中学校では特殊な三角形における長さや角度の関係を学習した. $ 左下 45°,\ 45°,\ 90°}\ の直角三角形の3辺の長さの比は 1:1:2} 中央 30°,\ 60°,\ 90°}\ の直角三角形の3辺の長さの比は 1:3:2} 右下 直角三角形の3辺の長さの関係は a²+b²=c²} (三平方の定理}) [ 直角三角形についてはわかった.\ しかし,\ ここで思考停止するわけにはいかない. 直角三角形以外の三角形では長さや角度にどのような関係があるのかを追求すべきである. 次のような三角形の3辺の長さ$a,\ b,\ c$や3つの角度$A,\ B,\ C$の関係を知りたいのである. ちなみに,\ 角度$A,\ B,\ C$の対辺をそれぞれ$a,\ b,\ c$とするのが三角形のルールである. こうすることで位置が一意に定まるからである. さて,\ 度数法は一年の日数に由来しているが,\ 辺の長さとは無関係で数学的根拠に乏しい. そこで,\ 辺の長さと角度を結びつける新しい概念の導入を迫られる. どのような基準・考え方・定義で角度を扱うべきだろうか. 新しい概念は皆が納得できるよう数学的・合理的なものでなければならない. 皆が納得できるものならば,\ 次第に世界中に広まりいつしかそれが当たり前のものとなる. 皆が納得できないものならば,\ 自然と消え去っていくであろう. 数学的に一定であるものを基準として角度を扱うのが合理的である. ここで,\ 同じ鋭角$θ$をもつ以下の3つの直角三角形に着目してほしい. 同じ鋭角${θ}$をもつ直角三角形はすべて相似である. 角度が同じである以上,\ 三角形の大きさに影響されるような定義ではいけない. 実は,\ 大きさが異なるこれらの三角形の中に隠れた一定が存在する.\ 気付けるだろうか. 一定なのは辺の長さの{比である.} 例えば,\ $(底辺):(斜辺)=3:5=6:10=9:15$であり,\ 大きさによらず一定である. 3辺のうちの2辺ずつを用いた比を扱いやすい分数の形で定義したのが三角比である. 正弦{対辺{斜辺余弦}正接 鋭角$θ$に対して$sinθ,\ cosθ,\ tanθ$の値がそれぞれただ1つ定まる. 三角比は辺の長さと角度を結びつける概念である. 数学的根拠に基づいているだけあって,\ 度数法よりも数学的な応用範囲が広い. 今後はこの三角比を用いて様々な図形量を求めることになる. ところで,\ 左下の三角形の$cosθ$の値を考えてみよう. 直角三角形ではないからこれは正しくない. こうなると,\ 「直角三角形でない場合は三角比を扱えない」と誤解する学生が現れる. しかし,\ 三角比を扱う上で元々の三角形がどんな形かは関係ない. “直角三角形が{存}{在}{す}{る}とき”ではなく,\ “直角三角形を{作}{っ}{た}とき”の辺の比が三角比だ. 元々が直角三角形ならばその必要はないが,\ そうでないならば直角三角形を自分で作る. ある鋭角${θ}$に対し,\ それを含む直角三角形を必ず作成できる. そして,\ その直角三角形の辺の比が角度${θ}$の三角比となるのである. もっとも,\ この三角比の値が容易に求まるかや綺麗な値になるかは場合による. 角度$θ$を含む直角三角形を作るために頂点Aから底辺BCに垂線を下ろす(右図). 元々二等辺三角形であったから,\ 頂点から下ろした垂線の足Hは底辺BCを二等分する. 結局,\ $$ABH}に着目すると$cosθ=35}$であるとわかる. 角度が変わらない以上,\ $$ABCにおいても$cosθ=35$であることに変わりはない. 有名角${30°,\ 45°,\ 60°}$の三角比は三角定規の直角三角形から容易に求められる. 頻出であり,\ 登場のたびに直角三角形を元に考える時間はないので暗記すべきである. は$45°$の1をはさんで$30°$と$60°$が逆数の関係にある. もちろん,\ これらは三角形の大きさや形状によらず常に同じ値である.