8人の選手A\,~\,Hが抽選して組まれる下図のようなトーナメント戦を行って優勝者を
決める.\ ただし,\ 各試合で両選手が勝つ確率はすべて$12$である.
(1)\ \ 総試合数を求めよ.
(2)\ \ 本質的に異なる1回戦の組合せは何通りあるか.
(3)\ \ 互いに1回戦で対戦しないシード選手が4人いるとき,\ 本質的に異なる1回戦
の組合せは何通りあるか.
(4)\ \ AまたはBが優勝する確率を求めよ.
(5)\ \ 一回戦でAとBが対戦する確率を求めよ.
(6)\ \ 決勝戦でAとBが対戦する確率を求めよ.
(7)\ \ AとBが対戦しない確率を求めよ.
(8)\ \ Hだけ勝つ確率が$23$であるとき,\ Aが優勝する確率を求めよ. \\
優勝トーナメント戦の場合の数と確率 \\
(1)\ \ 1試合ごとに1人負ける.}\ 最終的に負けるのは7人であるから $7試合}$ \\
本問程度ならば図を見て数えてもよいが,\ より大人数になると対応できなくなる.
数 B:数列の知識があれば,\ 4+2+1という等比数列の和であるという見方もできる.
しかし,\ これも対称性のない変則的なトーナメントの場合には応用が利かない.
実は,\ 試合数と敗者数が1対1で対応する}という無敵の視点がある.
様々な求め方がある.\ 一旦8人全員を①~⑧に対応させる(並べる)}方法を本解とした.
対称的なトーナメントでは,\ じゅず順列のように中央を軸として裏返すと一致するペアが存在する.}
ペアとなる組合せは本質的に同じものであるから,\ 2で割らなければならない.
対称軸は1回戦4本,\ 2回戦2本,\ 3回戦(決勝戦)\,1本の計7本あるから,\ 2^7\,で割る}ことになる.
別解1は,\ M_1\,~M_4}のそれぞれで対戦する選手を順に2人ずつ選ぶ}ものである.
Cを用いて2人ずつ選ぶことで,\ 1回戦4本の対称軸を考慮する必要がなくなる.
しかし,\ 2回戦2本と決勝戦1本の対称軸の考慮は必要で,\ 2^3\,で割る}ことになる.
対称軸を考慮するタイミングが違うだけで,\ 本質的には本解と同じである.
対称性がある場合,\,1つのモノを固定して残りのモノだけを考える}方法が有効であった(例:円順列).
Aが①~⑧のどこになったとしても,\ 7本の対称軸の回転によって必ず①の位置まで移動できる.
よって,\ Aを①の位置に固定し,\ 残りの選手の組み方のみを考えればよい}(別解2).
まず,\ ②の Aの対戦相手を7人から1人選ぶ.\ さらに,\ 残り6人から③と④の2人を選ぶ.
後は⑤~⑧だが,\ Aを①に固定したので,\ M_7\,を軸とする回転はできない.
しかし,\ M_6\,を軸とする回転は可能である.
左側のブロックと同様に,\ 残り4人のうちの1人を⑤に固定し,\ 残り3人から⑥の1人を選ぶ.
まず,\ シードの4人がM_1,\ M_2,\ M_3,\ M_4}\,のどの試合に出るかが4!\,通りある.
①と②,\ ③と④,\ ⑤と⑥,\ ⑦と⑧はそれぞれ区別しない.
区別したとしても,\ どうせ後で2で割る必要が出て面倒なだけである.
また,\ 残りの4人がM_1,\ M_2,\ M_3,\ M_4}\,のどの試合に出るかも4!\,通りある.
最後に,\ 2回戦と決勝戦の対称軸が3本あることを考慮する.
(4)\ \ 3回勝てば優勝で,\ Aの優勝とBの優勝は排反であるから 誰が優勝するかは8通りあり,\ これらは同様に確からしい}か
各試合結果は独立}なので,\ 優勝確率は単純な確率の積}として求めればよい.
A}が①~⑧のどこに組まれても,\ また,\ 他の対戦結果によらず,\ 3回勝ちさえすば優勝できる.
よって,\ Aの初期位置や他の対戦結果を考慮する必要はなく,\ 3回勝つ確率さえ求めれば済む. \\
変則的なトーナメントでは,\ Aの初期配置の確率の考慮も必要になる.
互角の3選手A,\ B,\ C}が抽選で組まれた右のトーナメント戦を行うとき,\ Aの優勝確率を求めよう.
2つの場合は排反であるから,\ Aが優勝する確率は\,16+16=13}\,である.
このように,\ 変則的なトーナメントでは確率を求めるのが途端に面倒になる. \\[-8zh]
実は,\ 勝つ確率が常に等しい場合,\ トーナメントの形によらず優勝確率を瞬時に求める方法がある.
