
A,\ B,\ Cの3人が合格する確率がそれぞれ$\bunsuu12,\ \bunsuu23,\ \bunsuu34$であるとき,\ 次の確率を求めよ. \\[1zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ 1人だけが合格する確率 \\[.8zh] \hspace{.5zw} (2)\ \ 少なくとも1人が合格する確率 \\ 独立試行の確率}}}} \\\\[.5zh] 2つの試行$S,\ T$において,\ 試行の結果が互いに影響されないとする. \\[.2zh] このとき,\ 試行$S,\ T$は\textbf{\textcolor{blue}{独立}}であるという. \\[.2zh] さらに,\ $S$で事象$A$が起こり,\ $T$で事象$B$が起こるとき {P(A\cap B)=P(A)P(B)}}\ $}}} \\\\\\\\ (1)\ \ \textcolor{cyan}{Aだけが合格}する確率は \bm{S,\ Tが独立であるとき,\ (AかつBの確率)=(Aの確率)\times(Bの確率)}が成り立つ. \\[.2zh] 試行が独立か否かは常識的に判断する. \\\\ (1)\ \ 誰が合格するかで3つに場合分けできる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 3つの場合は\bm{互いに排反}であるから,\ それぞれを求めて足せばよい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ なお,\ 独立は試行に対しての概念,\ 排反は試行の結果である事象に対しての概念である. \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{独立試行 試行S,\ Tが互いの結果に影響を与えない} \ \,P(A\cap B)=P(A)\times P(B) \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{排反事象 事象A,\ Bが同時に起こらない(A\cap B=\varnothing)} P(A\cup B)=P(A)+P(B) \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ \text{A}だけが合格する場合とは,\ \text{Aが合格し,\ かつBとCが不合格}になる場合のことである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{3人の合格・不合格は互いに影響しない}から\bm{独立な試行}である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ \bm{(\textbf{A}が合格する確率)\times(\textbf{B}が不合格となる確率)\times(\textbf{C}が不合格となる確率)}となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ また,\ 不合格という事象は合格という事象の余事象であるから,\ \bm{1-(合格する確率)}で求まる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \text{Bだけ,\ C}だけが合格する場合も同様である. \\[1zh] (2)\ 「少なくとも~」とあるから,\ 余事象を利用すると早い. $m個のサイコロを同時に振る.\ これをn回繰り返すとき,$ \\[1zh] \hspace{.5zw}\ \ (1)\ \ 毎回,\ 少なくとも1個のサイコロに1の目が出る確率を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw}\ \ (2)\ \ $n$回のうち少なくとも1回,\ $m$個のサイコロに同時に1の目が出る確率を求めよ1回}振るときに\textcolor{red}{1の目が少なくとも1個}出る確率は 1以外の目が少なくとも1個}出る確率は (1)\ \ 「\,m個をn回振り,\ すべての回に少なくとも1個\cdots」という,\ 一見恐ろしく複雑な問題である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ しかし,\ \bm{各回の試行は独立}という問題の核心をとらえさえすれば,\ あっさりと解決する. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ サイコロを何回か振るとき,\ ある回の結果が他の回の結果に影響するはずはない. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\bm{(n回の確率)=(1回目の確率)\times(2回目の確率)\times\cdots\times(n回目の確率)}が成り立つ. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 要は,\ 各回を別々に考えれば済むわけである. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 「少なくとも~」とあるから,\ \bm{余事象の利用}が有効である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「\,1の目が少なくとも1個出る」の余事象は,\ \bm{「\,1の目が1個も出ない」}である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 言い換えると,\ \bm{「\,m個すべてのサイコロに2\,~\,6の目が出る」}である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 1個のサイコロを振ることを1つの試行と考えると,\ m個の各サイコロの試行は独立である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 複数のサイコロを振るとき,\ あるサイコロの結果が他のサイコロの結果に影響するはずはない. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \text{\scalebox{.98}[1]{$よって,\,\bm{(m個の確率)=(1個目の確率)\times(2個目の確率)\times\cdots\times(m個目の確率)}が成り立つ.$}} \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ ゆえに,\ m個すべてのサイコロに2\,~\,6の目が出る確率は \phantom{(1)}\ \ なお,\ 6^m\,通りの重複順列を全事象にとり,\ \bunsuu{5^m}{6^m}\,としてもよい. \\\\ \phantom{(1)}\ \ また,\,「独立なら掛け算」のように公式の理解が不十分で,\,\bunsuu56\times mとしてしまう\bm{ミス}が大変多い. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 独立試行のときに成り立つのは\bm{(確率)\times(確率)}であり,\ 決して(確率)\times(整数)ではない. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 仮に(確率)\times2とすると,\ (確率)+(確率)を意味してしまう. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ このミスがより深刻なのは,\ \bm{「確率とは割合である」という根幹の認識を欠いている}ことにある. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 実は,\ 独立や排反の理解がなくとも,\ 掛けるのか足すのかは割合の観点から感覚的に判断できる. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 例えば,\ 中学レベルの知識でサイコロを2回投げていずれも1の目が出る確率を求めるとしよう. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bunsuu16\times\bunsuu16\,と\,\bunsuu16+\bunsuu16=\bunsuu16\times2\,のどちらになるだろうか.\ 優秀な中学生ならば普通に正解する. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ 0\leqq (確率)\leqq1より,\ \bm{掛けると値が小さく,\ 足すと値が大きくなる}ことが決定的に重要である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 常識的に考えて,\ 2回1の目が出る確率は1回1の目が出る確率よりも小さくなる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 条件の厳しい2回連続1の目が出る割合が1回1の目が出る割合より増えるはずはないだろう. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 独立やら排反やらの知識がなかったとしても,\ \bunsuu16+\bunsuu16=\bunsuu16\times2>\bunsuu16\,は明らかにおかしい. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ 仮に2回5以下の目が出る確率で足してしまおうものなら,\ \bunsuu56+\bunsuu56>1となってしまう. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{状況的に割合が減るのか増えるのかを考慮すると掛けるか足すかを間違えようがない}のである. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 最後,\ n回繰り返すから,\ 1回の確率1-\left(\bunsuu56\right)^mをn個掛ける(n乗する)(\bm{n倍ではない!}). \phantom{(1)}\ \ 本問が抽象的すぎてわかりにくい場合は,\ 具体的な数字で考えてみるとよい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 2個のサイコロを同時に振ることを3回繰り返すとする(m=2,\ n=3とした). \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 3回とも少なくとも1個のサイコロに1の目が出る確率を求めよう. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 1回では1-\left(\bunsuu56\right)^2=\bunsuu{11}{36}\,なので,\ 3回では\left(\bunsuu{11}{36}\right)^3というだけである. \\\\ (2)\ \ m=2,\ n=3として説明する. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 求めるべきは,\ 3回のうち少なくとも1回,\ 2個のサイコロに同時に1の目が出る確率である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ これの余事象は,\ 「\,3回とも,\ 2個のサイコロに同時に1の目が出ない」(A)である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 言い換えると,\ 「\,3回とも,\ 2個のうち少なくとも1個は1以外(2\,~\,6)の目が出る」である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 3回とも同じであるから,\ 後は(1)と同様に1回の確率を求めて3乗すればよい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「\,2個のうち少なくとも1個は1以外の目が出る」の余事象は「\,2個とも1の目が出る」である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ 1回振るとき,\ 2個のうち少なくとも1個は1以外の目が出る確率は 1-\left(\bunsuu16\right)^2 \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ ゆえに,\ 事象Aの確率は\left\{1-\left(\bunsuu16\right)^2\right\}^3であり,\ これを1から引いたものが求める確率である.