\tan A\tan B+\tan B\tan C+\tan C\tan A=1$\ が成り立つことを示せ.
(3)\ \ 直角三角形ではない$△$ABCに対して,\ $\tan A\tan B\tan C=\tan A+\tan B+\tan C$ が成り立つことを示せ.{正接の加法定理の応用 \\
本項では,\ 正接($\tan$)の加法定理に関する有名問題を演習する.
初見で解くには厳しい問題が多いので,\ 一度は経験しておくことが望ましい.
まず,\ \tanθ=\sinθ}{\cosθ}\,を用いて\,\sin\,と\,\cos\,に変換する.
分母をはらった後,\ 加法定理の逆}(※)によって簡潔な形にまとまる.
角の範囲を考慮すると,\ \cos\,が0になるA+Bの値が1つに定まる.
もし角に範囲がなかった場合,\ ・・・・・・,\ -32π,\ -π}{2},\ π}{2},\ 32π,\ ・・・・・・\,すべてが答えになる.
よって,\ π}{2}+nπ\ (n:整数)}のように答えることになる.
※\ \cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ\ は等式なので,\ 本質的に順や逆があるわけではない.
\ 受験数学では,\ →\,の変形が多いので,\ ←\,の変形を「逆」と呼ぶ場合がある.
\ 答案には単に「加法定理より」と書くのがよい.
\ なお,\ ←\,の変形は高校数学最大の盲点の1つである.
\ 今後何度か使う機会があるが,\ 相当に意識していないと気付くことができないだろう.
\tan A\tan B=1のとき,\ \tan(A+B)=\tan A+\tan B}{1-\tan A\tan B}\ の右辺の値は存在しない(分母0).
\tan A\tan B=1は,\ A+B=π}{2}\,のとき左辺の値が存在しないことと対応している}わけである.
余角の公式\,\tan-.2zw}π}{2}-θ=1}{\tanθ\,を利用すると,\ 加法定理を使わずとも求められる(別解).
このとき,\ \tan A=\tan B\ ⇔\ A=B+nπ\ (n:整数)}\ (後に学習)を利用することになる.
A=π}{2}-B+nπ\,となるがを満たすのはn=0のときだけである.
どちらかといえば,\ \tan\,のまま処理する別解が正攻法である.
角の和を分割して両辺の\,\tan\,をとり,\ 加法定理と余角の公式を適用する.
分母をはらって整理すると与式が導かれる.
本解を技巧的に感じるならば,\ 等式条件がある場合の基本である1文字消去}を行うとよい(別解).
この場合も加法定理と余角の公式を利用することになる.
ここではCを消去した.\ 複雑な左辺を変形していくと,\ 自動的に1になる.
△ABC}ということは,\ A+B+C=π\,が成り立つということであり,\ 後は(2)とほぼ同じである.
補角の公式\,\tan(π-θ)=-\,\tanθ}\,と加法定理を適用した後,\ 整理すればよい.
Cを消去する別解も示した(略解).
両辺ともに複雑なとき,\ 両辺を変形して同じ式を導くことが有効であった.
(分子)=(\tan A+\tan B)(1-\tan A\tan B)-(\tan A+\tan B)
(分子)}=(\tan A+\tan B)\{(1-\tan A\tan B)-1\}=-\,(\tan A+\tan B)\tan A\tan B
α,\ β,\ γ\ は綺麗な角ではないので,\ 直接\ α+β+γ\ を求めることはできない.
そこで,\ 一旦\ \tan(α+β+γ)\ を求めることを考える.
3つの角の和の\,\tan\,は,\ 2段階で\,\tan\,の加法定理を適用して求められる.}
結局,\ \tan(α+β+γ)=1}\ となるので,\ ここから\ α+β+γ\ を求めればよい.
このとき,\ 角の範囲を考慮する}必要がある.
しかし,\ 結論から言えば,\ 本問の答えは\ 54π\ のみである.
余計な\,π}{4}\,まで求まってしまうのは,\ 角の範囲の絞り込みが甘い}せいである.
実は,\ \tanα,\ \tanβ,\ \tanγ\ の値を考慮すると,\ α,\ β,\ γ\,の範囲をより厳しく限定できる.}
このとき基準となるのは,\ \tan30°=1}{√3},\ \tan45°=1,\ \tan60°=√3\ 等の有名角の値である. の範囲では単調増加関数である.
よって,\ 角\ θ\ が大きくなれば,\ \tanθ\ の値も大きくなる.
\tanα,\ \tanβ,\ \tanγ\ (=2,\ 5,\ 8)\ は,\ \tan60°=√3≒1.7\ より大きい.
これは,\ 角\ α,\ β,\ γ\ が60°=π}{3}\ より大きい}ことを意味する.
結局,にまで範囲を絞ることができる.
本問に限らず,\ 三角関数の値が与えられたとき,\ 角のおおよその大きさを常に意識する必要がある.
\tan60°≒1.7を基準にすると,\ α≒65°,\ β≒70°,\ γ≒80° より\,α+β+γ≒215°\,程度と予想できる.
triangle$ABCにおいて$\tan A,\ \tan B,\ \tan C$が全て整数であるとき,\ その3つの整数を求めよ. \\
A≦ B≦ C}$としても一般性を失わない.
$A+A+A≦ A+B+C=π$より$3A≦π$,\ つまり$A≦π}{3}$である.
8割方整数問題であり,\ 整数分野を十分に学習してきていなければ難しい.
整数問題では,\ 文字に対称性があるとき,\ 自分で大小関係を設定する}のが有効であった.
さらに,\ すべての文字を最大数または最小数に置き換えてみる}のであった.
試しに,\ A+B+C=π\,においてA,\ Bを最大数Cに置き換えてみよう.
π=A+B+C≦ C+C+C=3Cより\,π}{3}≦ Cが導かれるが,\ これでは何もわからない.
B,\ Cを最小数Aに置き換えてみる}と,\ 解答のようにAの範囲が絞られる.
\tan\,の値の範囲も限定され,\ 整数であることも考慮して\,\tan Aの値が定まる.
\tan Aの値を利用して,\ 条件A+B+C=π\,からAを消去する.
\tan(π-θ)=-\,\tanθ}\,を利用することになる.
加法定理を適用してできる式を満たす\,\tan B\,と\,\tan C\,の値を求めればよい.
分母をはらうと,\ xy+ax+by+c=0型の不定方程式}に帰着する.
この型は,\ 両辺を積の形(x+b)(y+a)=ab-cに変形するのであった.
掛けて2になる整数の組を考えることになるが,\ 先に各因数の範囲を考慮しておく}と楽になる.
角の大小関係と\,\tan A=1を考慮すると,\ (\tan B-1,\ \tan C-1)=(1,\ 2)しかありえない.
A≦ B≦ Cは自分で勝手に加えた条件なので,\ この条件を取り払ってから答える.