袋の中に1から5までの数字が1つずつ書かれた5個の玉が入っている.\ この中から
無作為に1個の玉を取り出し,\ 書かれている数字を記録してから袋の中に戻すという
操作を$n$回繰り返したとき,\ 記録した数字の和が3の倍数となる確率を求めよ. \\
確率漸化式(対等性・対称性のある3状態) \\
$n回繰り返したとき,\ 数字の和が3の倍数となる確率をp_n}とする.
$n+1$回繰り返して和が3の倍数となるのは次の3つの場合で,\ 互いに排反である.
{n回後の和が3の倍数で,\ n+1回目に3の玉を取り出す.n回後の和を3で割った余りが1で,\ n+1回目に2か5の玉を取り出す.}$ n回後の和を3で割った余りが2で,\ n+1回目に1か4の玉を取り出す.}$
整数分野で学習したように,\ 倍数条件は余りに着目する}のが基本である.
同様の設定で和が奇数(2で割った余り1)となる確率をすでに2状態の項で求めた.
3で割った余りは0,\ 1,\ 2の3種類があるから,\ 本問は3状態を行き来する問題}である.
偶数と奇数の組合せは3通りだが,\ 3で割った余りの組合せは以下の6通りがある.
(3で割った余り0)+(3で割った余り0)=(3で割った余り0) 0+0≡0±od3
(3で割った余り0)+(3で割った余り1)=(3で割った余り1) 0+1≡1±od3
(3で割った余り0)+(3で割った余り2)=(3で割った余り2) 0+2≡2±od3
(3で割った余り1)+(3で割った余り1)=(3で割った余り2) 1+1≡2±od3
(3で割った余り1)+(3で割った余り2)=(3で割った余り0) 1+2≡3≡0±od3
(3で割った余り2)+(3で割った余り2)=(3で割った余り1) 2+2≡4≡1±od3
これらを考慮すると,\ p_{n+1}\,へ推移する場合は3通りあるとわかる.
ここで,\ n回繰り返したとき,\ 3で割った余りが1,\ 余りが2となる確率をそれぞれq_n,\ r_n\,とする.
p_n+q_n+r_n=1より
このように,\ 確率漸化式では,\ 推移確率が対等である複数の状態をまとめて扱う}ことが有効である.
しかも,\ 本問の場合はp_n+q_n+r_n=1}も利用して,\ 直ちにp_n\,のみの漸化式を作成できる.
3つ以上の状態がある確率漸化式では,\ 対等性・対称性が存在する可能性が極めて高い.}
対等性・対称性のない3状態の連立漸化式は,\ 大学受験では相当の難問になってしまうからである.
対等性・対称性に注意して立式や式変形する}ことが非常に重要である.
特殊解型漸化式\ a_{n+1}=pa_n+q}\ は,\ 特性方程式\,α=pα+q\,を解いて特殊解\,α\,を求める.
すると,\ 等比数列型漸化式\ a_{n+1}-α=p(a_n-α)\ に帰着する.
p_n\,は複数の答え方が考えられる.
p_{n+1}\,と同様にして,\ q_{n+1},\ r_{n+1}\,の漸化式を作成することができる.
p_1=15,\ q_1=r_1=25\,の違いがあるだけで,\ 3式は完全な対称性をもつ(p_n\,→\,q_n\,→\,r_n\,→\,p_n\,と循環).
2状態の対称型連立漸化式と同様に3つの漸化式を足すと p_{n+1}+q_{n+1}+r_{n+1}=p_n+q_n+r_n
漸化式の対称性とを求めることもできる.
漸化式の対称性を考慮すると,\ ,となることも自然である.
正三角形ABCの各頂点を移動する動点Pがある.\ 動点Pは,\ 1秒ごとに$12$の確率で
その頂点に留まり,\ それぞれ$14$の確率で他の2頂点のいずれかに移動する. 動点Pが
最初に頂点Aにいるとき,\ $n$秒後に動点Pが頂点Aにいる確率を求めよ. \\
動点Pが$n$秒後に頂点Aにいる確率を$a_n$}とする.
左が3状態の推移図,\ 右がa_{n+1}\,への推移図であり,\ 問題の構造は前問と全く同じである.
連立漸化式を作成すると \3つの箱A,\ B,\ Cがあり,\ 最初は箱Aに赤玉,\ 箱Bに白玉,\ 箱Cに白玉が1個ずつ入
っている.\ 1個のコインを投げて表が出ると箱Aと箱Bの玉を交換し,\ 裏が出ると箱B
と箱Cの玉を交換するという試行を$n$回繰り返したとき,\ 3つの箱A,\ B,\ Cに赤玉が
入っている確率をそれぞれ求めよ.
$n$回繰り返したとき,\ 箱A,\ B,\ Cに赤玉が入っている確率をそれぞれ$a_n,\ b_n,\ c_n$とする.
前問ほど対称性が明らかではなく,\ 最初から1状態のみの漸化式を作成するのは困難である.
そこで,\ とりあえず3状態の連立漸化式を作成してみる.
一見3状態に対称性があるように思えるが,\ よく見ると対称性があるのはa_n\,とc_n\,だけ}である.
漸化式に対称性はあるが,\ a_1≠ c_1\,よりa_n≠ c_n\,であることには注意する.
推移確率の対等性とa_n+b_n+c_n=1より,\ 先にb_n\,が求まる}ことに気付かなければならない.
後はa_n\,とc_n\,であるが,\ 2状態の対称型連立漸化式と同様に和と差で組む発想}が必要になる.
a_n+c_n\,は,\ a_n+b_n+c_n=1を利用して直ちに求められる.
a_{n+1}-c_{n+1}\,を計算してみると等比数列型漸化式となり,\ a_n-c_n\,を求められる.
最後,\ a_n+c_n\,とa_n-c_n\,を連立してa_n,\ c_n\,を求めればよい.