A,\ Bの2人が繰り返し試合をして,\ 先に2勝リードしたほうを優勝とする.
1回の試合でAが勝つ確率が$13$であるとき,\ 次の確率を求めよ.
(1)\ \ ちょうど5回の試合で優勝が決まる確率
(2)\ \ ちょうど6回の試合で優勝が決まる確率
(3)\ \ ちょうど$n$回の試合でAの優勝が決まる確率
(4)\ \ $2m$回以下の試合でAの優勝が決まる確率(数B)
(5)\ \ Aが優勝する確率(数III) \\
反復試行の確率(先に2勝リード) \\
「先に2勝リード」問題はパターン暗記が有効だが,\ 初見で対応できるかがより重要である.
必要なのは,\ 実験や試行錯誤により,\ 事象の構造を自らあぶり出そうとする姿勢}である.
「先に$k$勝する」問題では,\ 最後の1回を分けて考えることが有効であった.
一方本問の場合,\ 最初の2回を考えることで事象の構造がほぼ把握できる.
当然,\勝利数の差に着目する.\ 最初の2回がAA,\ BB}ならば, A,\ B}の優勝が決まる.
最初の2回がAB,\ BA}ならば優勝が決まらず,\ 試合続行となる.
このとき,\ 勝利数の差が0となり,\ 最初の状態にリセットされる点が決定的に重要である.
$X=( Aの勝利数)-( Bの勝利数)}$と定める.
1回の試合で,\ Aの勝利数またはBの勝利数のどちらか一方のみが1増える.
よって,\ 奇数試合後のXの値は$±\,1$,\ \ 偶数試合後のXの値は$0,\ ±\,2$}である.
(1)\ \ 奇数試合後のXの値は$±\,1$}であるから,\ 求める確率は\
X=2になるとき Aの優勝,\ X=-\,2になるとき Bの優勝が決まる.
1回の試合でのXの変化量は±1}なので,\ 奇数試合後にX=±\,2になることはない.
ちなみに,\ 以下のような問題設定であっても実質的に同じ問題であることに気付いてほしい.
A,\ B}それぞれ最初の持ち点を2点とし,\ 1回の試合ごとに勝者は敗者から1点もらう.}
一方の持ち点が0点になるまで繰り返し試合をする.}
X=( Aの持ち点)-( Bの持ち点)とすると,\ 最初はX=0で,\ X=±\,4になると終了である.
A,\ B}の持ち点の一方が1点増えて他方が1点減るから,\ 1回の試合でのXの変化量は±2である.
よって,\ 奇数試合後のXの値は±2,\ 偶数試合後のXの値は0,\ ±\,4である.
事象の構造を考慮すると,\ 2試合ワンセットで考える}べきであろう.
結局,\ ABまたはBAを繰り返す間は続き,\ 最後にAAまたはBBとなると優勝が決まる.}
0\,→\,±2は,\ 0\,→\,0の余事象であることを利用して求めた.
(3)\ \ $nが奇数}$のとき 求める確率は\ $0}$
$nが偶数}$のとき
(2回)+(4回)+(6回)+・・・・・・+(2m-2回)+(2m回)\ を求めればよい(数 B:数列).
これは,\ 初項\,19,\ 公比\,49,\ 項数mの等比数列の和}である.\ 公比を\,23\,と間違えやすいので注意.
初項a,\ 公比r,\ 項数nの等比数列の和 a(1-r^n)}{1-r}
難しければ,\ 無理してΣを用いて表す必要はない.
本問の結果は以下のような観点でとらえることができる.
2m回以下の試行で優勝が決まらない確率は49^mより,\ 優勝が決まる確率は1-49^m\,である.
AとB}のどちらが優勝するかは最後の2回のみに依存し,\ 確率はそれぞれ\,19,\ 49\,である.
つまり,\ Aの優勝とBの優勝}は1:4の割合で起こるから,\ Aの優勝確率は1-
(2回)+(4回)+(6回)+・・・・・・\ を求めればよく,\ 部分和の無限大の極限をとる}(数III})ことになる.
(4)の解説で述べたように,\ Aの優勝確率が\,15\,となるのは当然である.
\end{array\right]$ \\
さて,\ 本問では必須ではなかったが,\ 事象の推移が一目瞭然になる圧倒的な解法}が存在する.
横軸を回数},\ 縦軸を点数(本問では勝利数の差)としたグラフ(推移図)の作成である.
次問のようにリード数が3以上になってくると,\ 推移図の作成以外の解法が厳しくなる.
推移図の扱い方は次問で説明する.
A,\ Bの2人が繰り返し試合をして,\ 先に3勝リードしたほうを優勝とする.
1回の試合でAが勝つ確率が$13$であるとき,\ 次の確率を求めよ.
(1)\ \ ちょうど6回の試合でAの優勝が決まる確率
(2)\ \ ちょうど7回の試合でAの優勝が決まる確率 \\
反復試行の確率(先に3勝リード)
$X=( Aの勝利数)-( Bの勝利数)}$と定める. \\
(1)\ \ 図より 求める確率は\ \ 0}
1回の試合で,\ Aの勝利数またはBの勝利数のどちらか一方のみが1増える.
よって,\ 奇数試合後のXの値は$±\,1,\ ±\,3$,\ \ 偶数試合後のXの値は$0,\ ±\,2$}である.
ゆえに,\ 6試合後に$X=3$となることはなく,\ 求める確率は\ \ bf0
6試合中のAの勝利数を$a$とすると $X=a-(6-a)=2a-6=3}$
これを満たす自然数$a$は存在しない}から,\ 求める確率は\ \ 0}
(2)\ \ 図より,\ ちょうど7試合でAが優勝するパターンは9通り}ある.
いずれも$\NE$\ 5個}と$\SE$\ 2個}を通るから,\ 求める確率は
X=0にリセットされないので,\ 先に2勝リードの場合ほど簡単にはいかない.
5試合程度までならば,\ Aの優勝パターンは少ないのですべて書き出すのも難しくない.
実際,\ ちょうど5試合で Aが優勝するパターンは3通り(AABAA,\ ABAAA,\ BAAAA})しかない.
しかし,\ 試合数が増えるにつれて一気に厳しくなる.\ 結局,\ 推移図が最強}というわけである.
(1)\ \ 答えだけでなく,\ 起こりえない理由も記述しておくことが望ましい.
\ \ 特に,\ 別解2のような手法は応用性が高く,\ 重要である.
(2)\ \ Aの優勝パターンが何通りあるかは,\ 推移図があれば場合の数で学習した最短経路問題}である.
\ \ 通れない所が複数ある複雑な道路の場合,\ 最短経路の総数を計算だけで求めることは難しい.
\ \ そこで,\ 最短経路問題の最終手段である和の法則に基づく書き込み}を利用して求める.
\ \ \NE\,の確率はすべて\,13,\ \ \SE\,の確率はすべて\,23\,である.
\ \ \NE\,の個数は,\ X=a-(7-a)=2a-7=3よりa=5と求めることもできる.
推移図があれば規則性が見えてくるので,\ 一般化も可能になる.\ \ mを自然数とする.
試合数 & 3 & 5 & 7 & ・・・ & 2m+1
Aの優勝パターンの総数 & 1 & 3 & 9 & ・・・ & 3^{m-1}
(\,\NE,\ \SE\,)の個数 & (3,\ 0) & (4,\ 1) & (5,\ 2) & ・・・ & (m+2,\ m-1) \\
nが3以上の奇数,\ つまりn=2m+1のとき,\ ちょうどn回の試合で Aの優勝が決まる確率は