
割り算について成り立つ等式(除法の原理)
2つの整式$A,\ B$に対して,\ 次の等式を満たす整式$Q,\ R$がただ1通り}に定まる.
A=BQ+R (Bの次数)>(Rの次数)$
整式$Q$を$A$を$B$で割ったときの商,\ $R$を余りという.
特に,\ $R=0$のとき,\ $AはBで割り切れる$という.
実際に整式$A,\ B$から$Q,\ R$を求めるには,\ 整数の割り算と同様に筆算するのが基本となる. \
計算・思考手順
①\ \ $A=2x^3-7x^2-5,\ B=x^2-2x+3$と降べきの順に整理してから存在しない次数の項は開けて書く.\ あるいは$0x^n}$のように書く.
②\ \ $B$の最高次の項$2x^3$を消去するためには,\ $A$に$2x$を掛ければよい.
\ \ $B$の左上に$2x}$と書き,\ $A×2x=2x^3-4x^2+6x}$を$B$の下に\{次数をそろえて書く.
\ \ $B-(2x^3-4x^2+6x)$を計算すると,\ $-\,3x^2-6x-5}$となる.
\ \うっかり足し算してしまうミスが非常に多いので注意!!!
③\ \ $-\,3x^2-6x-5$の最高次の項$-\,3x^2$を消去するためには,\ $A$に$-\,3$を掛ければよい.
\ \ $A×(-\,3)=-\,3x^2+6x-9}$を書き,\ 引き算すると$-\,12x+4}$となる.
\ $B=x^2-2x+3}$よりも次数が低くなったので,\ $R=-\,12x+4$である.
等式の形で表すと $2x^3-7x^2-5=(x^2-2x+3)(2x-3)-12x+4}$
$商\ 2x-3, 余り\ -12x+4}$
整式の割り算の筆算は,\ 慣れてきたら以下のような係数のみの表記法で計算すると速い
(Aの次数)≧(Bの次数)のとき,\ 整式Q,\ Rが存在することは筆算の過程から明らかであろう.
(Aの次数)<(Bの次数)のとき,\ Q=0,\ R=Aとなる. \rei\ \ 2x=(x^2+1)・0+2x
整数の割り算において,\ 2÷3=0あまり2,\ つまり2=3・0+2と同様である.
さらに,\ 整式Q,\ Rがただ1つであることを証明しておく.
ただ1つであることの証明には背理法が有効であることが多い.\ 2つあると仮定して矛盾を導く.}
A=BQ_1+R_1,\ A=BQ_2+R_2\,と2通りに表されるとする.
両辺を引くと 0=B(Q_1-Q_2)+R_1-R_2 よって\ \ B(Q_1-Q_2)=R_2-R_1\ \ ・・・・・・\,①
Q_1≠ Q_2\,と仮定すると,\ 左辺の次数はBの次数以上である.
一方,\ (Bの次数)>(Rの次数)より,\ 右辺の次数はBよりも低くなるので,\ これは矛盾である.
よって\ \ Q_1=Q_2 このとき,\ ①よりR_2-R_1=0であるから R_1=R_2
$x$についての整式とみて$A$を$B$で割ったときの商と余りを求めよ.
\ \ (1)\ \ $A=2x^2-4x+3,\ B=2x-1$ (2)\ \ $A=x^3+y^2-2xy,\ B=x^2+xy+1$ \\
(2)\ \ 複数の文字を含む場合,\ どの文字についての式とみなすかで結果が異なることがある.
\ \ xについて降べきの順に整理して計算する.\ yは定数扱いである.
次の条件を満たす整式$A,\ B$を求めよ.
(1)\ \ $Aを2x^2-3x+1で割ると,\ 商が3x-1,\ 余りが5x+2となる.$
(2)\ \ $x^3-4x^2+6x+2をBで割ると,\ 商がx-1,\ 余りが2x+3となる.$ \\
整式の割り算の問題では,\ 割り算について成り立つ等式A=BQ+Rを作成する}のが基本となる.
(2)\ \ 等式を作成すると,\ 2x+3を移項した後,\ x-1で割ればBが求められるとわかる.
\ \ A=BQ+Rより,\ B=(A-R)÷ Qというわけである.
\ \ A-RをQで割ると必ず割り切れ,\ その商がB}である.