整数a,\ bについて,\ a=kb\ (k:整数)\ と表されるとする.$
$このとき,\ aをbの倍数,\ bをaの約数という.$
0=k・0\ (k:整数)\ より,\ すべての整数は0の約数}である.
これは,\ 0がすべての整数の倍数}であることも意味している.
a=a・1,\ a=(-\,a)・(-\,1)\ より,\ ±\,1はすべての整数の約数}である.
a=kb\ のとき\ a=(-\,k)(-\,b)\ より,\ bがaの約数ならば-bもaの約数}である.
\ がいずれも自然数となるような自然数nをすべて求めよ.$ \\
{整数問題の極意 \\
整数分野には,\ 多くの整数問題に適用できる論理展開がある.
この論理展開に慣れることが,\ 整数を得意分野とするための第一歩である.
$[1]$\ \ 判明した性質を,\ 自分で文字を設定}して数式で表現する. 元からある文字を消去}し, 自分が設定した文字の条件を追求する.
$[3]$\ \ その結果を元の文字に還元する.
$ n3\,が自然数となるためには,\ nは3の倍数でなければならない.$
$よって,\ n=3k\ (k:自然数)}\ とおける.$
$このとき,\ n5=3k}{5}\,が自然数となるためには,\ kは5の倍数でなければならない.$
$よって,\ k=5m\ (m:自然数)}\ とおけ,\ このとき n=15m}$
$ゆえに 300}{n}=300}{15m=20}{m}$
$20}{m}\,が自然数となるためには,\ mは20の約数}でなければならない.$
本問程度ならば,\ 単純に3の倍数かつ5の倍数かつ300の約数}をすべて書き出せば済む.
ここでは,\ 応用性を考え,\ 上で述べた論理展開で求めてみた.
[1]}\ \ まず,\ 第1式からnが3の倍数でなければならないことが判明するので,\ これを数式で表現する.
\ \ 日本語「自然数nは3の倍数」は,\ 数式「\,n=3k\ (k:自然数)」}と表現できる.
\ \ 新たな文字を設定するとき,\ その文字が何を意味するかを必ず明記する}こと.
[2]}\ \ n=3kを代入することにより,\ 第2式から元からある文字nを消去}する.
\ \ そして,\ 自分が設定した文字kの条件を追求する.}
[1]}’\ \ kが5の倍数でなければならないことが判明するので,\ これを数式で表現する.
[2]}’\ \ 古い文字n,\ kを消去し,\ 新しい文字mの条件を追求する.
[3]}\ \ mが定まるから,\ これを元の文字nに還元(n=15mに代入)}する.
要は,\ 「気付いた性質があれば自分で文字を設定し数式にしてどんどん代入せよ」}ということである.
自分で新たな文字を次々と設定していくというのは,\ 最初は勇気がいることだろう.
しかし,\ これこそが整数問題の極意}なのである.
以下に今後登場する日本語から数式への変換例をいくつか示しておく.
ll}
nは3で割ると1余る整数 & n=3k+1\ (k:整数) または n≡1±od3
連続する3整数 & n-1,\ n,\ n+1\ (n:整数)
自然数a,\ bの最大公約数g & a=ga’,\ b=gb’\ (a’,\ b’:互いに素な自然数)
2桁の整数 & 10a+b\ (a,\ b:整数,\ 1≦ a≦9,\ 0≦ b≦9)
合成数 & ab\ (a,\ b:2以上の自然数)
正の有理数 & ab\ (a,\ b:自然数)
$nを自然数とする.\ \ n+2が3の倍数,\ n+3が5の倍数のとき,\ n+8は15の倍数で$
$あることを示せ.$ \\
15=3・5より,\ n+8が3の倍数かつ5の倍数であることを示せばよい.
つまり,\ n+8が3×(整数}),\ 5×(整数})}と表せることを示す.
n+2,\ n+3がそれぞれ3,\ 5の倍数であることを数式で表現し,\ nを消去すると容易に示せる.
万が一3・12\,のようになると3の倍数ではなくなるので,\ 括弧内が整数であることの確認}を要する.
また,\ 常にaの倍数かつbの倍数のときabの倍数となるわけではない.
例えば,\ 4の倍数かつ6の倍数だからといって,\ 4・6=24の倍数であるとは限らない. \rei\ \ 12,\ 36
aとbが互いに素(最大公約数が1)}のときに限り成り立つので,\,これを確認した上で結論づける.
なお,\ 本問では,\ n+2=3k,\ n+3=5kのように同じ文字を用いて設定してはならない.
この場合,\ n+2とn+3がそれぞれ同じ数の3倍,\ 5倍となる場合しか考慮したことにならない.