以下の公式(数B)は実戦で大変役立つので,\ 早い段階で習得しておくことが望ましい.
{E(aX+b)=aE(X)+b{E(X+Y)=E(X)+E(Y) X,\ Yが独立のとき E(XY)=E(X)・ E(Y)
[1]\ \ 変数Xをa倍してb足した値の期待値を求めたければ,\ Xの期待値をa倍してb足せばよい.}
\ \ 下で証明するが,\ 期待値が結局は平均であることを考慮すると,\ 直感的に納得できる.
[2]\ \ 和の期待値を求めたければ,\ 期待値の和を求めればよい.}
\ \ 事象X,\ Yが独立でないときも常に成り立つ}ため,\ 汎用性が非常に高い.
[3]\ \ 事象X,\ Yが独立のときに限り,\ 積の期待値を求めたければ,\ 期待値の積を求めればよい.}
\ \ 「事象の独立」の項で述べたように,\ 2つの事象が独立か否かの判断は簡単にできないことが多い.
\ \ 独立が明らかなとき以外は利用すべきではなく,\ 使用機会はかなり限られる.
X,\ Yのとる値がそれぞれ3個,\ 2個の場合の証明を示す.\ \ n個でも同様である.
X=x_1,\ x_2,\ x_3\,をとる確率をそれぞれp_1,\ p_2,\ p_3\,とする(\,p_1+p_2+p_3=1\,).
Y=y_1,\ y_2\,をとる確率をそれぞれq_1,\ q_2\,とする(\,q_1+q_2=1\,).
また,\ X=x_1\,かつY=y_1\,をとる確率をr_{11}\,のように表す.
このとき,\ r_{11}+r_{12}=p_1,\ r_{11}+r_{21}+r_{31}=q_1\,などが成り立つ.
まとめると右表のようになる(同時確率分布). \\[-5zh]
同様にしてE(X-Y)=E(X)-E(Y)}が成り立つこともわかる.
3変数以上のときも成り立つ. E(X+Y+Z)}=E(X+Y)+E(Z)=E(X)+E(Y)+E(Z)}
[1]と[2]を組み合わせると \ \ \ \,E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)}
X,\ Yが独立であるとは,\ r_{ij}=p_iq_j\,が成り立つということであった.
1つのサイコロを2回振るとき,\ 1回目に出る目をX,\ \ 2回目に出る目を$Y$とする.
(1)\ \ $2X-1$の期待値$E(2X-1)$を求めよ.
(2)\ \ $X+Y$の期待値$E(X+Y)$を求めよ.
(3)\ \ $(X+Y)^2$の期待値$E((X+Y)^2)$を求めよ. \\
(3)\ \ $E((X+Y)^2)=E(X^2+2XY+Y^2)=E(X^2)+2E(XY)+E(Y^2)}$
(1)\ \ E(aX+b)=aE(X)+b}を利用する.\ 期待値の定義で求める別解よりもわずかに楽になる.
\ \ なお,\ (期待値)=(平均)という観点から,\ 本問のE(X)を瞬時に求める裏技がある.
\ \ Xがとる全ての値が等間隔かつ等確率なので,\ 平均は\,1+6}{2}=72\ (最小と最大の中央)となる.
\ \ 数列(数 B)の知識を借りれば,\ Xがとる全ての値(n個)が等差数列をなし,\ かつ等確率のとき
\ \ E(X)=(a_1+・・・+a_n)×1n=12n(a_1+a_n)×1n=a_1+a_n}{2} (検算用公式)
\ \ 別解でも適用できる. E(2X-1)=1+11}{2}=6
(2)\ \ E(X+Y)=E(X)+E(Y)}を利用するか否かで計算量・思考量に雲泥の差が生まれる.
\ \ 公式を利用すると,\ n回振るときの和の期待値であっても直ちに\,72nと求まる.
\ \ 公式を利用しない場合,\ X+Yのとる値は2から12までの11通りがある(別解).
