
以下の2つの方法で4次方程式$x^4-2x^2-8x-3=0$の解を求めよ. \\[1zh] \hspace{.5zw}(1)\ \ $x^4-2x^2-8x-3=(x^2+a)^2-(bx+c)^2$を満たす$a,\ b,\ c$の値を1組探す. \\[.8zh] \hspace{.5zw}(2)\ \ $x^4-2x^2-8x-3=(x^2+ax+b)(x^2+cx+d)$を満たす整数$a,\ b,\ c,\ d$の値を \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 1組探す. \\ m{4次方程式の代数的解法}$}}}} \\\\[.5zh] 4次方程式については,\ すでに以下の4つの特殊なパターンのものを学習した. \\[1zh] \begin{tabular}{ll} [1]\ \ 因数分解が容易 & \rei\ \ $x^4-1=(x^2-1)(x^2+1)=0$ \\[.5zh] [2]\ \ 因数定理の利用 & \rei\ \ $x^4-8x^2+9x-2=(x-1)(x-2)(x^2+3x-1)=0$\\[.5zh] [3]\ \ 複2次式 & \rei\ \ $x^4+x^2+1=(x^2+1)^2-x^2=(x^2+1+x)(x^2+1-x)=0$ \\[.5zh] [4]\ \ 相反方程式 & \rei\ \ $x^4-4x^3+2x^2-4x+1=0$ (係数が左右対称) \end{tabular} \\\\[1zh] 以上の4次方程式は,\ 試験で誘導なしで出題される可能性がある. \\[1zh] 本項では,\ あらゆる4次方程式に対応できる一般的な解法を2つ紹介する. \\[.2zh] 試験では誘導がつくが,\ 一度経験しておくと見通しが良くなる. \\[.2zh] (1)が\textbf{\textcolor{blue}{フェラーリの解法}},\ \ (2)が\textbf{\textcolor{blue}{デカルトの解法}}である. \\[.2zh] どちらも,\ \textbf{\textcolor{magenta}{いかに因数分解して2次方程式に帰着させるか}}に主眼をおいている. \\\\\\ ここで,\ 突然だが,\ $x^4+4x^3+4x^2-8x-12=0\ \cdots\cdots\,\maru1$の解を求めるとしよう. \\[.2zh] 一般に, \textbf{\textcolor{red}{4次式$\bm{x^4+ax^3+bx^2+cx+d}$は,\ 変換$\bm{x=X-\bunsuu a4}$により,\ 3次式にできる.}} \\[1zh] \maru1に$x=X-1$を代入すると \\[.5zh] $(X-1)^4+4(X-1)^3+4(X-1)^2-8X-12=X^4-2X^2-8X-3$ \\[.5zh] よって,\ $X^4-2X^2-8X-3=0$の解から1引いたものが\maru1の解である. \\[1zh] 結局,\ $\bm{\textcolor{red}{x^4+px^2+qx+r=0}}\ (q\neqq0)$を解くと,\ 4次方程式を一般的に解いたことになる. \\\\[.5zh] \centerline{{\small $\left[\textcolor{brown}{\begin{array}{l} 変換x=X-\bunsuu a4\,は,\ 2次式における平方完成や3次式における立方完成の4次式版である. \\[1zh] x^2+ax+b= x^3+ax^2+bx+c= x^4+ax^3+bx^2+cx+dも同様に変形すると,\ x+\bunsuu a4=X\ と変換することになる. \\[.8zh] 実際には,\ 変形してからx+\bunsuu a4=Xとおくのではなく,\ x=X-\bunsuu a4\,を代入してしまえばよい. \\\\ q\neqq0としているのは,\ q=0のときは複2次式として扱えば済むからである. (1)\ \ 右辺を展開すると $x^4-2x^2-8x-3=x^4+(2a-b)x^2-2bcx+(a^2-c^2)$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ 両辺の係数を比較すると \bm{(2次式)^2-(1次式)^2}\,になるように変形すると,\ A^2-B^2=(A+B)(A-B)で因数分解できる. \\[.2zh] 実質的には,\ \bm{恒等式の係数決定の問題}である. \\[.2zh] 2次の項や積を含むやや複雑な3文字の連立方程式になるので,\ 少しの工夫が必要である. \\[.2zh] bc=4を2乗した式にb^2=2(a+1)とc^2=a^2+3を代入すると,\ aの3次方程式に帰着する. \\[.2zh] このように,\ フェラーリの解法では,\ 一般には\bm{係数決定の際に3次方程式を解く必要が生じる.