整数係数方程式の整数解・有理数解に関する定理の証明

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3次方程式$x^3-2x^2+3x-5=0$は整数解をもたないことを示せ. \\[1zh] \hspace{.5zw}(2)\ \ 3次方程式$x^3-2x^2+3x-5=0$は有理数解をもたないことを示せ. \\ 整数係数方程式の整数解と有理数解}}}} \\\\[.5zh]  本項では,\ 主に整数係数方程式の整数解と有理数解に関する定理の証明を扱う. \\[.2zh]  初見では難しく感じるかもしれないが,\ 構造を理解するとほぼ当たり前であることがわかる. \\\\\\  (1)\ \ 与方程式が整数解$\textcolor{cyan}{x=n}$をもつと仮定する. \phantom{ (1)}\ \ これを満たす整数$n$は存在しないから,\ \textbf{与方程式は整数解をもたない.} \\\\\\  (2)\ \ 与方程式が有理数解$\textcolor{cyan}{x=\bunsuu qp\ (\,p,\ q:互いに素な整数\,)}$をもつと仮定する. 右辺が整数なので,\ 左辺も整数}である. \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ \,\textcolor{cyan}{$p,\ q$は互いに素,\ \ }であるから $\textcolor{red}{p=1}$ \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ このとき$\textcolor{red}{q^3-2q^2+3q-5=0}$となるが,\ (1)よりこれを満たす整数$q$は存在しない. \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ よって,\ \textbf{与方程式は有理数解をもたない.} 一般化した定理の証明の前に,\ まずは具体的な問題で基本的な扱い方を確認する. \\[1zh] (1)\ \ 「~でない」という否定的命題であるから,\ \bm{背理法}が有効である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 解を文字でおくと(文字式)\times(文字式)=(具体的な整数)に変形でき,\ 容易に証明できる. \\[1zh] (2)\ \ 有理数解を文字でおいて代入し,\ 矛盾を示せばよい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 念のため確認しておくと,\ 有理数とは\,\bm{\bunsuu{(整数)}{(0でない整数)}}\ の形で表される数のことである. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{既約分数(分子と分母が互いに素)}で設定すると,\ 約分の可能性など余計な考慮をせずに済む. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ また,\ p\neqq0ではなく,\ p>0と可能な限り厳しく設定しておくと後が楽になる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ p>0のときはq<0とすれば負の有理数を表せるから,\ 一般性は失われない. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{最高次の項または定数項を分離し,\ 約数・倍数に関する性質を追求する}のが基本となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ このとき,\ \bm{完全に分母をはらわず,\ あえて(分数)=(整数)の形を作る}手法がよく使われる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bunsuu{q^3}{p}\,が整数となるための条件を考えると,\ p=1が確定する. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ 仮にpが素因数gをもつとすると,\ qも素因数gをもち約分で消える必要がある. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ ところが,\ これはp,\ qが互いに素であることと矛盾する. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 完全に分母をはらってq^3=p(2q^2-3pq+5p^2)としても,\ 本質的に同じである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ q^3\,はpの倍数となるが,\ p,\ qは互いに素なのでp=1が確定する. $整数係数n次方程式\ a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0=0\ \ (a_0,\ a_n\neqq0)がある.$ \\[.5zh] \hspace{.5zw}$この方程式が有理数解をもつとき,\ その解は\ \bunsuu{a_0\,の約数}{a_n\,の約数}\ の形であることを証明せよ.$ 本項の中で最も重要な定理である.