白玉5個,\ 赤玉4個が入った袋から同時に3個の玉を取り出すとき,\ 白玉が出る個数X
の期待値$E(X)$を求めよ.個数の期待値}和の期待値は期待値の和として求められるのであった. E(X+Y)=E(X)+E(Y)}
和の期待値問題では当然有用だが,\ 実は「個数の期待値」問題でこそ本領を発揮する.
上の問題も,\ 一見しただけでは和の期待値の公式は無縁に思える.
しかし,\ カウント効果をもつダミー変数を導入すると,\ 公式によって瞬殺が可能になる.
5個の白玉を$W_1,\ W_2,\ W_3,\ W_4,\ W_5$とし,\ 変数$X_k$を以下のように定める.
\ 1 & (3個の玉を取り出すとき,\ W_k\,が含まれる)
\ 0 & (3個の玉を取り出すとき,\ W_k\,が含まれない)
{E(X_1+X_2+X_3+X_4+X_5)E(X_1)+E(X_2)+E(X_3)+E(X_4)+E(X_5)}$1個ずつ順に3個の玉を取り出す(一度取り出した玉は元に戻さない)}と考え,
変数$X_k$を以下のように定める.
\ 1 & (k回目に白玉が取り出される)
\ 0 & (k回目に白玉が取り出されない)
事象が起こるか否かを1か0に対応させるダミー変数を導入する.}
事象が起こるたびに+1ずつカウントするもので,\ 白玉の個数Xを和で表せるようになる.}
本解は,\ 3個の玉の中に特定の白玉が含まれるたびに+1ずつカウントする}ものである.
仮に取り出される白玉がW_1\,とW_4\,であるとしよう.
このとき,\ 白玉の個数はX=X_1+X_2+X_3+X_4+X_5=1+0+0+1+0=2となる.
公式で分割するとE(X_1),\ ・・・,\ E(X_5)さえ求めればよいことになるが,\ 対等性により全て等しい.
W_k\,が含まれる確率は,\ W_k\,以外の2個の玉をW_k\,以外の8個から選ぶ確率である.
W_k\,が含まれない確率は,\ 3個の玉すべてをW_k\,以外の8個から選ぶ確率である.
ここでは一応求めておいたが,\ 実戦ではX_k=0になる場合を考慮する必要はない.
別解1は,\ 1個ずつ順に3回取り出すと考え,\ 白玉が取り出されるたびに+1ずつカウントする.}
確率では,\ 「同時に取り出す」と「非復元抽出(順序が関係しない事象)」は同一視できる}のであった.
仮に1回目と3回目に白玉が取り出されるとしよう.
このとき,\ 白玉の個数はX=X_1+X_2+X_3=1+0+1=2となる.
後は,\ k回目に白玉が取り出されるときの確率をどのように求めるかである.
白玉を当たりくじ,\ 赤玉をはずれくじとみなすと,\ 当たる確率は常に\,59\,である(くじ引きの公平性).
計算で求めるならば,\ ○と×の並べ方と対応させると汎用性が高いのであった.
9本のくじをすべて引くとし,\ □□□□□□□□□への○5個の入れ方\,C95\,通りを全事象にとる.
3回目に当たりくじを引くのは\,□□○□□□□□□\,の場合で,\ 残り8ヶ所から○の場所を4個選ぶ.
3回目にはずれくじを引くのは\,□□×□□□□□□\,の場合で,\ 残り8ヶ所から○の場所を5個選ぶ.
何回目に当たる確率でも同様である.
なお,\ 確率の積で求めようとすると面倒になり,\ これでは和の期待値の公式を利用する意味がない.
2回目に白玉が取り出される確率は (白白)+(赤白)=
3回目に白玉が取り出される確率は
$(白白白)+(白赤白)+(赤白白)+(赤赤白)
「期待値は平均」という観点に立てば,\ 別解1の主張は実に単純である.
平均すると1個あたりの白玉の成分は\,59\,なので,\ 3個あたりの白玉の成分は\,59×3=53\,である.
期待値の定義で求める別解2は一般化が困難だが,\ 本解や別解1の考え方ならば容易に一般化できる.
1,\ 2,\ 3から重複を許して順に6個の数字を選んで左から一列に並べるとき,\
「123」と並ぶ部分の個数Xの期待値$E(X)$を求めよ. \
変数$X_k$を以下のように定める.
\ 1 & (左からk番目から「123」と並ぶ)
\ 0 & (左からk番目から「123」と並ばない)
左からみて123と並ぶ部分があるたびに+1ずつカウントする.}\ \ ○は1,\ 2,\ 3のどれでもよい.