} \\[.2zh] 試験では,\ この3次方程式を簡単に解けるような4次方程式が出題される. \\[.2zh] 本問の場合は因数定理を用いて因数分解でき,\ 解の1つがa=1であるとわかる. \\[.2zh] a=1のときb^2=4,\ c^2=4より,\ 1組(1,\ 2,\ 2)が求まる. \\[.2zh] \bm{(a,\ b,\ c)は1組求めれば十分}なので,\ 他の解を求める必要はない. \\[.2zh] 一般に,\ \bm{整式の因数分解は一意的}だからである. \\[.2zh] 例えば,\ x^2-1は(x+1)(x-1)以外の因数分解の仕方はありえない. \\[.2zh] (2x+2)\hspace{-.2zw}\left(\bunsuu12x-\bunsuu12\right)\hspace{-.2zw}等も可能と思ったかもしれないが,\ 整式では定数倍の違いは同じものとみなす. \\[.8zh] (a,\ b,\ c)=(1,\ 2,\ 2)のとき(x^2+2x+3)(x^2-2x-1)となるから,\ これ以外を考える意味はない. \\[1zh] このように,\ フェラーリの解法は,\ 途中の3次方程式さえ解ければ後は単純である. \\[.2zh] 実際,\ 3次方程式の一般的解法の発見と同時期(16世紀)に4次方程式の一般的解法が発見された. \\[.2zh] 当然次は5次方程式となるわけだが,\ 一般的解法が見つからないまま年月が過ぎていった. \\[.2zh] 19世紀になり,\ アーベルとガロアにより\bm{5次以上の方程式は代数的に解けない}ことが証明された. \\[.2zh] 数千年続いたn次方程式を代数的に解くという数学者達の戦いが終わったのである. (2)\ \ $x^4-2x^2-8x-3=x^4+(a+c)x^3+(ac+b+d)x^2+(ad+bc)x+bd$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ 両辺の係数を比較すると $\textcolor{forestgreen}{a+c=0,\ \ ac+b+d=-\,2,\ \ ad+bc=-\,8,\ \ bd=-\,3}$ \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ 対称性より,\ $b\geqq d$としても一般性を失わないから $\textcolor{cyan}{(b,\ d)=(3,\ -\,1),\ (1,\ -\,3)}$ \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ $(b,\ d)=(3,\ -\,1)$のとき $a+c=0\ かつ\ -a+3c=-\,8$より $(a,\ c)=(2,\ -\,2)$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{$(b,\ d)=(3,\ -\,1)$のとき} これは$ac+b+d=-\,2$を満たす. \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ $(b,\ d)=(1,\ -\,3)$のとき $a+c=0\ かつ\ -3a+c=-\,8$より $(a,\ c)=(2,\ -\,2)$ \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ \phantom{$(b,\ d)=(3,\ -\,1)$のとき} これは$ac+b+d=-\,2$を満たさない. \ \bm{2次式の積の形になるように係数決定する}という非常にわかりやすい方針である. \\[.2zh] ただし,\ 4文字の連立方程式となるので,\ 普通に解くのは面倒である. \\[.2zh] そこで,\ \bm{a,\ b,\ c,\ dが整数であると仮定する.} \\[.2zh] もちろん,\ 一般の4次方程式ではa,\ b,\ c,\ dが常に整数になる保証はない. \\[.2zh] しかし,\ 1組見つけさえすればよいのであるから,\ とりあえず整数として求めてみるわけである. \\[.2zh] \bm{整数問題}となるから,\ bd=-\,3と対称性より,\ (b,\ d)は2組に限られる. \\[.2zh] 後は,\ a+c=0とad+bc=-\,8を連立して(a,\ c)を求め,\ 残りの式を満たすかを確認すればよい.