
白玉3個,\ 赤玉2個が入った袋から2個同時に取り出す.\ 少なくとも1個が白玉 \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ であったとき,\ もう1個も白玉である確率を求めよ. \\[1zh] \hspace{.5zw}(2)\ \ 3つのサイコロを同時に投げ,\ そのうち少なくとも1つが1の目であったとき, \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ すべて異なる目が出る確率を求めよ. \\ 条件付き確率の有名問題演習}}}} \\\\[.5zh] \textbf{\textcolor{magenta}{事象$\bm{A}$が起こったときに事象$\bm{B}$が起こる確率}(\textcolor{blue}{条件付き確率})}を$\bm{\textcolor{blue}{P_A(B)}}$で表す. (1)\ \ $A:$「少なくとも1個が白玉である」 $B:$「もう1個が白玉である」 (2)\ \ $A:$「少なくとも1つが1の目である」 $B:$「すべて異なる目が出る」 \\[1zh] \bm{「Aであったとき,\ Bの確率を求めよ」}が条件付き確率P_A(B)の問題の構文である. \\[.2zh] P_A(B)の公式より,\ 条件付き確率の問題は実質的には\bm{P(A)とP(A\cap B)を求める問題}である. \\[1zh] (1)\ \ P(A)は,\ 「少なくとも~」なので余事象を利用するとよい. 1-(2個とも赤玉) \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ P(A\cap B)は,\ 要するに「\,2個とも白玉」である. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 総数が\,\kumiawase52=10通りしかないので,\ いざとなればすべて書き出せばよい. \\ (2)\ \ P(A) 1-(3つとも1以外の目が出る) \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ A\cap Bは,\ \bm{3つのサイコロの目の\dot{組}が(1,\ ○,\ □)}\ (1と○と□は別の目)となる事象である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ まず,\ ○と□の数字の選び方は\,\kumiawase52\,通りである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ サイコロ1,\ サイコロ2,\ サイコロ3がそれぞれ1,\ ○,\ □\,のどれになるかが3\kaizyou\,通りである. ある製品の50\%は工場A,\ \ 30\%は工場B,\ \ 20\%は工場Cで製造されており,\ 工場A,\ B, \\[.2zh] \hspace{.5zw}Cの製品にはそれぞれ3\%,\ 4\%,\ 5\%の不良品が含まれる.\ この製品の中から無作為に \\[.2zh] \hspace{.5zw}1つ選んで調べたところ,\ 不良品であった.\ それが工場Aの製品である確率を求めよ. \\ $A:$「不良品である」 $B:$「工場Aの製品である」 不良品となる場合は以下の3つがあり,\ \bm{互いに排反}である. \\[.2zh] 「工場\text Aかつ不良品」=A\cap B 「工場\text Bかつ不良品」 「工場\text Cかつ不良品」 \\[1zh] 本問のような確率を\bm{原因の確率}という. \\[.2zh] 「不良品」という\bm{結果}から逆に「工場\text Aで製造された」という\bm{原因}の確率を求めるわけである. \\[.2zh] 前項で述べたように,\ 結局はP(A\cap B)の計算なので,\ 時間的にAとBのどちらが先かは関係ない. 真実を述べる確率がそれぞれ$\bunsuu23,\ \bunsuu34,\ \bunsuu45$である3人A,\ B,\ Cがいる.\ 振られた1個 \\[.8zh] \hspace{.5zw}のサイコロについて「1の目が出たか」を尋ねたところ,\ AとBは「Yes」,\ Cは「No」 \\[.2zh] \hspace{.5zw}と答えた. 実際に1の目が出ていた確率を求めよ. \\ $S:$「AとBは「Yes」,\ Cは「No」と答える」 $T:$「\,1の目が出る」 \text{AとBは「Yes」,\ Cは「No」}と答える場合は以下の2つがあり,\ \bm{互いに排反}である. \\[.5zh] [1]\ \ 「1の目が出て,\ かつ\ \text{AとBは「Yes」,\ Cは「No」}と答える」\ =S\cap T \\[.5zh] [2]\ \ 「1以外の目が出て,\ かつ\ \text{AとBは「Yes」,\ Cは「No」}と答える」 \\[1zh] [1]\ \ \text{AとB}は真実,\ \text{C}は嘘を述べることになる.\ その確率は [2]\ \ \text{AとB}は嘘,\ \text{C}は真実を述べることになる.\ その確率は 最後の計算は一見面倒だが,\ 分母分子に6\cdot3\cdot4\cdot5を掛けると\,5回に1回の割合で帽子を忘れるくせのあるK君が,\ 正月にA,\ B,\ C\ 3軒をこの順に \\[.2zh] \hspace{.5zw}年始回りをして家に帰ったとき,\ 帽子を忘れてきたことに気がついた. \\[.2zh] \hspace{.5zw}2番目の家Bに忘れてきた確率を求めよ. [\,早稲田大\,] \\ $S:$「どこかの家に帽子を忘れる」 $T:$「家Bに帽子を忘れる」 \\\\ まず,\ 求めるべきが「家\text Bに忘れてきた確率」ではないことに注意しなければならない. \\[.2zh] \bm{「どこかの家に忘れてきたことがわかった時点で,\ 家\textbf Bに忘れてきた条件付き確率」}である. \\[.2zh] つまり,\ 忘れてきたことは確定しており,\ その中で家\text Bで忘れてきた割合を求める. \\[.2zh] 単なる「家\text Bに忘れてきた確率」は,\ どこにも忘れてきていない場合も含めた中での割合である. \\[1zh] どこかの家に帽子を忘れる場合は[1],\ [2],\ [3]の3つあり,\ \bm{互いに排反}である. \\[.2zh] \text{「家Bに忘れる」は,\ \textbf{「家Aに忘れない\ かつ\ 家Bに忘れる」}}である. \\[.2zh] なお,\ P(S\cap T)=P(T)である. \\[.2zh] また,\ P(S)は余事象を利用して求めることもできる. 単純には,\ 家\text{A,\ B,\ C}のどこで忘れるかは対等で,\ いずれも\,\bunsuu13\,となるように思える. \\[.8zh] しかし,\ \textbf{家Bに忘れるためには,\ それ以前に家Aに忘れてきてはならない}という制限が付く. \\[.2zh] よって,\ 3軒は対等ではなく,\ 家\text{A}に忘れてきた確率が最も高くなる. 