剰余類と連続整数の積による倍数の証明

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すべての整数nに対して,\ \ 2n^3-3n^2+n\ は6の倍数であることを示せ.$ \\ 剰余類と連続整数の積による倍数の証明 \\  $[1]$\ \ 剰余類で場合分け}をしてすべての場合を尽くす.} [1]}\ \ 整数は無限にあるから1個ずつ調べるわけにはいかない. \ \ 余りに関する整数問題では,\ 整数を余りで分類して考える.} \ \ 無限にある整数も,\ 余りで分類すると有限の種類しかない.} \ \ 例えば,\ すべての整数は,\ 3で割ったときの余りで分類すると0,\ 1,\ 2の3種類に分類される. \ \ 3の余りに関する問題ならば,\ 3つの場合の考察のみですべての場合が尽くされるわけである. \ \ 同じ余りになる整数の集合を剰余類}という. \ \ 実際には,\ 例のように整数を余りがわかる形に文字で設定}する. \ \ 3で割ったときの余りで整数を分類するとき,\ n=3k,\ 3k+1,\ 3k+2\ (k:整数)と設定できる. \ \ ただし,\ n=3k+2とn=3k-1が表す整数の集合は一致する. \ \ よって,\ n=3k±1のようにできるだけ対称に設定}すると計算が楽になることが多い. \ \ 余りのみに着目すればよいのであれば,\ 合同式}による表現が簡潔かつ本質的である. \ \ 合同式を利用すると,\ 多くの倍数証明問題が単なる数値代入問題と化す. [2]}\ \ 二項係数を利用した証明}が非常に簡潔である.\ 先に具体例を示す. \ \ C73は異なる7個のものから3個取り出すときの組合せの数であるから整数である. \ \ 一方,\ C73=7・6・5}{3・2・1}\ の右辺は,\ 5,\ 6,\ 7の連続3整数の積を3!\ で割った式である. \ \ 左辺\,C73\,が整数なので,\ 右辺も整数でなければならない. \ \ よって,\ 5,\ 6,\ 7の連続3整数の積は3! で割り切れるはずである.\ これを一般化すればよい. \ \ C mn=m(m-1)(m-2)・\,・・・\,・\{m-(n-1)\{n! =連続n整数の積}{n!} (m≧ n) \ \ 左辺は,\ 異なるm個のものからn個を取り出す場合の組合せの数であるから整数である. \ \ ∴\ \ 連続n整数の積\ m(m-1)(m-2)・・・\{m-(n-1)\}\ は,\ n! で割り切れる. \ \ 直感的には以下のように理解できる. \ \ 整数には,\ 周期2で2の倍数,\ 周期3で3の倍数が含まれている. \ \ よって,\ 連続3整数には2と3の倍数がそれぞれ少なくとも1つずつ含まれる. \ \ ゆえに,\ 連続3整数の積は2の倍数かつ3の倍数であり,\ 3!=6で割り切れる. 6の倍数証明だが,\ 6の剰余類はn=6k,\ 6k±1,\ 6k±2,\ 6k+3の6つもある. 6つの場合に分けて証明するのは大変だし,\ 何より応用が利かない. 2の倍数かつ3の倍数と考えると,\ n=2k,\ 2k+1とn=3k,\ 3k±1の5つの場合分けになる. しかし,\ 面倒であることには変わりない.\ 連続整数の積の性質を利用すると簡潔に証明できる. いずれにせよ,\ 因数分解できる場合はまず因数分解}してみるべきである. 代入後の計算が容易になるし,\ 連続整数の積が見つかる可能性もある. 本問の場合は連続2整数n-1,\ nの積が見つかる}から,\ 後は3の倍数の証明である. n=3k,\ 3k±1の3通りに場合分けし,\ いずれも3をくくり出せることを示せばよい. 合同式}を用いると記述が非常に簡潔になる(別解1).\ 本質的には本解と同じである. 連続整数の積の性質を最大限利用する別解を3つ示した.\ 簡潔に済むが多少の慣れを要する. 6の倍数証明なので,\ 連続3整数の積が3!=6\,の倍数であることの利用を考える.} n(n-1)という連続2整数の積がすでにある. さらにn-2やn+1を作ることにより,\ 連続3整数の積を無理矢理作り出す}のである. 別解2や別解3が示すように変形方法は1つではなく,\ また,\ 常にうまくいくとは限らない. 別解4は,\ (n-1)n(n+1)=n^3-nであることを利用するものである. n^3-nが連続3整数の積(6の倍数)と覚えている場合,\ 与式からいきなりの変形も可能である. nが整数のとき,\ n^5-nが30の倍数であることを示せ 因数分解すると連続3整数の積が見つかるから,\ 後は5の倍数であることを示せばよい. 5の剰余類で場合分けして代入すると,\ n-1,\ n,\ n+1,\ n^2+1のうちどれかは5の倍数になる. それぞれ,\ その5の倍数になる因数のみを取り出して記述すると簡潔な解答になる. 次のようにまとめて,\ さらに簡潔に記述することも可能である.  n=5k±1\ のとき n\mp1=(5k±1)\mp1=5k  n=5k±2\ のとき n^2+1=(5k±2)^2+1=5(5k^2±4k+1) 合同式を利用すると非常に簡潔に済む.\ 展開前の式n^5-nに代入する}だけでよい. 参考までに,\ 連続5整数の積を無理矢理作り出す別解も示した. ところで,\ 30の倍数であるということは当然10の倍数でもある. よって n^5-n≡0\ ±od{10}\ より n^5≡ n\ ±od{10} つまり,\ n^5\,とnを10で割ったときの余りは等しい. これにより,\ すべての整数は5乗すると元の数と一の位が同じになる}ことがわかる. $nを整数とし,\ S=(n-1)^3+n^3+(n+1)^3\ とする.$  (1)\ \ $Sが偶数ならば,\ nは偶数であることを示せ.$  (2)\ \ $Sが偶数ならば,\ Sは36で割り切れることを示せ.        [\,関西大\,]$ (1)\ \ 思考の流れとして,\ S\,(式全体)の倍数条件からnの倍数条件を考察するのは難しい. \ \ 逆に,\ nの倍数条件からSの倍数条件を考察するのは割と容易である. \ \ 展開は容易だが因数分解が難しいのと同じようなものである. \ \ 思考の流れを逆にできる対偶法や否定した結論を元に議論できる背理法が有効}である. \ \ 命題\ p\ ⇒\ q\ の真偽は,\ その対偶\ q\ ⇒\ p\ と一致する. \ \ 偶奇性を考えるだけならば,\ n=2k+1などと設定せずとも,\ この程度の記述で十分である. \ \ 背理法の場合 nが奇数であると仮定するとSも奇数となり,\ Sが偶数であることと矛盾する. (2)\ \ Sを一旦展開した後に因数分解し,\ (1)を利用する. \ \ 12がくくり出せるから,\ 残りのk(2k^2+1)が3の倍数であることを証明すればよい.