運動の第2法則(運動方程式):糸でつながれた2物体の運動(※重要※)

運動方程式 質量$m$[kg],\ 加速度$a$[m/s$²$],\ 力$F$[N]の関係式.  単に公式の暗記ではなく,\ 公式が意味する物理的現象のイメージが重要である.  質量${m}$の物体が力${F}$を受けているとき,\ 物体は力と同じ向きに加速度${a}$で運動する.  逆に,\ 質量${m}$の物体が加速度${a}$で運動しているとき,\ 物体は同じ向きの力${F}$を受けている. 運動方程式についてはさらにいくつかの細かい点に注意を要する. まず,\ 運動方程式中のFは{合力}である. 例えば,\ 物体が右向きに力F₁,\ 左向きに力F₂\ (F₁>F₂)を受けているとき,\ F=F₁-F₂\ である. つまり,\ 物体全体としてみると右向きに力F₁-F₂を受けて右向きの加速度で運動することになる. もしF₁=F₂ならば,\ 合力F=0となって加速度aも0となる. また,\ 加速度と力(合力)は{ベクトル量}である. つまり,\ {加速度の向きと力(合力)の向きは必ず一致}する. さらに,\ 「したとき」という過去形ではなく,\ {現在進行形で表現}されていることに注目してほしい. あくまでも,\ {力Fを受けているまさにその間にだけ加速度aが生じる}のである. 一瞬だけ力Fを加えてはじき飛ばしたような場合,\ 加速度aが生じるのは最初の一瞬だけである. 一瞬だけ力Fを加えた後ずっと加速度aで運動すると誤解しがちなので注意してほしい. 一方,\ 速度は一瞬はじき飛ばして初速度を得た後ずっと変わらない.\ このことと混同してはならない. とにかく,\ 力Fと加速度aの関係は一体的なものである. {力Fを受けているならば,\ その間必ず同じ向きの加速度aが生じている.} 逆に言えば,\ {力Fを受けていないときに加速度aが生じることはない.} 運動方程式の問題の解答手順ワンパターン  着目物体を決め,\ 重力と接触力を図示する.    ・質量$m$[kg]の物体には必ず鉛直下向きに\ $mg$[N]の力がはたらく.    ・接触している部分には必ず何らかの接触力がはたらく.    ・逆に,\ 接触していない部分に接触力がはたらくことは絶対にない.    ・図示するのは着目物体が{受}{け}{る}力だけである.\ 与える力を図示してはならない.    ・接触力には垂直抗力,\ 張力,\ ばねの弾性力,\ 摩擦力,\ 浮力などがある.    ・未知の力は自分で文字を設定する.    ・作用・反作用の法則も意識する.  着目物体ごとに${x}$軸と${y}$軸を自分で設定し,\ 加速度${a}$を仮定する.    ・物体が動く方向を${x}$軸の正方向とし,\ それと垂直に$y$軸をとる.  [3]すべての力を座標軸方向に分解する.  [4]${着目物体ごとにx方向,\ y方向別々に立式する.}$     ${ 静止\ or}\ 等速運動} & → つりあいの式} 加速度運動} & → 運動方程式\ ma=F} }$  [5]必要ならば,\ 等加速度運動の公式で位置・速度・時間を求める. 高校物理の最重要事項である運動方程式の解答手順は完全にワンパターンである. つまり,\ {センター試験だろうが東大入試だろうが全く同じ手順を実行するしかない}のである. 1本しかない道を突き進むだけで正答に辿りつける,\ 物理が全科目中最も高得点を狙える理由である. しかし,\ その道を知っている学生,\ そして正しく進める学生は驚くほど少ない. 多くの問題集の解答には物理で最も重要なゴールまでの道のり(思考過程)が全く述べられていない. そして,\ ゴール(式と答え)のみがいきなり書かれている. これではいつまでたっても学生が自力でスタートからゴールまで進めるようにはならない. よって,\ ここでは正答に至るまでに必要な思考過程をすべて述べる.