,\ ・・・,\ a_n\,がすべて整数であることがわかるわけである.
P_n(x)=C xn}\,という認識があれば,\ P_{n}(n)などの値を求めやすくなる.