次の不等式が成り立つことを示せ.$
(1)\ \ $ab+1>a+b$ \ (2)\ \ $abc+2>a+b+c$ \ (3)\ \ $abcd+3>a+b+c+d$ \\
不等式の証明とその拡張不等式$A>B}$の証明は,\ $A-B>0\ を示す$のが基本である.
等式の証明は,\ $A-B$を計算していけば半ば自動的に$=0$になるので容易である.
一方,\ \ 不等式の証明では$>0}$を示すのに一工夫必要になるため,\ 等式より難易度が上がる.{(ab+1)-(a+b)}=ab-a-b+1=(a-1)(b-1)$
$ここで a<1,\ \ b<1\ より a-1<0,\ \ b-1<0}$
$ゆえに (a-1)(b-1)>0}$
ab+1>a+bを示すのが目的なので,\ いきなりab+1-a-b>0と記述してはならない.
(左辺)-(右辺)=ab+1-a-bを変形していき,\ >0であることを示す}必要がある.
本問の場合は因数分解}し,\ さらに与えられた条件を用いる}と>0を示すことができる.
a}<1\ ⇔\ -10である.
(2)の不等式は(1)の不等式と同じような形をしているので,\ (1)を元に拡張することを考える.
ab+1からabc+2を作り出すため,\ ab+1のaをab,\ bをcに置換する}と ab・ c+1>ab+c
両辺に1を加えると abc+2>ab+c+1
どうしても紛らわしいと思うならば,\ abc=Acなどと一旦置き換えて考えればよい.
Ac+1>A+c\ より\ abc+1>ab+c,\ これの両辺に1を足して\ abc+2>ab+c+1\ である.
さらに,\ 右辺のab+1の部分に再び(1)の不等式を適用}すると目的の不等式が導かれる.
このように,\ 不等式を拡張するとき,\ 2段階で元の不等式を利用する}ことが多い.
さて,\ 既存の不等式を利用するとき,\ その前提条件を満たすか否かの確認を要する.
ab+1>a+bは,\ a<1,\ b<1\ のとき}に成り立つ不等式である.
よって,\ a\ →\ ab,\ b\ →\ c\ として(1)の不等式を利用するには,\ ab}<1,\ {c}<1\ が前提}となる.
a<1,\ b<1の辺々を掛けるとab}<1となることから,\ (1)の不等式を利用できる.
(3)は,\ (2)の不等式を利用してもよいが,\ ここでは(1)の不等式を利用した.
(1)の不等式において\,a\ →\ ab,\ b\ →\ cd}とすると,\ abcd+1>ab+cdとなる.
さらに,\ ab+cd+2にab+1>a+b,\ cd+1>c+dを適用すると目的の不等式が導かれる.
(1)の誘導なしで(2)や(3)の不等式を証明できることが理想的である.
(2)や(3)をみて,\ もしかするとab+1>a+bが成り立つのではないかと思えるかが重要である.
文字が多い不等式の証明では,\ 先に文字が少ない不等式の証明を考える}とよいわけである.
(分数の和・差)≧0を示すには,\ まず通分する必要がある.
さらに分子を整理すると因数分解でき,\ ≧0であることが示される.
x,\ yの対称式}なので,\ x+y=A,\ xy=Bとして整理すると見通しがよくなる.
実は別解が簡潔なので習得しておきたい.
y≧0より1+x≦1+x+y}であるから,\ x}{1+x}≧x}{1+x+y}\ である.
分子が等しい分数は,\ 分母が大きい方が全体として小さくなることを利用するわけである.
本問は拡張が容易である.\ まず,\ z}{1+z}\,を(1)の両辺に加える.
さらに,\ (1)の不等式においてx\ →\ x+y,\ y\ →\ z}とすればよい.
(1)の不等式の前提条件はx≧0なので,\ x+y≧0を確認した上で適用する.
(1)の別解と同様に以下の3式の辺々を足してもよい.