\ これを習得してほしい. 一旦習得してしまえばあらゆる問題に自分で対応でき,\ 物理で面白いように点が取れるようになる. 繰り返しになるが,\ 思考過程は一本しかない.\ その精度をどこまで高められるかが重要なのである. 傾斜角$θ$のなめらかな斜面上に質量$m$の物体Aを置き,\ 物体Aと糸でつながれた質量 $M$の物体Bを斜面の頂上に取り付けたなめらかに回る滑車を通して静かにつり下ろし たところ,\ 物体Bは鉛直下向きに動き始めた.\ 2物体の加速度の大きさ$a$と糸の張力の 大きさ$T$を求めよ.\ 重力加速度の大きさを$g$とする.   物体Aについて $ x軸方向の運動方程式 &  ma=T-mgsinθ} y軸方向のつりあい &  N=mgcosθ} $   物体Bについて \ $x$軸方向の運動方程式  $Ma=Mg-T}$ $ {a={M-msinθ}{M+m}g}, {T={Mm(1+sinθ)}{M+m}g}$} $[l} 最初に述べた解答手順に従って,\ すべての思考過程を順番通りに確実に辿っていく. まず,\ 図を{できる限り大きく図示}する.\ 小さすぎると力を描き入れたときに訳が分からなくなる. 物体{A}と物体{B}に着目し,\ {重力mg,\ Mgを図示}する. 物体{A}は糸と斜面と接触している.\ {糸からは張力,\ 斜面からは垂直抗力}を受ける.\ T,\ Nとする. 「なめらかな」とあるから摩擦力は受けない.\ また,\ 物体{B}が受ける接触力は{張力}のみである. {物体が動く方向({A}は斜面上向き,\ {B}は鉛直下向き)をx軸の正方向に設定}する. 本問では明らかに{2物体は同じ加速度で運動}するから,\ x軸正方向に{同じ加速度aを仮定}する. 物体{A}はx軸と垂直方向にy軸を設定する.\ 物体は{B}は明らかに必要ない. [3]{mgを軸方向に分解する.}\ sinθとcosθを間違わないように注意. [4]物体{A}は{x軸方向には加速度運動}するから,\ {運動方程式}を立てる. 間違ってもT=mgsinθ\ というつりあいの式を立ててはならない. 運動方程式は,\ {左辺は必ず(質量)(加速度),\ 右辺は合力}である. 物体{A}のx軸方向の合力は,\ T+(-mgsinθ)\ である(x軸正方向ならば+,\ 負方向ならば-). 物体{A}はy軸方向には運動しない({静止}している).\ よって,\ {つりあいの式}を立てる. 物体{B}は{x軸方向には加速度運動}するから,\ {運動方程式}を立てる.\ 合力はMg+(-T)である. 成り立つべき物理法則をすべて立式した後は数学的な処理を残すだけである. 運動方程式2式を連立すると,\ 自動的にa,\ Tが求まる. 本問では,\ 結果的には物体{A}のy軸方向の考慮は必要ない. しかし,\ 慣れるまでは{成り立つべき物理法則を一旦すべて立式する}という姿勢が重要である. 以上が本問を解く上で必要な思考過程であり,\ これが「物理の問題を解く」ということである. もし少しでも考慮を欠いていたならば,\ 最終的な答えがあっていたとしてもそれはたまたまである. なお,\ 加速度運動するとして加速度aを仮定したが,\ 1つ注意すべき点がある. {「動いている」というだけで安易に加速度運動と判断してはいけない.} 等速運動(加速度0)の可能性も考えられるからである. この場合物体にはたらく力はつりあっており,\ つりあいの式を立てることになる. {「静かに(初速0で)つり下ろした物体が動き始めた」ことから加速度運動と判断した}のである.
タイトルとURLをコピーしました