2次の不等式 a²+b²+c²≧ab+bc+ca の証明とその拡張

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次の不等式を証明せよ.\ また,\ 等号成立条件を示せ.$ \\[.8zh] \hspace{.5zw} (1)\ \ $a^2+b^2+c^2\geqq ab+bc+ca$     (2)\ \ $a^4+b^4+c^4\geqq abc(a+b+c) 本解は,\ \bm{1つの文字の式とみて平方完成する最終手段}である. \\[.2zh] まず,\ aの式とみてaで整理し,\ 平方完成した. \\[.2zh] さらに,\ 残りのbとcのみの部分をbの式とみて平方完成すると,\ \geqq0が示される. \\[.2zh] 等号成立条件を求めるときは,\ \bm{A^2+B^2=0\ \Longleftrightarrow\ A=B=0}\ を利用する. \\[1zh] 実は,\ \bm{対称性を維持したまま平方完成する別解1が正攻法}である. \\[.2zh] 高校数学においてこの変形をする機会は思いの外多いので,\ 必ず習得しておいてほしい. \\[.2zh] \bunsuu12\,をくくりだして括弧内を2倍にし,\ 2a^2=a^2+a^2\,と考えて対称的に分配した後に平方完成する. \\[.6zh] このように,\ 対称性のある不等式は,\ 対称性を最大限生かして証明すると簡潔に済む. \\[.2zh] 無論,\ 多くの場合,\ その方法に気付くにはそれなりの演習量が必要である. \\[1zh] 別解2は,\ \bm{より簡単な2変数の不等式を証明し,\ 3変数に拡張する方法}である. \\[.2zh] 拡張の仕方はいろいろ考えられるが,\ 本問の場合は文字を循環させた3式の辺々を足せばよい. \\[.2zh] もっとも,\ 結局は(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\geqq0としただけで,\ 本質的に別解1と同じである. \\[.2zh] これも対称性を生かす証明方法の1つとして習得しておいてほしい. \\[1zh] (2)は(1)の拡張である.\ 前提条件はないので,\ \\[.2zh] まず,\ \bm{(1)のa,\ b,\ cをそれぞれ\,a^2,\ b^2,\ c^2\,に置換する.} \\[.2zh] このときの等号成立条件は,\ a^2=b^2=c^2\,である. \\[.2zh] さらに,\ \bm{(1)のa,\ b,\ cをそれぞれ\,ab,\ bc,\ ca\,に置換する.} \\[.2zh] このときの等号成立条件は,\ ab=bc=caである. \\[.2zh] (1)を2段階で適用したので,\ \bm{両方の等号成立条件が同時に成立する必要がある.} \\[.2zh] つまり,\ a^2=b^2=c^2\,かつ\,ab=bc=ca\ が(2)の不等式の等号成立条件である. \\[.5zh] [1]\ \ a,\ b,\ cの少なくとも1つが0のとき,\ a^2=b^2=c^2\,よりa=b=c=0である. \\[.5zh] [2]\ \ a,\ b,\ cがすべて0でないとき,\ ab=bcよりa=cである. (b\neqq0よりbで両辺を割れる) \\[.2zh] \phantom{[1]}\ \ 同様にしてbc=caよりb=aであるから,\ a=b=cである.\ これはa^2=b^2=c^2\,も満たす. \\[.5zh] [1],\ [2]\,より,\ 結局\ \bm{「\,a^2=b^2=c^2\ かつ\ ab=bc=ca\ \Longleftrightarrow\ a=b=c\,」}である. a+b+c=1$のとき,\ \ $a^2+b^2+c^2\geqq\bunsuu13$が成り立つことを示せ. a^2+b^2+c^2-\bunsuu13}=\bunsuu13(2a^2+2b^2+2c^2-2ab-2bc-2ca)$a^2+b^2+c^2-\bunsuu13}=\bunsuu13\{(a^2-2ab+b^2)+(b^2-2bc+c^2)+(c^2-2ca+a^2)\}${a^2+b^2+c^2-\bunsuu13}=\textcolor{red}{\bunsuu13\{(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\}\geqq0}$ 等式条件つきの不等式の証明では,\ \bm{1文字消去}が基本である. \\[.2zh] その後はaの式とみて平方完成,\ さらに残りのbの部分を平方完成すればよい. \\[.2zh] a+\bunsuu{b-1}{2}=0\ かつ\ b-\bunsuu13=0\ かつ\ a+b+c=1,\ つまりa=b=c=\bunsuu13\,のとき等号が成立する. \\\\ 別解は,\ a^2+b^2+c^2\geqq\bunsuu13\,の代わりに\bm{a^2+b^2+c^2\geqq\bunsuu13(a+b+c)^2\ \cdots\,\maru1\ を示す}ものである. \\[.8zh] 展開して整理すると,\ a^2+b^2+c^2\geqq ab+bc+ca\ の証明に帰着する. \\[.2zh] a-b=0\ かつ\ b-c=0\ かつ\ c-a=0\ かつ\ a+b+c=1,\,つまりa=b=c=\bunsuu13\,のとき等号成立. \\\\ 不等式\maru1を示すという発想の根底には\bm{同次化(斉次化)}という考え方がある. \\[.2zh] a^2+b^2+c^2\geqq\bunsuu13\ は,\ 左辺は2次式,\ 右辺は定数なので0次式である. \\[.6zh] \bm{1次式a+b+cを2乗して2次式にして右辺に掛けることにより,\ 全ての項が2次になる.} \\[.2zh] a+b+c=1なので,\ 式自体を変えずに全ての項の次数が同じ式(同次式)を作成できたわけである. \\[1zh] 一般に,\ \bm{等式や不等式の両辺を同次式にすると,\ 比の置換により1文字消去することが可能になる.} \\[.5zh]  \maru1の両辺をa^2\,(\neqq0)\,で割ると 1+\left(\bunsuu ba\right)^2+\left(\bunsuu ca\right)^2\geqq\bunsuu13\hspace{-.2zw}\left(1+\bunsuu ba+\bunsuu ca\right)^2 \\[1zh]  \bunsuu ba=k,\ \bunsuu ca=l\,とおくと   \ 1+k^2+l^2\geqq\bunsuu13(1+k+l)^2 \\[1.5zh] このように,\ 同次化\ →\ 比の置換という1文字消去の手段がある. \\[.2zh] 本問は比の置換まではしなくとも,\ \bm{同次化により対称性を保ったまま処理する}ことができる.