恒等式の未定係数の決定(x-aで展開)、整式の一致の定理

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n次式\ f(x)=g(x)\ がxについての恒等式${xにどんな値を代入しても\dot{恒}(つね)に\dot{等}式が成立する}(恒等式の定義}){f(x)とg(x)の次数が等しく,\ 同じ次数の項の係数も等しい$ \}{異なるn+1個のxの値に対して成立する}(整式の一致の定理})}$ \\ まず,\ (\,I\,)}の意味合いを確認する.\ 恒等式と方程式との対比}で理解するとよい. 恒等式の例 x^2-2x=x(x-2) (変形しただけなので,\ 任意のxについて成立)       \sin^2θ+\cos^2θ=1 \ \ \,(任意の\,θ\,について成立) 方程式の例 x^2-3x=0 (等号成立はx=0,\ 3のときのみ) 次に,\ (II})の意味合いを2次の整式を例に確認する.    ax^2+bx+c=a’x^2+b’x+c’\ がxについての恒等式\ ⇔\ a=a’,\ b=b’,\ c=c’} 特に ax^2+bx+c=0      \ \ \,\ がxについての恒等式\ ⇔\ a=0,\ b=0,\ c=0} 恒等式については,\ (\,I\,)\,~\,(III)が同値}であることが重要である.\ 証明を示す.}さえ示せば,\ 3つが同値であることが示される.  n次式f(x),\ g(x)に対してf(x)-g(x)=h(x)とすると,\ h(x)はn次以下の式である.  ここで,\ 相異なるn+1個のxの値を\,α_1,\ α_2,\ ・・・,\ α_n,\ α_{n+1}\ とする.  h(x)=0が相異なるn個のxの値\,α_1,\ α_2,\ ・・・,\ α_n\ に対して成立するとする.  因数定理(後に学習)により,\  h(x)=a(x-α_1)(x-α_2)・\,・・・\,・(x-α_n)\ \ (a:定数)\ と表せる.   (\,\rei\ \ h(1)=0,\ h(2)=0のとき,\ h(x)=a(x-1)(x-2)\ と表せる)  さらに\,α_{n+1}\,でも成立するとき h(α_{n+1})=a(α_{n+1}-α_1)(α_{n+1}-α_2)・\,・・・\,・(α_{n+1}-α_n)=0  ここで,\ α_{n+1}≠α_1,\ α_{n+1}≠α_2,\ ・・・,\ α_{n+1}≠α_n\ であるから a=0  よって,\ xの値によらずh(x)=0である.    ∴\ \ 恒等的に\ f(x)=g(x) $次の等式がxについての恒等式となるように定数a,\ b,\ cの値を定めよ.$   $x^3-x^2-5x+12=(x-1)^3+a(x-1)^2+b(x-1)+c$ \\ 恒等式の未定係数の決定 \\   $[1]$\ \ 係数比較法}  両辺の同じ次数の項の係数が等しいことを利用する.   $[2]$\ \ 数値代入法}  どんな値を代入しても常に成り立つことを利用する. {係数比較法\,] {\,係数比較法\,II\,(置換の利用)\,] \,数値代入法\,II\,(整式の一致の定理の利用)\,]   $両辺にx=1}\ \ \ を代入すると 7=c$   $両辺にx=0}\ \ \ を代入すると 12=a-b+c-1$   $両辺にx=-1}を代入すると 15=4a-2b+c-8$   $両辺にx=2}\ \ \ を代入すると 6=a+b+c+1$   $よって a=2,\ \ b=-\,4,\ \ c=7$   $与式の両辺は3次式で,\ 異なる4個のxに対して成り立つから,\ 与式は恒等式である.}$ I\,(数IIIの微分の利用)両辺をxで微分}すると  恒等式の未定係数の決定の基本は係数比較法}であり,\ これが最も確実な解法である(本解). 本問の場合は,\ x-1=tとしてtについての恒等式と考える}と楽になる(別解1) 恒等式の未定係数の決定のもう1つの方法として数値代入法}がある(別解2). 恒等式はどんな値を代入しても成り立つのであるから,\ 簡単な値を代入して成り立つようにする. 本問の場合,\ 簡単な値を3つ代入して3つの式を作ると未定係数3個を特定できる.} まずは与式の形に着目し,\ 右辺が簡単になるx=1を代入すべきである. その他,\ 計算が楽そうなx=0,\ -\,1を代入した. 数値代入法で最も注意すべきは,\ 十分条件の確認が必須}になることである. 特定の値を代入しただけではどんな値を代入しても成り立つとは言えず,\ 必要条件でしかない. よって,\ 求まった値を代入して計算し,\ 実際に両辺が一致するかを確かめる}ことになる. 数値代入法は一見楽に思えるが,\ 逆の確認が必須なので必ずしも係数比較法より楽なわけではない. ただし,\ 穴埋め式試験では逆の確認がいらないので,\ その分数値代入法が有利になる. 数値代入法では,\ 整式の一致の定理を利用することもできる(別解3). 3次式であるから,\ 異なる4個のxに対して成り立つように未定係数を決定すると恒等式となる.} 3文字a,\ b,\ cの値は3つの式で決定する.\ そのa,\ b,\ cの値が4式目も満たすかを確認すればよい. 本問は(x-1)^n\,の和なので,\ 「恒等式は微分しても恒等式」}を利用することも有効である(別解4). 微分によりx=1を代入して簡単になる恒等式を増やせるからである. 本問の左辺から右辺への式変形をx-aで展開する}といい,\ ある種の問題で役立つ. あらゆる整式は,\ 以下のような方法で直接的にx-aで展開できる. 本問での例を示す.\ 左辺のxに(x-1)+1を代入し,\ (x-1)のまま展開する.} x^3-x^2-5x+12  =\{(x-1)+1\}^3-\{(x-1)+1\}^2-5\{(x-1)+1\}+12  =(x-1)^3+3(x-1)^2+3(x-1)+1-(x-1)^2-2(x-1)-1-5(x-1)-5+12  =(x-1)^3+2(x-1)^2-4(x-1)+7 x,\ y,\ zが\ x+y-2z=-\,1\ と\ 2x+y-3z=2\ を満たす.$ $ax^2+by^2+cz^2=7\ が常に成り立つとき,\ a,\ b,\ cの値を求めよ.$ \\ 一般に,\ 等式1つにつき文字を1つ消去できる.} 問題を読んだ時点で実質1変数の恒等式の問題}であることに気付きたい. どの文字を残してどの文字を消去するか}という明確な意図をもって変形する. 2つの条件式から最も消去しやすいyを消去するために差をとると x-z=3 この時点で,\ xを残すかzを残すかの2択となる.\ ここでは,\ zを残すことにした. x=z+3\ とし,\ x+y-2z=-\,1\ に代入すると y=z-4 zのみの式にするため,\ x=(zの式),\ \ y=(zの式)にすることを目的として変形}したわけである. これをax^2+by^2+cz^2=7に代入し,\ zについての恒等式となるようa,\ b,\ cの値を求めればよい.