様々な高次方程式の解法(因数定理の利用)

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有理数解が (定数項の約数)/(最高次の項の係数の約数) に限られることの証明は整数分野の重要パターン問題である(やや難)。

次の方程式を解け.  (1)\ \ $2x^3-x^2-10x+8=0$       (2)\ \ $9x^3-18x^2+8x-5=0${高次方程式}$ \\  3次以上の方程式は,\{因数分解して2次以下の方程式に帰着させると解ける.  よって,\ 実質的には因数分解の問題である.  3次以上の式の因数分解のいくつかのパターンについては,\ 数Iで既に学習済みである.  本項では,\ 新たに因数定理を利用する因数分解を学習する.  この解法は,\ 既に学習済みの方法が通用しない場合に必要になる.因数定理  $整式P(x)が(ax-b)を因数にもつ}  因数定理により,\ P(x)=0\ となるxの値を何とかして見つけると因数分解できる.$  (1)\ \ $P(x)=2x^3-x^2-10x+8$とおくと,\ $P(2)=0}$より,\ $P(x)$は$x-2$を因数にもつ. \ とにかくP(x)=0となるものを探す必要がある.\ とりあえず簡単な整数から順に代入してみる.} x=1,\ -\,1,\ 2と順に代入してみると,\ P(2)=0であることがわかる. もしP(2)の計算を間違えると,\ =0に気付けずに-2,\ 3,\ -\,3と代入し続ける羽目になる. 早く見つけようとして気が焦るのか,\ この部分の計算ミスが驚くほど多い}ので要注意である. x-2を因数にもつことがわかれば,\ 後は残りの因数の求めればよい.\ 方法は主に3つある. 最も単純なのは,\ 普通に筆算でP(x)÷(x-2)をすることであるが,\ 面倒なので非推奨である. 1次式で割ったときの商を求めるのであるから,\ 組立除法の出番}である. 余りは必ず0になる}ことにも注意して計算すると,\ ミスをする可能性も限りなく低い. 中級者以上には以下の方法を強く推奨する.\ P(x)が3次式の場合には特に有効である. P(x)が3次式で1次式x-2で割るから,\ 次のように因数分解できるはずである.  2x^3-x^2-10x+8=(x-2)(ax^2+bx+c)} 割られる式P(x)も割る式x-2も整数係数であるから,\ a,\ b,\ cは整数である. この等式が成立するようにa,\ b,\ cを定めればよい.\ このとき,\ 展開して係数比較をする必要はない. まず,\ 左辺のx^3\,の係数2と定数項8に着目}する. 右辺のx^3\,の項はx・ ax^2=ax^3,\ 右辺の定数項は-2cである. 両辺が一致しなければならないから,\ a=2,\ c=-\,4が決定する. つまり,\ (x-2)(2x^2+bx-4)\ となる. 後は,\ 両辺のx^2\,またはxの項を比較することでbを決定}すればよい. 右辺のx^2\,の項は-2・2x^2+x・ bx=-\,4x^2+bx^2\,で,\ これが左辺の-x^2と一致しなければならない. よって -4+b=-\,1\ より b=3   ∴ (x-2)(2x^2+3x-4) 手順を丁寧に説明すると面倒そうに感じるが,\ 一旦慣れてしまえば10秒ほどで因数分解できる. 因数分解さえできれば,\ 後は2x^2+3x-4=0を解くだけである. 本問は単に因数定理を知っているだけでは解くことを許されない. x=53\,を代入するとP(x)=0になることに気付けないからである. 実は,\ 代入すべきxの値には目安がある.}\ 知らないと,\ (1)はたまたま解けても(2)では行き詰まる. 目安と理由については以下で説明する. 因数分解の問題では,\ 普通x(9x^2-3x+3)=(3x-5)(3x^2-x+1)と変形しておく. 本問では,\ 単に9x^2-3x+3=0,\ つまり3x^2-x+1=0として解を求めればよいだけである. なお,\ 因数分解する場合,\ 特に断りがなければ有理数係数の範囲で行うのであった. 