最大値と最小値の確率

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サイコロを$n$回振るとき,\ 出る目の最大値を$X$,\ 最小値を$Y$とする.\ \\[1zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ $X=6$となる確率を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (2)\ \ $X=5$となる確率を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (3)\ \ $Y=3$となる確率を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (4)\ \ $X=5$かつ$Y=3$となる確率を求めよ. \\[.8zh] \hspace{.5zw} (5)\ \ $X-Y=2$となる確率を求めよ. \\ {最大値と最小値の確率}}}} \\\\[.5zh]  $X=k$となる確率を$P(X=k)$のように表す. 二項定理(数I\hspace{-.1em}I)を利用 最大値・最小値の確率は,\ 同じ数字が複数選ばれる可能性がない場合は単純に求められる. \\[.2zh] 例えば,\ 1から10までの数字から同時に3個選ぶとき,\ 最大の数字が6の確率を求めるとしよう. \\[.2zh] 1個は6で確定なので残り2個の数字を5以下の5個から選べばよく,\ \bunsuu{\kumiawase52}{\kumiawase{10}{3}}=\bunsuu{1}{12}\,となる. \\[.8zh] ここでは,\ 同じ数字が複数選ばれる可能性がある場合の最大値・最小値の確率の求め方を紹介する. \\[.2zh] この場合は直接的に求めることが難しくなるので,\ \bm{余事象や差事象を利用する}方法が推奨される. \\\\ (1)\ \ 「最大値6\,」は,\ \bm{「\,n回のうち少なくとも1回6の目が出る」}と言い換えられる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ このように,\ 「最大値・最小値」には「少なくとも~」が隠れているため,\ \bm{余事象を利用}できる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「\,n回のうち少なくとも1回6が出る」の余事象は,\ \bm{「\,n回すべて5以下の目が出る」}である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{「\,n回すべて○以上・○以下」の確率ならば容易に求まる}ことを利用するわけである. \\[1zh] (2)\ \ \bm{「最大値5\,」=「\,n回すべて5以下の目が出て,\,かつ,\,n回のうち少なくとも1回5の目が出る」} \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ (1)とは違って\bm{6の目が出てはいけないという条件}もあるから,\ 1-P(X\leqq4)は誤りである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「\,すべて5以下」というn回全体に関する条件に着目して全事象をとるのがポイントである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ つまり,\ \bm{「\,n回すべて5以下の目が出る」から「\,n回すべて4以下の目が出る」を引けば済む.} \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ 結局,\ 最大値・最小値の確率は,\ \bm{タマネギの断面図のイメージ}が全てである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 全事象Uの中に「すべて5以下の目が出る」があり,\ これを除くと「最大値6\,」となる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ さらに,\ 「すべて5以下の目が出る」の中に「すべて4以下の目が出る」がある. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 「すべて5以下の目が出る」から「すべて4以下の目が出る」を除くと,\ 「最大値5\,」となる. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ なお,\ 以下のように求めると間違うので注意してほしい. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \  1回目に5の目が出る(他の回は5以下ならば何でもよい)確率は \bunsuu16\left(\bunsuu56\right)^{n-1} \\[.8zh] \phantom{(1)}\ \  2回目,\ 3回目,\ \cdots,\ n回目に5の目が出る確率も同じである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \  よって P(X=5)=(1回目5)+(2回目5)+\cdots+(n回目5)=\bunsuu16\left(\bunsuu56\right)^{n-1}\times n \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ (1回目5),\ \cdots,\ (n回目5)は\bm{排反ではない}から,\ 単純に足しても求まらない. \\[1.3zh] \phantom{(1)}\ \ 直接的に求めることも可能だが,\ \bm{二項定理}の知識を要する(別解). \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 排反か否かは後から考えるのではなく,そもそも\bm{排反になるように場合分けすべき}なのであった. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{n回のうち5の目が何回出るかで場合分けすると排反になる.} \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 各場合は,\ 同じ試行をn回繰り返すという\bm{反復試行}の確率である. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 確率pの事象Aがr回,\ 確率qの事象Bがn-r回起こる確率は \kumiawase nrp^rq^{n-r}\\[.5zh] \phantom{(1)}\ \  5の目がちょうど1回出るとき   \phantom{(1)}\ \ これらの和を次の\bm{二項定理を用いてまとめる}ことを考える.\ なお,\ \kumiawase n0=\kumiawase nn=1である. \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \  (a+b)^n=\kumiawase n0a^n+\kumiawase n1a^{n-1}b+\kumiawase n2a^{n-2}b^2+\cdots+\kumiawase{n}{n-1}ab^{n-1}+\kumiawase nnb^n \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{\left(\bunsuu46\right)^nを無理矢理作る}と公式を適用できる. \\\\ (3)\ \ \bm{「\,n回すべて3以上の目が出る」から「\,n回すべて4以上の目が出る」を除く.} 「最大値5かつ最小値3\,」は以下のように言い換えられる. \\[.2zh]  \bm{「\,n回すべて3か4か5で,\ かつ少なくとも1回3が出て,\ かつ少なくとも1回5が出る」} \\[1zh] とりあえず,\ \bm{「\,n回すべて3か4か5の目が出る」を全事象Uとする.} \\[.2zh] 求める確率は,\ \underline{このUの中で}以下となるような確率である. \\[.5zh]  \bm{「少なくとも1回3の目が出る(A)」かつ「少なくとも1回5の目が出る(B)」} \\[1zh] \bm{「少なくとも~」かつ「少なくとも~」の確率}は,\ 前項で述べた通り,\ \bm{余事象を利用}して求める. \\[.2zh] \bm{集合の観点からとらえるとほぼ機械的に処理できる}のであった. \\[.2zh] ド・モルガンの法則\ \bm{\kyouyaku{A\cap B}=\kyouyaku A\cup\kyouyaku B}\ により,\ 結局P(\kyouyaku A),\ P(\kyouyaku B),\ P(\kyouyaku A\cap\kyouyaku B)に帰着する. \\[.5zh]  \kyouyaku A:「\,Uの中で,\ n回のうち1回も3の目が出ない」=「\,n回すべて4か5の目が出る」 \\[.2zh]  \kyouyaku B:「\,Uの中で,\ n回のうち1回も5の目が出ない」=「\,n回すべて3か4の目が出る」 \\[.2zh]  \kyouyaku A\cap \kyouyaku B:「\,Uの中で,\ n回のうち1回も3の目も5の目も出ない」=「\,n回すべて4の目が出る」 \\[.5zh] 後は,\ \bm{全事象の確率P(U)が1ではない}ことに注意して求めればよい. \\[.2zh] \bm{ベン図}でとらえる場合,\ \bm{周りの部分が求めるA\cap Bであると考える}と考えるとわかりやすい. \\[1zh] なお,\ \bm{P(A\cap B)=P(A)\cdot P(B)は一般には成り立たない}のであった(参照:事象の独立と従属) \\[.2zh] よって,\ (2)と(3)を用いてP(X=5,\ Y=3)=P(X=5)\cdot P(Y=3)で求めるのは\bm{誤り}である. \\[.2zh] たまたまP(A)\cdot P(B)の計算結果が正答と一致する可能性はあるが,\ 論理不足とみなされる. \\[.2zh] 本問の場合は,\ P(X=5)\cdot P(Y=3)の計算結果はそもそも正答と一致しない. $X-Y=2$となるのは,\ $\textcolor{red}{(X,\ Y)=(3,\ 1),\ (4,\ 2),\ (5,\ 3),\ (6,\ 4)}$のときである. X-Y=2となる(X,\ Y)の組合せは4通りある. \\[.2zh] (4)と同様に考えると,\ どの組合せに対する確率も同じである.