優勝する選手の選び方を全事象にとる}のである(別解).
Aの優勝よりも Bの優勝が起こりやすいなどということはなく,\ 8通りが完全に対等である.
この考え方ならば,\ 右の変則的なトーナメントでも瞬時に Aの優勝確率が\,13\,であるとわかる.
条件付き確率ではないから,\ 求めるのはまだ抽選もしていない時点での優勝確率}である.
この時点では,\ 誰がどの位置になるかも最終的に誰が優勝するかも完全に対等である.
8人の選手の初期配置は$8!$通りあり,\ これらは同様に確からしい}から
AとBの初期配置(順序は考えない)は$C82$通りあり,\ これらは同様に確からしい}から
M$_1$で対戦する選手の組合せは$C82$通りあり,\ これらは同様に確からしい.}
よって,\ M$_1$でAとBが対戦する確率は
$M_2,\ M_3,\ M_4\,においても同様で,\ 各場合は排反なので}
Aの1回戦の対戦相手は7通りあり,\ これらは同様に確からしい}から
何を全事象にとるかで様々な方法が考えられる.
A\,~\,H}の8人全員を①②③④⑤⑥⑦⑧に対応させる(並べる)方法を全事象にとる}と本解となる.
このうちAとB}が1回戦で戦うのは8つの場合で,\ いずれも残り6人の並べ方6!\,通りずつある.
全事象は,\ 問題の条件に関係する事柄のみに着目してとる}とよいのであった.
別解1は,\ ①\,~\,⑧からAとB}の配置2ヶ所を選ぶ方法を全事象にとる}ものである.
AとBの初期配置の組合せは,\ (①,\ ②),\ (①,\ ③),\ ・・・,\ (⑦,\ ⑧)}の\,C82\,通りが完全に対等である.
このうち,\ AとB}が1回戦で戦うのは(①,\ ②),\ (③,\ ④),\ (⑤,\ ⑥),\ (⑦,\ ⑧)の4通りである.
別解2は,\ M_1\,~\,M_4\,の}各試合ごとにAとB}が戦う確率を考える}ものである.
M_1\,で戦う選手の組合せは,\ (A,\ B),\ (A,\ C),\ ・・・,\ (G,\ H)}の\,C82\,通りが同様に確からしい.
このうち,\ AとB}が戦うのは,\ 当然(A,\ B)}の1通りである.
各試合でAとB}が戦う場合は互いに排反}である(M_1\,とM_2\,で同時にAとBが戦うことはない)}.
よって,\ 最後に4つの場合(M_1,\ M_2,\ M_3,\ M_4\,でAとBが戦う})を足し合わせればよい.
別解3は,\ Aの対戦相手のみに着目するものである.
Aは1回戦でB\,~\,H}のうち誰か1人のみと必ず対戦するから,\ 7通りが完全に対等である.
決勝戦の選手の組合せは$C82$通りあり,\ これらは同様に確からしい}から
(5)の別解2の考え方が汎用性が高く,\ 変則的なトーナメントであっても通用する.}
求めるのはまだ抽選もしていない時点での確率}である.
この時点では,\ 決勝戦の組合せは,\ (A,\ B),\ (A,\ C),\ ・・・,\ (G,\ H)}の\,C82\,通りが完全に対等である.
別解1は,\ 1回戦からの確率の積として求める}ものである.
まず,\ AとB}が決勝であたるような初期配置になる確率は\,47\,である.
Aはどこでもよく(確率1),\ そして Aがどこでも,\ Bの位置は残り7ヶ所のうちの4ヶ所である.
後は,\ Aと Bがどちらも2回勝って決勝戦まで勝ち進めばよい.
各場合は排反なので,\ AとB}がどこかで戦う確率は\,7}{C82}\,であり,\ 求めるべきはこの余事象}である.
1回戦と決勝戦で戦う確率は既知なので,\,別解では2回戦で対戦する確率を(6)別解の方法で求めた.
「\,1回戦で戦う」「\,2回戦で戦う」「決勝戦で戦う」は互いに排反である.
Aがどこであっても,\ AとB}が2回戦で戦うような Bの位置は残り7ヶ所のうちの2ヶ所である.
後は,\ AとB}がどちらも1回勝って2回戦まで勝ち進めばよい.
勝つ確率に対等性がない場合,\ 基本的には初期配置で場合分けする必要が生じる.
ただし,\ 本問の場合は,\ A\,~\,Gの勝つ確率は対等}であることを利用すると簡潔に済む.
Hが優勝するという事象の余事象は,\ A\,~\,G}の誰かが優勝するという事象である.
A\,~\,G}の7人は対等であるから,\ Aが優勝する確率はその\,17\,である.