方程式の解を求める場合,\ 特に断りが無い限り複素数の範囲で答える}(虚数解も求める).代入すべき$x}$の値の目安について解説する.   方程式$P(x)=0$が$   展開後の式の$x^3\,の係数と定数項にそれぞれaとbの名残があることがわかる.$   つまり,\ 方程式の最高次の項の係数と定数項に着目すると,\ $aとb}$がわかる.   $aがc倍されて,\ x^3\,の係数acになる.\ また,\ -\,bがe倍されて定数項-beになる.$   逆に考えると,\ $x^3\,の係数の約数の中にaがあるはずである.$   同様に,\ 定数項の約数の中に$bがあるはずである.$   以上を考慮すると,\ $代入すべきxの値が次に限られる$ことがわかる.{定数項の約数{最高次の項の係数の約数$\   (1)の場合 $x=±8の約数{2の約数}   (2)の場合 $x=±5の約数{9の約数  $P(x)=0$となる有理数$x$が存在するならば,\ その値はこれらに限られるのである.  よって,\ これら以外の値を代入するのは時間の無駄である.  この中に$P(x)=0$となる$x$がない場合,\ $P(x)$は有理数係数の範囲では因数分解できない.  つまり,\ 有理数解は存在しない.  様々な高次方程式の問題を演習する.\ いずれも既に学習した知識で解くことができる. (1)\ \ 一見してx=3が解であるとわかるが,\ それだけで終えてはならない. \ \ 一般に,\ n次方程式はn個の複素数解をもつ}(n重解はn個と数える). \ \ 3次方程式なので,\ 3個あるはずの複素数解をすべて求めなければならない. \ \ x^3-27=0とすると,\ 公式x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)}を適用できる. \ \ このように,\ 因数分解公式が利用できる場合には,\ わざわざ因数定理を利用する必要はない. \ \ なお,\ D=y^2-4y^2=-\,3y^2<0より,\ xの2次方程式x^2+yx+y^2=0は必ず虚数解になる. (2)\ \ 展開公式(x-y)^3=x^3-3x^2y+3xy^2-3y^3}\,の逆に気付けば速い. \ \ 共通因数ができるように組み合わせる}方法でも因数分解できるし,\ 最悪因数定理を利用できる. \ \ $x^3-8-6x^2+12x=(x-2)(x^2+2x+4)-6x(x-2)=(x-2)(x^2-4x+4)=(x-2)(x-2)^2$ (3)\ \ 複2次式}(2乗の2次式)は,\ x^2=X}とみて因数分解するのであった.\ \,X^2-X-6=0となる. \ \ 結局,\ x^2=3,\ -\,2を解けばよい. (4)\ \ 置換しても因数分解できない場合,\ 無理矢理(x^2±○)^2-(□x)^2}\,の形を作るのであった. \ \ 4乗の項x^4\,と定数項1に着目し,\ これが出てくるような2乗の形を考えると (x^2±1)^2 \ \ -\,x^2\,となるようにつじつまを合わせると (x^2+1)^2-3x^2\ または\ (x^2-1)^2+x^2 \ \ (x^2+1)^2-3x^2=(x^2+1+√3x)(x^2+1-√3x) (5)\ \ 2段階で因数定理を利用する}ことにより,\ 2次方程式に帰着する. \ \ 2段階ともx=±1,\ 2,\ 4,\ 8}{1}=±\,1,\ ±\,2,\ ±\,4,\ ±\,8\ が代入候補である. (6)\ \ 問題を一見してx=2を解にもつ}ことに気付きたい(x=2のとき明らかに両辺一致). \ \ 因数定理を利用するとき,\ 代入して=0になるものを探す手間が省ける. (7)\ \ 無闇に展開してしまうと,\ 因数定理をもってしても因数分解できなくなる. \ \ 共通部分ができるように,\ (x-1)(x-4),\ (x-2)(x-3)の組み合わせで展開する.} \ \ x^2-5x=Xと考えて整理・因数分解すればよい.  (X+4)(X+6)=15