質量$m$の小球Aと質量$3m$の小球Bを糸でつないで滑車Pにかけ,\ さらに質量$4m$の 小球と滑車Pを別の糸でつないで天井からつるされた滑車Qにかける.\ 小球から静か に手を放したとき,\ それぞれの小球の加速度の大きさを求めよ.\ 滑車の質量および滑 車と糸の間の摩擦は無視できるものとし,\ 重力加速度の大きさを$g$とする. A,\ B,\ Cの加速度を$α,\ β,\ γ$とする. Aの運動方程式 $mα=T₂-mg}$ Bの運動方程式 $3mβ=3mg-T₂}$ Cの運動方程式 $4mγ=4mg-T₁}$ 滑車Pのつりあい $T₁=2T₂}$ 加速度の関係 滑車{Q}の両側が4mgであるが,\ 滑車{P}の両側が異なるので全体もつりあわない. つまり,\ 各小球は加速度運動するので運動方程式を立てることになる. 基本通り,\ 重力と接触力を図示する.\ 本問では滑車{P}も着目物体とする. 加速度の向き(軸)を設定したいのだが,\ その向きは問題の条件からはわからない. よって,\ {それらしい方向に加速度の向きを設定}しておく. もし実際の加速度の向きが逆向きだったならば,\ 結果が負の値になる. なお,\ ここで設定した加速度α,\ β,\ γは{地上の観測者から見た加速度}であることに注意. 各小球に対して運動方程式を立式して連立するわけだが,\ 1つ問題が生じる. 未知の文字α,\ β,\ γ,\ T₁,\ T₂に対し,\ 式が3つしかなくこれだけでは求まらない. そこで,\ {滑車 Pにも着目}して等式の数を増やす必要がある. まず,\ {質量0の物体にはたらく力は加速度運動していたとしてもつりあっている.} 運動方程式\ 0γ=T₁-2T₂\ を立式したと考えてもよい. さらに,\ {滑車の左右の物体の滑車から見た相対加速度の大きさは等しい.} 滑車{P}に乗った人から見れば,\ 糸でつながれた小球{A,\ B}が同じ加速度で運動するのは当然だろう. 小球{A}の滑車{P}から見た相対加速度の大きさは\ α-γ\ (鉛直上方向を正)である. また,\ 小球 Bの滑車{P}から見た相対加速度の大きさは\ β-(-γ)\ (鉛直下方向を正)である. これで5文字に対して式5つとなり,\ すべて求まることになる. 連立方程式をどんな手順で解くかは自由だが,\ とにかく{1文字消去}の原則に従えば必ず求まる. ここでは\ α,\ β,\ γがすべて正になったので,\ 最初の向きの設定が正しかったことがわかる. 答えるのは加速度の大きさなので,\ 負になった場合でも正にして答える. 滑車Pから見たA,\ Bの加速度を$α$とする. また,\ 地上から見たCの加速度を$β$とする. Aの運動方程式 $mα=T₂-mg-mβ}$ Bの運動方程式 $3mα=3mg+3mβ-T₂}$ Cの運動方程式 $4mβ=4mg-T₁}$ 滑車Pのつりあい $T₁=2T₂}$ 小球{A,\ B}の運動を{滑車{P}上の観測者の立場}で考えると,\ 式の数が減って連立が楽になる. このとき,\ {小球{A,\ B}の加速度は,\ 向きが逆で同じ大きさ}である. また,\ 滑車{P}は加速度βで加速度運動しているので,\ {慣性力}の考慮が必要になる. 小球{A}にかかる慣性力はmβ,\ 小球 Bにかかる慣性力は3mβ\ である(mα,\ 3mαではない). 問われているのは{地上の観測者から見た加速度の大きさ}である. αは滑車{P}から見た相対加速度であるから,\ 地上から見た加速度に変換して答える. (滑車{P}から見た相対加速度)=(地上から見た加速度)-(滑車{P}の加速度) より {(地上から見た加速度)=(滑車{P}から見た相対加速度)+(滑車{P}の加速度)} A:\ 47g+17g=57g\ (鉛直上方向を正), B:\ 47g+(-17g)=37g\ (鉛直下方向を正)