癌検査の正確さが98\%であるとする.\ つまり,\ 癌にかかっている人がこの検査を受けた \\[.2zh] \hspace{.5zw}場合に陽性と出る確率が98\%であり,\ 癌にかかっていない人が受けた場合には98\%の \\[.2zh] \hspace{.5zw}確率で陰性と出る.\ 以下の2つの集団について,\ その集団内の1人がこの検査を受けて \\[.2zh] \hspace{.5zw}結果が陽性であったとき,\ この人が癌にかかっている確率を求めよ. \\[1zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ 実際に癌にかかっている人の割合が0.5\%である集団 \\[.8zh] \hspace{.5zw} (2)\ \ 実際に癌にかかっている人の割合が20\%である集団 \\ 本問は,\ \bm{検査陽性の問題}と呼ばれる超有名・超重要問題であり,\ 実生活においても役立つ. \\[1zh] (1)\ \ 陽性となる場合は以下の2つがあり,\ \bm{互いに排反}である. \\[.2zh] 「癌にかかっていて陽性」=A\cap B 「癌にかかっていないのに陽性」 \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 癌にかかっている人が0.5\%であるから,\ 癌にかかっていない人は99.5\%である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「癌にかかっていて陽性」の確率は,\ 0.5\%の98\%である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「癌にかかっていないのに陽性」の確率は,\ 99.5\%の2\%である. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 98\%の正確さの検査であるにもかかわらず,\ 実際に感染している確率は\,\bunsuu{49}{248}\kinzi\bm{19.8\%}\,しかない. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ 直感に反した驚くべき結果であり,\ これを\bm{「検査陽性のパラドックス」}という. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 直感的に納得するには,\ 具体的な人数で表を作成してみるとよい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 集団内に1万人いるとすると,\ 実際に癌にかかっている人はその0.5\%,\ つまり50人である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 逆に,\ 残りの9950人は癌にかかっていない人である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 癌にかかっている50人を検査すると,\ 98\%の確率で陽性となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ 50人の内,\ 49人(98\%)が陽性,\ 残りの1人(2\%)は陰性となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 一方,\ 癌にかかっていない9950人を検査すると,\ 2\%の確率で陽性となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ 9950人の内,\ 199人(2\%)が陽性,\ 残りの9751人(98\%)は陰性となる. \\[1zh] & 癌である & 癌でない & 合計 \\\hline 陽性 & 49人 & 199人 & 248人 \\\hline 陰性 & 1人 & 9751人 & 9752人 \\\hline &&& \\[-1.2zh]\hline 合計 & 50人 & 9950人 & 1万人 \\ 陽性の248人中,\ 実際に癌であるのは49人なので,\ P_A(B)=\bunsuu{49}{248}\,である. \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{癌でないのに陽性となる人が多いと,\ 癌である人が陽性者全体の中で埋もれてしまう}のである. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{「結果が陰性であったとき,\ この人が実際に癌にかかっていない確率」}も求めてみよう. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bunsuu{9751}{9752}\kinzi99.99\%\ であり,\ 「陰性」という結果ならば安心してよいだろう. \\\\ (2)\ \ \bm{P_A(B)が集団内の実際に癌である人の割合(検査前確率)に依存して変わる}ことも重要である. & 癌である & 癌でない & 合計 \\\hline 陽性 & 1960人 & 160人 & 2120人 \\\hline 陰性 & 40人 & 7840人 & 7880人 \\\hline &&& \\[-1.2zh]\hline 合計 & 2000人 & 8000人 & 1万人 \\ \bm{情報を得ると確率は更新される}というのが条件付き確率の考え方であった. \\[.2zh] 元々の確率が0.5\%と低いと,\ 「陽性」という情報を得て更新しても19.8\%にしかならない. \\[.2zh] 元々の確率が20\%\ と高いと,\ 「陽性」という情報を得て更新すると92.5\%にまで高くなる. \\[1zh] \bm{検査は,\ 検査前確率が高い人に対して行うのが効果的}というわけである. \\[.2zh] この検査前確率を高める役割を担っているのが医師である. \\[.2zh] 例えば,\ 癌の可能性が0.5\%しかない人に対していきなり検査を行うようなことはしない. \\[.2zh] 無駄な検査は,\ 患者にとって体力的・精神的・経済的に恐ろしい負担となる. \\[.2zh] 患者を診察し,\ 「この症状があるなら癌の可能性が20\%位ある」と判断できて初めて検査が行われる. \\[.2zh] 検査を正しく行い,\ その結果を正しく解釈して確定診断を下すのは簡単なことではないのである. \\\\ (1)において陽性となった人が,\ \bm{もう一度同じ検査を受けて再び結果が陽性}であったとする. \\[.2zh] このとき,\ この人が\bm{実際に癌である確率}は次となる. \\[.5zh] \bunsuu{(癌である\ かつ\ 2回陽性)}{(癌である\ かつ\ 2回陽性)+(癌でない\ かつ\ 2回陽性)} \\ これは,\ \bm{再検査・精密検査の重要性}を物語っている.