任意の自然数$a$に対し,\ $a^2$を3で割った余りは0か1であることを証明せよ.
(2)\ \ 自然数$a,\ b,\ c$が$a^2+b^2=3c^2$を満たすと仮定すると,\ $a,\ b,\ c$はすべて3で割り
\ \ 切れなければならないことを証明せよ.
(3)\ \ $a^2+b^2=3c^2$を満たす自然数$a,\ b,\ c$は存在しないことを証明せよ. \ \,[\,九州大\,]無限降下法}m{a^2}$を3で割った余りは0か1である.
(2)\ \ $a^2+b^2=3c^2$より,\ $a^2+b^2$は3の倍数である. \
よって,\ $a,\ b$は3の倍数}であり,\ $a=3k,\ b=3l\ (k,\ l:自然数)$とおける.
このとき $(3k)^2+(3l)^2=3c^2$より $3(k^2+l^2)=c^2}$
$c^2$は素数3の倍数であるから,\ $c$も3の倍数}である.
∴ a,\ b,\ cはすべて3で割り切れる.}$}
(3)\ \ $a^2+b^2=3c^2\ ・・・・・・\,①$を満たす自然数の組$(a,\ b,\ c)$が存在すると仮定する.
(2)より,\ $a=3a’,\ b=3b’,\ c=3c’\ (a’,\ b’,\ c’:自然数)}$とおける.
①より $(3a’)^2+(3b’)^2=3(3c’)^2$ よって ${a’}^2+{b’}^2=3{c’}^2}\ ・・・・・・\,②$
(2)より,\ $a’=3a”,\ b’=3b”,\ c’=3c”\ (a”,\ b”,\ c”:自然数)}$とおける.
②より $(3a”)^2+(3b”)^2=3(3c”)^2$ \ よって ${a”}^2+{b”}^2=3{c”}^2}$
この操作を繰り返すことにより,\ 無限に小さい自然数解を得ることができる.}
ところが,\ 1より小さい自然数は存在しないから,\ これは矛盾である.}
∴ a^2+b^2=3c^2\,を満たす自然数a,\ b,\ cは存在しない.}$}
$a^2+b^2=3c^2$を満たす自然数の組$(a,\ b,\ c)$が存在すると仮定する.
これらの組の中には$a$が最小の組が存在するから,\ これを$(a_1,\ b_1,\ c_1)$}とする.
よって,\ $(a_2,\ b_2,\ c_2)$も$a^2+b^2=3c^2$の解}である.
これは,\ $(a_1,\ b_1,\ c_1)$が$a$が最小の組であることに矛盾する.}
∴ a^2+b^2=3c^2\,を満たす自然数a,\ b,\ cは存在しない.}$}
(1),\ (2)\ \ 同種の問題を平方剰余と原始ピタゴラス数の性質の項で扱ったので,\ 簡潔な解説に留める.
(1)\ \ aを3で割ったときの余り0,\ 1,\ 2\,(-\,1)で場合分けして,\ すべての場合を尽くす.
(2)\ \ a^2,\ b^2\,をそれぞれ3で割ったときの余りのパターンは4通りである.
\ \ このうち,\ a^2+b^2\,が3の倍数となるのは,\ aもbも3の倍数のときのみである.
\ \ この条件を文字で設定してa^2+b^2=3c^2\,に反映させると,\ c^2\,が3の倍数であることがわかる.
\ \ c^2≡0±od3より,\ c≡0±od3である.
(3)\ \ 無限降下法}を用いて証明する.\ 背理法と数学的帰納法を組み合わせたような証明方法である.
\ \ 数学的帰納法(数 B)を学習済みならば,\ より理解しやすいだろう.
\ \ 無限降下法は,\ 大まかには2つの論じ方があり,\ 本解と別解で示した.
\ \ どちらにせよ,\ 自然数の空集合ではない部分集合には最小の要素が存在する}ことが根幹にある.
\ \ まず,\ 自然数解の存在を仮定する.\ (2)より,\ 3個の自然数a,\ b,\ cはすべて3の倍数である.
\ \ この条件を文字で設定してa^2+b^2=3c^2\,に反映させると,\ a’,\ b’,\ c’に関する方程式が得られる.
\ \ この{a’}^2+{b’}^2=3{c’}^2\,が元のa^2+b^2=3c^2\ ・・・\,①と同型になる}点がポイントである.
\ \ つまり,\ (a,\ b,\ c)が①の解であるとき,\ (a’,\ b’,\ c’)= a3,\ b3,\ c3}も①の解となる.
\ \ 同様に考えると,\ (a”,\ b”,\ c”)=a’}{3},\ b’}{3},\ c’}{3}=a}{3^2},\ b}{3^2},\ c}{3^2}もまた①の解である.
\ \ こうして,\ 無限に小さくなっていく自然数解を構成することができる.
\ \ しかし,\ 自然数の範囲で無限に小さくなれるはずはないから矛盾する}というわけである.