X_1=1 123○○○
X_2=1 ○123○○
X_3=1 ○○123○
X_4=1 ○○○123
X_1=1となる確率は,\ 左から3番目までの並ベ方3^3\,通りを全事象にとると,\ 1}{3^3}=1}{27}\,である.
6個の数字の並ベ方3^6\,通りを全事象にとると,\ 3^3}{3^6}=1}{27}\,となる(○○○が3^3\,通り).
各X_k\,は独立ではないが,\ 和の期待値の公式は独立でなくとも成り立つ}から安心して適用できる.
別解は期待値の定義で求めるものである.\ \ X=2となる場合は123123の1通りである.
X=1となる場合は,\ 左から何番目から「123」が並ぶかで場合分けして数える.
123○○○となる並べ方は3^3\,通りあるが,\ X=2となる123123の1通りを除く必要がある.
白玉,\ 赤玉,\ 青玉がそれぞれ2個ずつ入った袋から同時に3個の玉を取り出すとき,
色の種類の数Xの期待値$E(X)$を求めよ. \\
変数$X,\ Y,\ Z$を以下のように定める.
\ 1 & (3個の玉の中に白玉が含まれる)
\ 0 & (3個の玉の中に白玉が含まれない)
\ 1 & (3個の玉の中に赤玉が含まれる)
\ 0 & (3個の玉の中に赤玉が含まれない)
\ 1 & (3個の玉の中に青玉が含まれる)
\ 0 & (3個の玉の中に青玉を含まれない)
色が1種類増えるたびに+1ずつカウントする.}
つまり,\ 各色の玉が少なくとも1つ含まれていれば+1カウントする}ことになる.
白玉を少なくとも1つ含む確率は,\ (全体)-(白玉を含まない)で求められる(余事象の利用).
変数Xのとる値は2または3なので,\ これに対応する確率を求める(別解).
$X=2 3色から1色選んでその色の玉を2個選び,\,残り2色から1色選んでその色の玉を1個選ぶ.$}
$X=3 各色の玉を1個ずつ選ぶ.$}
1から4までの数字が1つずつ書かれた4個の玉が入っている袋の中から玉を1個ず
つ取り出し,\ 左から順に一列に並べる.\ \ 4個すべて取り出したとき,\ 書かれた数字が左
からの順序と一致する玉の個数Xの期待値$E(X)$を求めよ. \\
変数$X_k$を以下のように定める.
\ 1 & (k番目の数字が一致する)
\ 0 & (k番目の数字が一致しない)
本問は,\ いわゆる完全順列(プレゼント交換の問題)}と関連している.
プレゼント交換に成功する場合の数は,\ 総数から失敗する場合の数を引いて求められる}のであった.
本問で求めるのは,\ プレゼント交換に失敗するときの個数の期待値}である.
左からの順序と玉に書かれた数字が一致するたびに+1ずつカウントする.}
X_1=1は1○○○,\ \ X_2=1は○2○○,\ \ X_3=1は○○3○,\ \ X_4=1は○○○4である.
1○○○となる確率を求めるとしよう.\ \ ○○○には2,3,4がどのように並んでも構わない.
一番左の数字のみを全事象にとると1,\ 2,\ 3,\ 4の4通りが同様に確からしい.
よって,\ 一番左の数字が1になる確率は\,14\,である.
4個すべての数字の並ベ方を全事象にとると,\ 3!}{4!}=14\,となる.
X_2=1,\ X_3=1,\ X_4=1となる確率も同様である.
本解答をn個の玉が入っている場合にまで一般化すると,\ E(X_k)=1n\,より,\ 結局E(X)=1となる.
変数Xのとる値は0,\ 1,\ 2,\ 3,\ 4なので,\ X=1,\ 2,\ 3,\ 4に対応する確率を求める(別解).
X=1のとき どの1個の玉が順序と一致するかは\,C41=4通りがありえる.
X=1のとき} その4通りのいずれに対しても,\ 他の玉の並べ方は2通りである.
X=1のとき} 例えば,\ ①のみが順序と一致するのは,\ 以下の2つの場合である.
X=2のとき どの2個の玉が順序と一致するかは\,C42=6通りがありえる.
X=2のとき} その6通りのいずれに対しても,\ 他の玉の並べ方は1通りである.
X=2のとき} 例えば,\ ①と②が順序と一致するのは,\ 以下の場合のみである.