\ \bm{証明を理解した上で,\ 結果を覚えておく}必要がある. \\[.2zh] 証明の大筋は前問の(2)と同様であり,\ 一旦理解してしまえば何ら難しいところはない. \\[.2zh] 今回は,\ 分母を完全にはらって[1]と[2]で統一性をもたせた. \\[1zh] [1]\ \ a_nq^n\,はpの倍数となるが,\ p,\ qは互いに素なのでa_n\,がpの倍数,\ つまりpはa_n\,の約数である. \\[1zh] 本定理のの結果は,\ \bm{因数定理による高次式の因数分解(数\textbf{I\hspace{-.1em}I})の際に利用する.} \\[.2zh] 数\text{I\hspace{-.1em}I}できちんと学習するので,\ ここでは概要だけ説明しておく. \\[1zh] 例として,\ 6x^3-7x^2+7x-1を因数分解するとしよう. \\[.2zh] 数\text Iで学習した方法ではできないので,\ 6x^3-7x^2+7x-1=0の解から因数を逆算することになる. \\[.2zh] 仮にx=1を解にもつとわかれば,\ (x-1)という因数をもつといえるわけである. \\[.2zh] よって,\ 6x^3-7x^2+7x-1のxに様々な数を代入して=0となるものを探すことになる. \\[.2zh] 本定理は,\ このときにどのような数を代入すべきかを示している. \\[.2zh] =0となる(解である)可能性がある有理数は,\ \bm{\bunsuu{a_0\,の約数}{a_n\,の約数}=\bunsuu{1の約数}{6の約数}\ の形に限られる.} \\[1zh] つまり,\ \ 有理数解が存在するとすれば,\ 必ず\ \pm\,1,\ \pm\bunsuu12,\ \pm\bunsuu13,\ \pm\bunsuu16\ の中にあるはずなのである. \\[.8zh] この場合はx=\bunsuu16\,のとき6x^3-7x^2+7x-1=0となり,\ (6x-1)(x^2-x+1)と因数分解できる. \\[.8zh] 本定理を知らない場合x=\bunsuu16\,に気付くことが困難になり,\ 時間だけを浪費する羽目になる. $整数係数n次式f(x)=x^n+a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots+a_1x+a_0\ \ (n\geqq2)\ がある.$ \\[1zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ $方程式f(x)=0が有理数\,\alpha\,を解にもつとき,\ \alpha\,は整数であることを示せ.$ \\[1zh] \hspace{.5zw} (2)\ \ \,$3個の整数f(0),\ f(1),\ f(2)$がいずれも$3$の倍数でないとき, \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{ (1)}\ \ 方程式$f(x)=0$は有理数解をもたないことを示せ. \\ 右辺が整数なので,\ 左辺も整数}である. \\[.5zh] $f(x)=0$が有理数解$x=\alpha$をもつと仮定}する. \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ このとき,\ $\textcolor{red}{f(\alpha)=0}$が成り立つ.\ また,\ (1)より\textcolor{cyan}{$\alpha$は整数}である. \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ $\alpha$を$3$で割ったときの余りは,\ $0,\ 1,\ 2$のいずれかである. \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ $\alpha\equiv0\pmod3$のとき $f(\alpha)\equiv f(0)\pmod 3$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ $\alpha\equiv1\pmod3$のとき $f(\alpha)\equiv f(1)\pmod 3$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ $\alpha\equiv2\pmod3$のとき $f(\alpha)\equiv f(2)\pmod 3$ \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ $f(0)\not\equiv0,\ f(1)\not\equiv0,\ f(2)\not\equiv0\pmod3$より,\ \ $\textcolor{red}{f(\alpha)\not\equiv0\pmod3}$である. \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ これは,\ \textcolor{red}{$f(\alpha)=0$と矛盾}する. \\\\ \centerline{$\therefore$ $\bm{f(x)=0は有理数解をもたない.}$} \\\\[1zh] 最高次の係数1の整数係数方程式が有理数解\,\alpha\,をもつとき,\ \alpha\,は整数である}ことの証明である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 前問の特殊な場合で,\ a_n=1のとき\,\bunsuu{a_0\,の約数}{a_n\,の約数}=\bunsuu{a_0\,の約数}{1の約数}\ が整数となるというだけである. \\\\ (2)\ \ 経験がなければ難問だろうが,\ 問題の構造自体は単純である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{整数係数多項式f(x)の合同式}に関する以下の定理を利用すると本質が見えやすくなる. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \  整数係数n次多項式f(x)=x^n+a^{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0\,において \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \   \bm{p\equiv q\pmod m\ \Longrightarrow\ f(p)\equiv f(q)\pmod m} \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 次の3つの整数の合同式の性質を組み合わせただけの定理である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \  p\equiv q,\ r\equiv s\pmod m\ \Longrightarrow\ p+r\equiv q+s\pmod m \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \  p\equiv q,\ r\equiv s\pmod m\ \Longrightarrow\ pr\equiv qs\pmod m \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \  p\equiv q\pmod m\ \Longrightarrow\ p^n\equiv q^n\pmod m \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ p\equiv q\pmod mのとき \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \  f(p)=p^n+a^{n-1}p^{n-1}+\cdots+a_1p+a_0\equiv q^n+a^{n-1}q^{n-1}+\cdots+a_1q+a_0=f(q) \\\\ \phantom{(1)}\ \ \bm{背理法}または\bm{対偶法}を用いて証明する. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{両辺の余りの不一致を示す}ことは,\ 方程式が解をもたないこと示すための常套手段であった. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ f(x)=0において,\ 右辺0を3で割ったときの余りは当然0である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ \bm{左辺f(x)\not\equiv0\pmod3を示せば,\ f(x)=0が解をもたないことが示される.} \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ \alpha\,は整数なので,\ 3で割った余り3パターンの考慮ですべての場合が尽くされる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ f(\alpha)を3で割った余りは,\ f(0),\ f(1),\ f(2)のいずれかを3で割った余りと一致する. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 問題よりいずれも3の倍数ではないから,\ f(\alpha)が3の倍数となることはない. \\[1zh] (2)の証明の過程を考慮すると,\ 3という数字に必然性はない. \\[.2zh] つまり,\ 任意の自然数kに対して次が成立する.\ 証明も同様である. \\[.5zh] \text{\scalebox{.96}[1]{$k個の整数f(0),\ f(1),\ \cdots,\ f(k-1)がいずれもkの倍数でないとき,\ f(x)=0は有理数解をもたない.$}a,\ b,\ c$が奇数のとき,\ 2次方程式$ax^2+bx+c=0$が有理数解をもたないことを示せ. \\   与方程式が有理数解$\textcolor{cyan}{x=\bunsuu qp\ (\,p,\ qは互いに素な整数,\ p>0\,)}$をもつと仮定する. \   [1]\ \ \maru1より\ \ $aq^2=-\,p(bq+cp)$   $p,\ q$は互いに素,\ $a$は奇数より,\ \textcolor{red}{$p$は奇数}である. \\[1zh]   [2]\ \ \maru1より\ \ $cp^2=-\,q(aq+bp)$   $p,\ q$は互いに素,\ $c$は奇数より,\ \textcolor{red}{$q$は奇数}である. \\\\   このとき,\ \textcolor{red}{\maru1の左辺は奇数}となるから,\ これは矛盾である. \\\\ \centerline{$\therefore$ $\bm{ax^2+bx+c=0は有理数解をもたない.}$ 前問までが理解できていれば,\ 本質的に同じである. \\[.2zh] ax^2+bx+c=0の有理数解\,\bunsuu qp\,をもつとすれば,\ \bm{\bunsuu{cの約数}{aの約数}}\,の形をしているはずである. \\[.8zh] a,\ cが奇数よりp,\ qも奇数とわかり,\ 後は\bm{両辺の余りの不一致}を示せばよい. \\[.2zh] 2で割ったときの余りならば合同式を持ち出すまでもなく,\ 偶奇性を考慮すれば済む. \\[.2zh] a,\ b,\ c,\ p,\ qが奇数なのでaq^2,\ bpq,\ cp^2\,も奇数で,\ (奇数)+(奇数)+(奇数)=(奇数)である.