正の約数の総和が自身の2倍になるような自然数を完全数という.
$p,\ q\ ()を異なる素数として,\ 以下の問いに答えよ.$
(1)\ \ $pq$の形で表される完全数を求めよ.
(2)\ \ $p^2q$の形で表される完全数を求めよ.
(3)\ \ $p^2q^2$の形で表される完全数が存在しないことを示せ.完全数と不定方程式
完全数はそれ自体興味を引くテーマであり,\ 入試でもたびたび関連事項が出題される.
本項では単に完全数を求める問題を取り扱う.\ 入試問題として適度な難易度である.
背景にはメルセンヌ素数やいくつかの定理があり,\ その証明については次項で取り扱う.
正の約数の総和については,\ 場合の数分野で学習した公式を利用して求めるとよい.
自然数NがN=p^kq^lr^m\,と素因数分解されるとする.
正の約数の総和 (1+p+p^2+・・・+p^k)(1+q+q^2+・・・+q^l)(1+r+r^2+・・・+r^m)}
p,\ qは素数であるから,\ pqの正の約数の総和は(1+p)(1+q)となる.
これが元の数pqの2倍になればよく,\ 結局axy+bx+cy+d=0型の不定方程式}に帰着する.
無理矢理,\ (文字式)×(文字式)=(整数)の形を作るのであった.
p,\ qの範囲や大小関係を考慮すると,\ 組合せは1通りに絞られる.
完全数の定義は,\ 自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数}と言い換えられる.
pqのpq以外の正の約数は1,\ p,\ qであるから,\ 1+p+q=pqと立式することもできる.
1\,~\,5は完全数ではないから,\ 6=1+2+3は最小の完全数}である.
初手は(1)と同じだが,\ 複雑な不定方程式となるため,\ 扱いに慣れていなければ対応が難しい.
ここでは,\ 不定方程式において最も発想が自然である解答を2つ示した.
本解は,\ 立式の段階ですでに(文字式)×(文字式)=(整数)}の形になっている.
基本的には右辺が具体的な整数でなければ意味がないが,\ 素数}ならば文字でも組合せが限定される.
p,\ qは素数なので,\ 掛けて2p^2qとなる自然数の組合せは以下の12通りに限られる.
さらに,\ 1+p+p^2,\ 1+qの範囲や大小関係を考慮すると,\ ほとんどの組合せが不適であるとわかる.
結局,\ (1+p+p^2,\ 1+q)=(q,\ 2p^2),\ (2q,\ p^2),\ (pq,\ 2p)を解けば十分である.
やや高度だが,\ 互いに素(共通の素数の約数をもたない)の因数}に着目すると,\ より効率的に求まる.
1+p+p^2=1+p(p+1)は\dot{素}\dot{数}\,pで割り切れないから,\ 1+p+p^2\,とpは互いに素である.
よって,\ 1+qはp^2\,の倍数であり,\ これを文字で設定して代入すればよい.
両辺をp^2\,(≠0)で割って整理すると,\ (文字式)×(文字式)=(整数)に変形できる.
次数が低い文字について解き,\ それが整数となるための条件を追求する}方針も重要である(別解). \\
さらに,\ 分数式は(分子の次数)(分母の次数)}となるように変形するのが基本であった.
分子と分母の次数が等しいとき,\ 分母と同じ形を無理矢理分子に作る}と分子の次数下げができる. \\
qは整数なので,\ 2(p+1)}{p^2-p-1}\,も整数とならなければならない.
分数式が整数となるための必要条件は,\ (分子)=0\ または\ 分子}{分母≧1}であった.
分子}{分母≧1\,は,\ 分子}≧分母\,とも考えられる.
p^2-p-1>0,\ 2(p+1)>0より絶対値はそのままはずせ,\ 単なる2次不等式に帰着する.
28=1+2+4+7+14は2番目の完全数である.\ この後,\ 496=2^4・31,\ 8128=2^6・127と続く.
(1+p+p^2)(1+q+q^2)=2p^2q^2}$
$1+p+p^2,\ 1+q+q^2$はともに奇数}であるから,\ 右辺が偶数}であることと矛盾する.p^2q^2\,の形で表される完全数は存在しない.}$
不定方程式の解が存在しないことの証明として,\ 両辺の余りの不一致を示す}手法がよく用いられる.
本問の場合,\ 2で割ったときの余り,\ つまりは偶奇性に着目}すると容易に証明できる.
(偶数)+(偶数)=(偶数),\ (奇数)+(奇数)=(奇数)である.
pが偶数でも奇数でもp+p^2\,は偶数であり,\ それゆえ1+p+p^2\,は奇数となる.
1+p+p^2=1+p(1+p)より,「\,p(1+p)は連続2整数の積なので偶数}」とするとスマートである.