
正三角形ABCの外接円の半径を$R$とし,\ 外接円上の任意の点をPとする. \\[1zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ $\mathRM{PA+PB+PC}$の最大値を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (2)\ \ $\mathRM{PA^2+PB^2+PC^2}$が一定値をとることを示せ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (3)\ \ $\mathRM{PA\cdot PB\cdot PC}$の最大値を求めよ. \\ 三角関数の三角形への応用\maru1 正三角形と外接円}$}}}} \\\\[.5zh] (1)\ \ [1]\ \ 点Pが正三角形の頂点Aと一致するとき(頂点B,\ Cと一致するときも同様) \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ $\mathRM{PA+PB+PC=0+AB+AC=2AB}$ \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ ここで,\ 正弦定理\ $\textcolor{forestgreen}{\bunsuu{\mathRM{AB}}{\sin60\Deg}=2R}$より $\textcolor{red}{\mathRM{AB}=\ruizyoukon3R}$ \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ よって $\mathRM{PA+PB+PC}=2\ruizyoukon3R$ \\\\ \phantom{ (1)}\ \ [2]\ \ 点Pが正三角形の頂点と一致しないとき \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ 点PがAを含まない弧BC上にあるとしても一般性を失わない. \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ $\angle{\mathRM{PAC}}=\theta$とすると $\textcolor{red}{0\Deg<\theta<60\Deg}$ \\[1zh]
\phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ 正弦定理より
最初に,\ 高校数学における図形問題のとらえ方について説明する. \\[.2zh]
図形問題は,\ 以下5分野のうちどの分野の問題とみなすかで解答が大きく変わる. \\[.2zh]
「初等幾何(\text A)」「三角比・三角関数(\text{I}\cdot\text{I\hspace{-.2zw}I})」「座標平面(\text{I\hspace{-.2zw}I})」「ベクトル(\text B)」「複素数平面(\text{I\hspace{-.2zw}I\hspace{-.2zw}I})」 \\[.2zh]
初見の図形問題が入試で出ると,\ まずこの選択に大きく悩まされる. \\[.2zh]
本問は有名問題で,\ \bm{三角比・三角関数でとらえるのが標準解法}と知っていると悩まずに済む. \\[.2zh]
三角比・三角関数のメリットは,\ 当然ながら\bm{三角形の角の条件を扱いやすい}ことである. \\[.2zh]
一方で,\ \bm{各種公式を用いた計算に慣れていないと後の処理で行き詰まりやすい}のがデメリットである. \\[.2zh]
正三角形(60\Deg)に加え外接円の半径の条件もある本問は,\ 三角比・三角関数との相性は抜群である. \\[1zh]
\bm{対称性}より,\ 点\mathRM{P}が左図のような位置にあるとして求めてもよい. \\[.2zh]
\bm{\mathRM{弦PA,\ PB,\ PC}のいずれかの円周角を\,\theta\,とおく}と,\ それぞれの長さを\,\theta\,で表すことができる. \\[.2zh]
\angle\mathRM{PAC}=\theta\,とすると\,\angle\mathRM{PBA}=60\Deg+\theta,\ \ \angle\mathRM{PAB}=60\Deg-\theta\ より,\ 正弦定理で長さを求められる. \\[.2zh]
ただし,\ 点\mathRM{P}が正三角形の頂点と一致する\,\theta=0\Deg,\ 60\Deg の場合には分母が0になってしまう. \\[.2zh]
そこで,\ あらかじめその場合を分けて求めておいたわけである. \\[1zh]
結局,\ 3つの\sin の和の最大を求めることに帰着する. \\[.2zh]
角60\Deg+\theta\,と60\Deg-\theta\,の対称性に着目して\bm{和→積の公式を利用するとa\sin\theta+b\cos\theta\,の形になる.} \\[.2zh]
和積公式が難しければ,\ それぞれに加法定理\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta\,を適用すればよい. \\[.2zh]
a\sin\theta+b\cos\theta\,の式は,\ \bm{三角関数の合成}により最大・最小を求められるのであった. \\[.2zh]
\sin A+\sin B=2\sin\bunsuu{A+B}{2}\cos\bunsuu{A-B}{2} \\\\
さて,\ \theta=30\Deg\,のとき,\ \bm{点\mathRM{P}は弧\mathRM{BC}のちょうど中央にある}(右図). \\[.2zh]
このように,\ \bm{ある図形量が最大・最小をとるのは,\ 図形的に対称になるときであることが多い.} \\[.2zh]
実際の試験では,\ 正攻法が全くわからなかったり時間がなかったりといったことがありえるだろう. \\[.2zh]
そんなとき,\ 邪道ではあるが,\ 右図のときに最大になると予想し,\ そのときの値だけでも求めておく. \\[.2zh]
白紙よりはマシなので,\ 部分点をもらえる可能性が残る. \\[.2zh]
30\Deg,\ 60\Deg,\ 90\Deg\,(辺長が1:2:\ruizyoukon3\,)の直角三角形であるから \mathRM{PA+PB+PC}=2R+R+R=4R \\[.2zh]
ちなみに,\ (2),\ (3)も右図の場合を考慮することで答えだけなら求まってしまう.
点Pが正三角形の頂点Aと一致するとき \$\mathRM{PA^2+PB^2+PC^2}=\mathRM{0+AB^2+AC^2=2AB^2}=6R^2$ \\\\
\phantom{ (1)}\ \ [2]\ \ 点PがAを含まない弧BC上にあるとき \\[.5zh]
\phantom{ (1)}\ \ \phantom{[1]}\ \ \ $\mathRM{PA^2+PB^2+PC^2}$
\sin(60\Deg\pm\theta)に加法定理を適用し,\ 普通に整理していけばよい. \\[.2zh]
一見すると複雑だが,\ 対称性があるのでなんだかんだで綺麗な式になる. \\[.2zh]
\bm{\sin^2\theta+\cos^2\theta=1}を適用すると\,\theta\,が消えるから,\ \bm{\theta\,の値によらず常に一定である}ことがわかる.
(3)\ \ [1]\ \ 点Pが正三角形の頂点Aと一致するとき 点PがAを含まない弧BC上にあるとき
角60\Deg+\theta\,と60\Deg-\theta\,の対称性に着目して\bm{積→和の公式を利用する.} \\[.2zh]
積和公式が難しければ,\ それぞれに加法定理\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta\,を適用すればよい. \\[.2zh]
\sin\alpha\sin\beta=-\bunsuu12\{\cos(\alpha+\beta)-\cos(\alpha-\beta)\} \\[.8zh]
さらに,\ 2倍角の公式\cos2\theta=1-2\sin^2\theta\,を用いると,\ 関数と角を\,\sin\theta\,に統一できる. \\[.2zh]
\bm{3倍角の公式\,\sin3\theta=-\,4\sin3\theta+3\sin\theta\,の逆}により,\ \sin3\theta\,の最大を求めることに帰着する. \\[1zh]
3倍角の公式の逆に気付けない場合,\ \sin\theta=tとおくと3次関数y=-\,4t^3+3tの最大に帰着する. \\[.2zh]
整式の微分(数\text{I\hspace{-.2zw}I})の学習後には容易に求められるようになるので,\ 簡単に示しておく. きyは極大値かつ最大値1をとる.