分母に分数が連なる以下のような分数を連分数という.
特に,\ 各分数の分子がすべて1の連分数を正則連分数(単純連分数)という.
正則連分数はユークリッドの互除法に対応している故,\ 受験数学でたまに登場する.
以降,\ 単に「連分数」というときも「正則連分数」のことを指すものとする.
スペースを節約するため,\ これを\ $\gauss{a_0\ ;\ a_1,\ a_2,\ a_3$\ とも表記する.
以下のように,\ 有理数の正則連分数展開はユークリッドの互除法に対応する.
2つの自然数$a,\ b$にユークリッドの互除法を適用する.
4回目で余りが0になるとすると,\ 有理数$ ab$が以下のように連分数展開できることになる.
一般に,\ 「有理数\ $⇔}$\ 正則連分数展開が有限回で終了する」が成り立つ.
$\Longleftarrow$は明らか,\ $⇒$もユークリッドの互除法からほぼ明らかである.
ユークリッドの互除法においてであるから,\ 有限回で余りが0になる.
続いて,\ 無理数を正則連分数展開することを考える.
ユークリッドの互除法は整数に対する操作であるから,\ 無理数の場合には使えない.
ここで,\ 有理数の場合の$ ab=q_0}+r_1}{b$において,\ $q_0$は整数}で,\ $0≦r_1}{b}<1}$であった.
これは,\ $ ab=(整数部分)}+(小数部分)}$と分割したことに相当する.
この観点からとらえることにより,\ 無理数も正則連分数展開することができる.
ただし,\ あくまで形式的な変形であり,\ 正確には収束することを示す必要がある(次項で証明).}
例として,\ $√5+1}{2}$\ (黄金比)の正則連分数展開}を示す.\ 最も代表的な正則連分数である.
連分数展開により,\ 一部の無理数はその中に潜む美しい規則性が露わになる.
実は,\ 「\,2次無理数\ $⇔}$\ 正則連分数展開が循環する」が成り立つ(証明は難しい).
$√5+1}{2}$は,\ $x^2-x-1=0$の解であることを利用すると楽に正則連分数展開できる.
$x=1+1x$と変形できるから,\ $x$を$1+1x$に置き換えることを繰り返すと
連分数展開することの意義の1つは,\ 無理数を有理数で近似できることにある.
無限連分数を途中で打ち切って得られる有理数$\gauss{a_0\ ;\,a_1,\ ・・・,\ a_n}$}を第$n}$次近似分数という.
こうして得られる有理数(分数)の列は,\ $√5+1}{2}≒1.618}$\ に収束するはずである.
つまり,\ 深くまで連分数展開するほど,\ より精度の高い近似分数を得ることができる.
小数部分を求めるには,\ 整数部分を求めて元の数から引けばよい}のであった.
よって,\ √5+1}{2}\,の整数部分は1,\ 小数部分は\,√5+1}{2}-1=√5-1}{2}\,である.
2次無理数は,\ 整数係数2次方程式の解となる無理数}のことである.
例えば,\ √5+1}{2}\,はx^2-x-1=0,\ √2\,はx^2-2=0の解であるから,\ 2次無理数である.
を通分して得られる分数$q_0q_1q_2+q_0+q_2}{q_1q_2+1}$の分子を$p$,\ 分母を$q$ [-1zh]
\ \ とするとき,\ $43q-30p$の値を求めよ.
(3)\ \ $43x+30y=1$の整数解をすべて求めよ.
高校数学におけるユークリッドの互除法の特に重要な役割が2つある.
最大公約数を求めることと不定方程式ax+by=1の特殊解を求める}ことであった.
ユークリッドの互除法を利用して求められるならば,\ 連分数展開を利用しても求められるはずである.
(1)\ \ 整数の割り算と逆数をとることを繰り返す.
\ \ 小学算数以来忘れ去られた仮分数\,43}{30}\,から帯分数113}{30}\,への変換とみなすとわかりやすいだろう.
(2)\ \ 一般に,\ 次が成り立つことが知られている(次項で証明).
\ \ ab=\gauss{q_0\ ;\,q_1,\ ・・・,\ q_n},\ \ pq=\gauss{q_0\ ;\,q_1,\ ・・・,\ q_{n-1\ のとき aq-bp=±\,1}
\ \ この定理は,\ ax+by=1の特殊解の求め方を示している.
\ \ つまり,\ ab\,を連分数展開し,\ 1つ前で打ち切った分数\, pq\,を求めればよい}わけである.
\ \ \gauss{q_0\ ;\,q_1,\ q_2}の分母分子がユークリッドの互除法で求めた特殊解と一致することを確認する.
\ \ a,\ bが互いに素のとき,\ ユークリッドの互除法が終わる1つ前の余りは1になるのであった. は一定値に収束する.\ その値を求めよ.
循環連分数ならば必ず同じ構造が存在するので,\ 文字で置換すると方程式を作成できる.
例えば,\ 全体をxとおくと,\ 連分数の中にそのxと同じ構造が存在するから置換する.
循環する正則連分数の正体は2次無理数であるから,\ 2次方程式を作成できる}はずなのである.
√2=\gauss{1\ ;\ 2,\ 2,\ 2,\ ・・・}\ は,\ 黄金比と並んで代表的な正則連分数である.
正数$r$に対して,\ $r$の整数部分と小数部分をそれぞれ$\gauss r,\ \{r\}$で表す.
自然数$n$に対して$x^2-nx-1=0$の正の解をαとするとき,\ 次の値を求めよ.
\ [\,関西大\,] \ √{n^2+4}\,を整数で評価}して整数部分を求める.
nが自然数のときであるとわかる.
√{n^2+4}\,とn+1の大小関係は不明だが,\ 2で割るのでこの精度で十分である.
表向きは整数部分と小数部分の問題だが,\ その背景にあるのは連分数である.