\ \ 例えば,\ X+Y=4となる組合せは,\ (X,\ Y)=(1,\ 3),\ (2,\ 2),\ (3,\ 1)の3通りである.
(3)\ \ X+YとX+Yは,\ 当然独立ではない.
\ \ よって,\ E((X+Y)^2)=E((X+Y)・(X+Y))=E(X+Y)・ E(X+Y)としてはならない.
\ \ 展開すると期待値の和に分割でき,\ E(X^2),\ E(XY),\ E(Y^2)を求めることに帰着する.}
\ \ XとXも当然独立ではないので,\ E(X^2)=E(X)・ E(X)としてはならない.
\ \ 一方,\ 1回目の試行と2回目の試行は明らかに独立である.
\ \ 試行S,\ Tが独立ならば,\ Sで起こる事象AとTで起こる事象Bも独立となるのであった.
\ \ よって,\ E(XY)=E(X)・ E(Y)を利用できる.
1から9までの数字が1つずつ書かれている9個の玉がある.\ この中から無作為に3個
選んで並べてできる3桁の数字の期待値を求めよ. \\
\\[-.8zh]
\hline
\end{tabular} \\
百の位の数字をX,\ 十の位の数字を$Y$,\ 一の位の数字を$Z$とする.
3桁の数字の期待値はE(100X+10Y+Z)}{100E(X)+10E(Y)+E(Z)}=
3桁の数字を100X+10Y+Zとみなすと分割でき,\ 各位の期待値を求めることに帰着する.}
本問のX,\ Y,\ Zは独立ではないが,\ E(X+Y)=E(X)+E(Y)は独立でなくとも成り立つ.
安心して各位ごとの期待値を求めればよく,\ 公式の汎用性の高さがわかるだろう.
X=1となる確率は,\ 3桁の数字の順列を全事象にとると\,1・P82}{P93}=19\,となる.
百の位の数字のみを全事象にとる}と早い.\ \ 1から9までの9通りが同様に確からしいから\,19\,である.
同様に,\ X=2,\ ・・・,\ 9となる確率もそれぞれ\,19\,である.\ また,\ Y,\ Zについても同様である.
検算用公式を使うと\,1+9}{2}=5となる.
別解は,\ 期待値の定義に従って(123+124+・・・+987)×1}{P93}\,を求めるものである.
簡単のため,\ 1から3までの数字から3個選んで並べてできる3桁の整数の和を求めることを考える.
これは\,P33=6個の3桁の整数の和になる.\ 具体的には
6個の3桁の整数の百の位には,\ 1と2と3がそれぞれ2回ずつ現れている.
百の位が1の時他の位の数字の並べ方が\,P22=2通りあるからで,\ 百の位が2,\ 3の時も同様である.
以上から,\ 百の位の和が(1+2+3)×P22×100で求められるとわかる.
同様に,\ 十の位の和は(1+2+3)×P22×10,\ 一の位の和は(1+2+3)×P22\,となる.
これをすべて足し合わせると,\ (1+2+3)×2×(100+10+1)=6×2×111=1332となる.
本問の場合は他の位の数字の並べ方が\,P82\,通りあるから,\ 解答のように求められる.
点Pは,\ 原点を出発点として,\ $x$軸上をサイコロを1回投げて1,\ 2,\ 3,\ 4の目が出たと
きは正方向に2進み,\ 5,\ 6の目が出たときは負方向に1進む.\ サイコロを3回投げる
とき, 点Pの$x$座標の期待値を求めよ.
1,\ 2,\ 3回目にサイコロを投げたときの点Pの$x$座標の変化をそれぞれ$X,\ Y,\ Z$とする.
最終的なx座標は1回ごとの変化の和であるから,\ 期待値の和の公式を利用できる.
期待値の定義で求めるとき,\ 反復試行の公式を利用することになる(別解).
同じ試行をn回繰り返すとき,\ 確率pの事象Aがr回起こる確率は \ku