本項の内容は上級者用です。
また、後半は整式の微分(数Ⅱ)を学習済みであることを前提としています。
三角形ABCに対して,\ 次の問いに答えよ.
(1)\ \ $\cos A+\cos B+\cos C$の最大値を求めよ.
(2)\ \ $\cos A\cos B\cos C$の最大値を求めよ.
(3)\ \ $\sin A+\sin B+\sin C$の最大値を求めよ.
(4)\ \ $\sin A\sin B\sin C$の最大値を求めよ. \\
$三角関数の三角形への応用③ 多変数関数}$ \\
本問は,\ 三角関数の高難度の有名問題であり,\ 難関大学で時々出題される.
初見では厳しいが,\ 一旦パターンとして習得してしまえば割と自然な流れで求められる.
等式条件A+B+C=π\,を用いて1変数を消去したとしても,\ まだ2変数関数である.
これまでに学習したような方法は通用しない.
多変数関数の最終手段に位置づけされる1文字固定法(予選決勝法)}に頼ることになる.
ただし,\ 本問は対称性を利用する}ことで,\ 単純に1文字固定するだけよりかは楽に求められる.
まず,\ 和→積の公式でA+BとA-Bの形を作り出す.}
ここで,\ 三角形という条件は,\ 内角が正かつ内角の和が180°\,という角の条件に変換できる.
結論から言えば,\ 正三角形のときに最大}となる.\ このとき,\ A-B=0}である.
よって,\ A-Bの形を作り出し,\ =0のとき最大となることを示す}というのが基本方針になる.
和→積の公式により,\ 3つの角A+B,\ A-B,\ Cで表される関数になる.
さらにA+Bを消去すると,\ 2つの角A-BとCで表される関数にできる.
A-B=Dと考えれば,\ 等式条件により1文字消去して2変数C,\ Dの関数になったことになる.
また,\ 余角の公式\cos-.2zw}π}{2}-θ=\sinθ\,により,\ \cosπ-C}{2}=\cos-.2zw}π}{2}- C2=\sin C2\,となる.
ここからが1文字固定法の出番である.\ 1文字固定法とは,\ 以下のような手法である.
[1]\ \ 一旦他の文字を固定して(定数とみて),\ 1変数関数として最大・最小を求める(予選).}
\ \ これにより,\ 実質的に文字が1つ消去される.
[2]\ \ さらに,\ 残った文字を変化させて,\ その最大・最小を求める(決勝).}
1文字固定法では,\ どの文字を固定して考えるかがその後の処理量に影響する.
本問は,\ 角Cを固定して考える}と後が楽になる.
一見わかり辛いが,\ 単に\,\sin C2=a,\ \cosA-B}{2}=x,\ \cos C=bとみなしただけである.
そして,\ 直線y=2ax+bの最大を考える(a,\ b:定数).
傾き2a=2\sin C2>0であることに注意すると,\ xが最大をとるときyも最大をとる.
x=\cosA-B}{2}\,は,\ A=Bのとき最大値1をとる.}
つまりyの最大値は2a+bであり,\ 2ax+b≦ 2a+bという不等式が成り立つわけである.
A-Bが消去されてCの1変数関数になるので,\ 後はこれの最大を考えるだけである.
\cos C=\cos-.2zw}2・ C2とみて2倍角の公式\cos2θ=1-2\sin^2θ\,を用いると,\ 関数と角を統一できる.
\sin C2\,の2次関数なので,\ \sin C2\,のとりうる値の範囲を確認した上で最大値を求めればよい.
最大値が\,32\,となるのは,\ 2つの不等号における等号が\dot{同}\dot{時}\dot{に}成立するとき}である.
つまり,\ A-B=0\ かつ\ C2=π}{6}\,のときで,\ A+B+C=π\,も考慮すると正三角形のときとわかる.
三角形ABCが鈍角三角形または直角三角形のとき,
最大値を求めるから,\ 鋭角三角形($\cos A>0,\ \cos B>0,\ \cos C>0}$)で考えてよい.
(1)とは逆に積→和の公式を適用し,\ A+BとA-Bの形を作り出す.}
その後の大まかな流れは(1)と同じであるが,\ 1つ注意が必要である.
\cos(A-B)=x,\ \cos C=aとおくと,\ 直線y=12ax-12a^2\,の最大を考えることになる(a:定数).
しかし,\ 00,\ b>0,\ c>0を確認した上で適用すること.
2つの不等号を\dot{同}\dot{時}\dot{に}成立させるような実数A,\ B,\ Cが存在するから,\ 最大値が\,3√3}{8}\,といえる.