試行 同じ条件で繰り返すことができ,\ 結果が偶然によって確定する行為.}
事象 試行の結果}として起こる事柄.\ \ $AやB$で表す.
根元事象 それ以上分割することができない事象.}
全事象 根元事象全体からなる事象.\ \ $U$で表す.
空事象 全く起こらない事象.\ \ $\varnothing$で表す.
確率 着目する事象の起こりやすさを全事象に対する割合として数値化したもの.}{確率の定義 全事象Uのどの根元事象も同様に確からしい(同程度に起こりやすい)}$とき
$事象Aの確率}\ \ (事象Aが起こる場合の数)}{(起こりうる全ての場合の数)確率の基本性質 $0≦ P(A)≦1 P(U)=1 P(\varnothing)=0
\rei\ \ 1個のサイコロを投げる試行において,\ 奇数の目が出る事象をAとする.
何となくで確率を求められても,\ 答えに自信が持てないという学生は多い.\ そして間違える.
その理由の1つは,\ 確率の定義(特に下線部)の理解が不十分なことにある.
確率は場合の数の比であるが,\ それはあくまでも前提条件(下線部)の下での話である.
% 前提条件(下線部)を無視し,\ 単なる場合の数の比としか認識できていないのである.
% 一般に,\ 定義・定理・公式は数式だけでなく前提条件を含めた認識が必須である.
% 例えば,\ $√ a\,√ b=√{ab}$\ が常に成り立つと認識しているならば,\ それは間違いである.
% この公式には「\,$a>0,\ b>0$のとき」という前提条件がある.
% 教科書や参考書には必ずこの前提条件が書いてあるはずだが,\ 無視していなかっただろうか.
% 実際,\ $√{-\,2}√{-\,3}=√ 6$は誤りであり,\ 正しくは$√{-\,2}√{-\,3}=-√6$\ (数II)である.
% 前提条件を無視して数式だけ丸暗記するような数学の学習姿勢は改める必要がある.
確率の学習は,\ 確率の定義及び確率と場合の数の違いを簡単な例で理解することから始まる.無作為に玉を1個取り出すとき,\ 赤玉である確率を求めよ.\ \,同じ色の玉は区別できない.}
\ \ (1)\ \ 白玉2個と赤玉2個が入った箱 (2)\ \ 白玉1個と赤玉3個が入った箱 \\
起こりうる全ての場合は[\,白玉を取り出す\,]と[\,赤玉を取り出す\,]の2通りであるから
(1) \fbox{○○●● $[\,赤玉\,]}{[\,白玉\,][\,赤玉\,]}=12$\ ?
(2) \fbox{○●●● $[\,赤玉\,]}{[\,白玉\,][\,赤玉\,]}=12$\ ?
これらの正誤とその理由を確率の定義に照らし合わせて説明できるだろうか.
説明できないのであれば,\ 確率の定義の理解が不十分である.
その理解度で仮に正解できたとしても,\ 単に運がよかっただけということになる. \\{(1)が正しく,\ (2)が誤り}だということはすぐにわかるだろうが,\ その理由が重要である.
(1)は分母の2通りが同様に確からしい一方で,\ (2)は同様に確からしくないのである.
(2)の\ \fbox{○●●●\ は,\ [\,赤玉\,]が[\,白玉\,]よりも3倍起こりやすい.
この2通りを対等と考えて確率(割合)を求めても,\ 正しいはずはない.
確率$ aN}$では,\ 分母の$N}$通りの1通りずつが同様に確からしくなければならないのである. \\
では,\ どのように考えると同様に確からしくなるのだろうか.
最も確実な方法は,\ 同じモノでも区別して考えることである.
(2)では,\ [\,白玉\,][\,赤玉1\,][\,赤玉2\,][\,赤玉3\,]と考えると,\ この4通りは同様に確からしい.
[\,白玉\,]よりも[\,赤玉1\,]が起こりやすいなどということはないはずである.