\ \ 「\,a,\ b,\ cが無限に3で割れ切れることになるが,\ そのような自然数は存在しない」でもよい.
\ \ 一方,\ あらかじめ最小の要素に着目し,\ これを文字で設定して議論する}のが別解である.
\ \ 本解と同様にしてより小さい自然数解が構成できる}ことから,\ 矛盾が導かれる.
以上のように,\ ある条件を反映させたときに同型の式が現れる場合に無限降下法が有効}である.
ac^2+ bc^2=3より,\ 円x^2+y^2=3上の有理点 ac,\ bcが存在しないことの証明でもある. \\
2以上の自然数$n$に対して,\ 方程式$x^n+2y^n=4z^n\ ・・・・・・\,(*)$を考える.
(1)\ \ $n=2$のとき,\ $(*)$を満たす自然数$x,\ y,\ z$の例を与えよ.
(2)\ \ $n≧3$のとき,\ $(*)$を満たす自然数$x,\ y,\ z$が存在しないことを示せ. \\
(2)\ \ \,$x^n+2y^n=4z^n\ ・・・・・・\,①$を満たす自然数の組$(x,\ y,\ z)$が存在すると仮定する.
①より$x^n=2(2z^n-y^n)$であるから,\ $x^n$は偶数,\ よって$x$も偶数である.
\,$x=2x’\ (x’:自然数)}$とおくと,\ ①より $(2x’)^n+2y^n=4z^n$
よって $2^{n-1}{x’}^n+y^n=2z^n\ ・・・・・・\,②$\ より $y^n=2(z^n-2^{n-2}{x’}^n)$
\,$n≧3$より$z^n-2^{n-2}{x’}^n$は整数なので,\ $y^n$は偶数,\ よって$y$も偶数である.
\,$y=2y’\ (y’:自然数)}$とおくと,\ ②より $2^{n-1}{x’}^n+(2y’)^n=2z^n$
よって $2^{n-2}{x’}^n+2^{n-1}{y’}^n=z^n\ ・・・・・・\,③$\ より $z^n=2(2^{n-3}{x’}^n+2^{n-2}{y’}^n)$
\,$n≧3$より$2^{n-3}{x’}^n+2^{n-2}{y’}^n$は整数なので,\ $z^n$は偶数,\ よって$z$も偶数である.
\,$z=2z’\ (z’:自然数)}$とおくと,\ ③より $2^{n-2}{x’}^n+2^{n-1}{y’}^n=(2z’)^n$
よって ${x’}^n+2{y’}^n=4{z’}^n}$
\,$(x’,\ y’,\ z’)$も①の解であるから\ $x’,\ y’,\ z’$は偶数である.
よって,\ $x’=2x”,\ y’=2y”,\ z’=2z”\ (x”,\ y”,\ z”:自然数)}$とおける.
このとき ${x”}^n+2{y”}^n=4{z”}^n}$
この操作を繰り返すことにより,\ 無限に小さい自然数解を得ることができる.}
ところが,\ 1より小さい自然数は存在しないから,\ これは矛盾である.}
∴ x^n+2y^n=4z^n\ (n≧3)を満たす自然数x,\ y,\ zは存在しない.}$
(1)\ \ x^2+2y^2=4z^2\ より x^2=2(2z^2-y^2)
\ \ xは偶数とわかるので,\ x=2としてみると y^2=2(z^2-1)
\ \ yは偶数とわかるので,\ y=2としてみると 4=2(z^2-1)より,\ 自然数zは存在しない.
\ \ y=4としてみると 16=2(z^2-1)より z=3
(2)\ \ 判明した性質を数式に反映させることを繰り返すと,\ x,\ y,\ zがすべて偶数}であるとわかる.
\ \ n≧3なので,\ 2^{n-1},\ 2^{n-2},\ 2^{n-3}\,はすべて整数である.\ なお,\ 2^0=1である.
\ \ 最終的に同型が現れるので,\ 無限降下法の論法で矛盾を示せばよい.
$√2$が無理数であることを示せ. \\
$√2$が有理数であると仮定すると,\ $√2= mn\ (m,\ n:自然数)}$とおける.
このとき $√2n=m$\ より $2n^2=m^2}\ ・・・\,①$
①より,\ $m$は偶数なので,\ $m=2m_1$とおくと $2n^2=4{m_1}^2$より $n^2=2{m_1}^2\ ・・・\,②$
②より,\ $n$は偶数なので,\ $n=2n_1$とおくと \ \ $4{n_1}^2=2{m_1}^2$より $2{n_1}^2={m_1}^2}\ ・・・\,③$
①と③は同型であるから,\ この操作は無限に繰り返すことができる.}
このとき,\ $m,\ n$は無限に2で割り切れることになるが,\ そのような自然数は存在しない.}
∴ √2\,は無理数である.}$}
普通,\ √2= mn\ (m,\ nは互いに素な自然数)と設定して証明するのであった(背理法の項で示した).
「互いに素」という条件を加えなかった場合,\ 無限降下法を利用することになるのである.