オイラーとヴィエトの余弦の無限積の公式 Πcos(x/2n)=sinx/x

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ビエタ 円周率 近似 大学入試では,\ オイラーが発見した次の公式を背景にもつ問題が散見される.  証明自体が問われるので,\ 以下をできるようにしておく必要がある. 有理化して整理すると  総乗記号\prod\ (大文字のパイ)は,\ 総和記号Σ}の積バージョンである.  \displaystyle\prod_{k=1³a_k=a₁a₂a₃ 無限級数の和を求めるとき,\ 第n部分和S_nを求めてからlim[n→∞]S_nを求めた. 同様に,\ 第n部分積を求めてからそれを極限にとばすことにより,\ 無限積の極限値が求められる. 部分積の導出は一見難しく思えるが,\ 実は{2倍角の公式をただ繰り返し適用するだけ}である. sin xに2倍角の公式\ sin2x=2sin xcos xを繰り返し適用し,\ どんどん分割していく. まず,\ sin x=2cos x2sin x2,\ さらに\ sin x2=2cos x4sin x4\ とするといった具合である. これをn回繰り返すと,\ 2がn個出てきて2^nとなり,\ 角度の分母は2^nとなる. そして,\ 2^nsin{x}{2^n}で割るとcosの積がsinのみで表されるから,\ これを極限にとばす. このとき,\ n→∞とするのであるから,\ {xは定数扱い}であることに注意してほしい. 公式\ lim○→0}{○}{sin○}=1\ を利用するため,\ 分子に無理矢理{x}{2^n}を作り,\ つじつまを合わせる. {n→∞のとき\ lim[n→∞]{x}{2^n}=0}なので公式\ lim○→0}{○}{sin○}=1\ が適用できることに注意してほしい. 言われてみると単純だが,\ 初見では厳しいだろう.\ それゆえ,\ 経験の有無で大きな差が生まれる. オイラーの公式にx={π}{2}を代入してみると,\ ヴィエトの公式が得られる. cos{π}{2^{n+1の値が必要になるので,\ 半角の公式\ cos²{θ}{2}={1+cosθ}{2}\ から漸化式を作成する. θ={π}{2^n}とし,\ b_n=cos{θ}{2}\ (>0)とおくと,\ 漸化式\ b_n=1+b_{n-1{2\ が得られる. b₁=cos{π}{4},\ b₂=cos{π}{8},\ b₃=cos{π}{16}であるから,\ \displaystyle\prod_{n=1}^{∞}cos{π}{2^{n+1=b₁b₂b₃\ と表せる. ただし,\ この漸化式を用いると\ b₂=1+b₁}{2,b₃=1+1+b₁}{2}{2,となり,\ 鬱陶しい. [1.3zh] そこで,\ あらかじめ分母を払った形の漸化式\ β_n={2+β_{n-1\ に変換する. すると,\ β₂={2+β₁}={2+2},β₃={2+β₂}={2+{2+2,\ と表せるようになる. 数学の歴史上初めて円周率を無限積で表したヴィエト(1540~1603)の公式が得られるわけである. それから100年以上を経て,\ オイラー(1707~1783)によって一般化した公式が与えられた.  [東京医科歯科大・改] 初見で出くわすと難問だが,\ 先に示した背景知識を持っていると簡単である. 表現が違うだけで,\ 問われている内容はまさにそのものである. cosの積に一旦sinを掛けて,\ 2倍角の公式を逆に用いていく解法も一般的である. 漸化式で表現されているが,\ 要はa_n=\displaystyle\prod_{k=1}^{n}cos{x}{2^k}\ であり,\ 証明は最初に示した通りである. 具体的に示すと a₂=a₁cos x4=cos x2cos x4,a₃=a₂cos x8=cos x2cos x4cos x8 背景知識を持っていない場合,\ b_nの漸化式を見て自力で半角の公式を連想する必要が生じる. そして,\ b_n=cos{π}{2^{n+1\ であることに気付かなければならず,\ かなり難しい. }半径1の円に内接する正$2^n$角形($n2$)の面積を$S_n$とする. .  [金沢大・改] \ 本問から,\ オイラーの100年以上も前に,\ いかにしてヴィエトが公式を導出したのかがわかる. 正2^n角形を作る2^n個の三角形の中心角は\ {2π}{2^n}={π}{2^{n-1\ である. 後は,\ 三角形の面積公式\ S=12absinθ\ を用いればよい.\ 2^n倍を忘れないように. 2倍角の公式を利用すると約分できて簡潔になるが,\ なかなか気付きにくい. 具体例を示すと,\ {sin{π}{4{sin{π}{8={2sin{π}{8}cos{π}{8{sin{π}{8=2cos{π}{8}\ である. 間違っても,\ sinの中身だけを約分して {sin{π}{4{sin{π}{8=sin2などとしないように注意してほしい. 公式\ lim○→0}{sin○}{○}\ を利用するため,\ 分母に無理矢理{π}{2^{n-1を作った後つじつまを合わせる. n→∞のとき正2^n角形は正∞角形であり,\ これは円のことと考えられる. そう考えると,\ lim[n→∞]S_nが半径1の円の面積πになるのは当然と思えるはずである. もう一方の極限は,\ cos{π}{2^n}を逆に{S_n}{S_{n+1で表していく. すると中央部分が約分されて消え,\ lim[n→∞]S_{n+1}\ に帰着する.lim[n→∞]S_{n+1}=lim[n→∞]S_n=π\ である. 元々,\ S_{n+1}={1}{cos{π}{2^nS_nより,\ S_nは{階比数列型漸化式a_{n+1}=f(n)a_n}である. 階比数列型漸化式は,\ {a_{n+1{a_n}=f(n)\ として繰り返し適用すると一般項が求まるのであった. このことを考慮すると,\ 解答の方法も自然な発想である.