これを踏まえて(1)の\ \fbox{○○●●\ と(2)の\ \fbox{○●●●\ の解答をまとめると以下となる. $[\,赤玉\,]}{[\,白玉\,][\,赤玉\,]}=12}$ (\ [\,白玉\,],\ [\,赤玉\,]が同様に確からしい}\ )
\,\raisebox{-.2zh}{○ $[\,赤玉1\,][\,赤玉2\,]}{[\,白玉1\,][\,白玉2\,][\,赤玉1\,][\,赤玉2\,]}=24=12}$
(\ [\,白玉1\,],\ [\,白玉2\,],\ [\,赤玉1\,],\ [\,赤玉2\,]が同様に確からしい[\,赤玉\,]}{[\,白玉\,][\,赤玉\,]}=12$ (\ [\,白玉\,],\ [\,赤玉\,]が同様に確からしくない}\ )
\,\raisebox{-.2zh}{○ $[\,赤玉1\,][\,赤玉2\,][\,赤玉3\,]}{[\,白玉\,][\,赤玉1\,][\,赤玉2\,][\,赤玉3\,]}=34}$
(\ [\,白玉1\,],\ [\,赤玉1\,],\ [\,赤玉2\,],\ [\,赤玉3\,]が同様に確からしい}\ )
問題に「区別できない」とあるにもかかわらず,\ 区別すると正解できることが重要である.
ここに,\ 場合の数と確率の決定的な違いがある.
確率では,\ すべてのモノを区別して考えるのが原則となる.
当然ながら,\ 分子も分母と同基準で求めなければならないことにも注意する.
(1)のように,\ 同様に確からしくさえあれば,\ 区別してもしなくてもよい.
(1)程度ならば,\ 区別しない場合の[\,白玉\,][\,赤玉\,]が同様に確からしいことは明らかだろう.
しかし,\ 問題が複雑になると,\ 区別しない場合に同様に確からしいか否かが容易に判断できなくなる.
例えば,\ (1)の箱から同時に2個}選ぶとき,\ (白,\,白),\ (白,\,赤),\ (赤,\,赤)は同様に確からしいだろうか.
確信を持って即答することは難しいだろう.\ 少なくとも自分には無理である.
判断が難しい場合は,\ 安全策ですべて区別して考える.\ 区別すると確実に同様に確からしくなる.}
実際,\ \dot{異}\dot{な}\dot{る}\,4個(白_1,\ 白_2,\ 赤_1,\ 赤_2)から2個を選ぶ方法(C42=6\,通り)は同様に確からしい.
(白_1,\ 白_2),\ (白_1,\ 赤_1),\ (白_1,\ 赤_2),\ (白_2,\ 赤_1),\ (白_2,\ 赤_2),\ (赤_1,\ 赤_2)
(白_1,\ 白_2)よりも(白_1,\ 赤_1)が起こりやすいなどということはないはずである.
つまり,\ (白,\ 赤)は(白,\ 白)や(赤,\ 赤)の4倍起こりやすいことがわかる.
先程(1)の[\,白玉\,][\,赤玉\,]が同様に確からしいことを明らかとしたが,\ 一旦区別すると完全に説明できる.
区別した[\,白玉1\,],\ [\,白玉2\,],\ [\,赤玉1\,],\ [\,赤玉2\,]は当然同様に確からしい.
同様に確からしい事象を\dot{同}\dot{数}\,(2個ずつ)\dot{ま}\dot{と}\dot{め}\dot{た}事象である[\,白玉\,]と[\,赤玉\,]も同様に確からしい.}
実は,\ 常に分母のN通りの1通りずつを同様に確からしくすることができるとは限らない.
例えば,\ いびつなコインを投げるとき,\ [\,表が出る\,]と[\,裏が出る\,]は同様に確からしくない.
しかし,\ この場合でも割合さえわかれば確率を求められる.
仮に表が裏の2倍出やすいならば,\ 表が出る確率は\,23\,である.
いずれにせよ,\ 「何が同様に確からしいか」や「割合が何か」は本来は問題で与えられる必要がある.
しかし,\ 実際には問題に書いてない場合も多いので,\ その場合は自分で判断する.
特に断りがなければ,\ コインならば[\,表\,]と[\,裏\,]が同様に確からしいとして問題を解く他ない.
なお,\ 確率で区別できないものを区別することに納得いかない人は以下のようにとらえるとよい.
そもそも,\ 実体として別物である2物体を区別できないことが現実的にありえるのだろうか.
一見して区別できないことはあるだろうが,\ 詳しく調べると必ず区別できるはずである.
例えば,\ 一方に極小の傷があるかもしれないし,\ 質量が0.000000001\, g異なるかもしれない.
学生は場合の数を先に学習するので,\ いつしか区別できないことに慣れてしまう.
しかし,\ これは非現実的なことで,\ むしろ区別する確率の方が現実に即しているといえる.
確率は,\ 元々は賭けに勝つことを目的として始まった分野である.
確率の定義は,\ 必然的に現実に即したものになったのである.