a$を$n$個掛けたものを$a^{n$と書き,\ $a^n}$を$a$の累乗,\ $n}$を$a^n$の指数という.
$m,\ n$が正の整数のとき,\ 以下の指数法則が成り立つことを数Iで学習した.
[1]\ \ $a^ma^n=a^{m+n$ [2]\ \ $(a^m)^n=a^{mn$ [3]\ \ $(ab)^n=a^nb^n$}
[1]と[2]を混同し,\ $a^3a^2=a^6$のような間違いを犯す学生が非常に多い.
$a^3\,がaを3個掛けたもの$という最低限の認識すらないために生じるミスである.
仮に指数法則を忘れたとしても,\ 例のように根幹に立ち戻って考えれば間違えようがない.
\rei\ \ $a^3× a^2=a^{3+2=a^{5 a^3× a^2=aaa× aa=a^5$\ $(a\,3個とa\,2個でa\,5個)$}
\rei\ \ $(a^3)^2=a^{3×2=a^{6 (a^3)^2=(aaa)(aaa)=a^6$\ \ $(a\,3個が2つでa\,6個)$}
指数の0や負の整数への拡張
指数を正の整数でない場合,\ つまり0や負の整数にまで拡張する.
結論から言えば,\ 以下のように定義される.\ \ $a≠0,\ n$は正の整数とする.
何故このように定義したのかも理解しておく必要がある.
数学は最も自然な形で}拡張することで発展してきた.
指数が正の整数のとき,\ 明らかに指数法則①が成り立つ.
よって,\ $指数が0や負の整数でも指数法則①が成り立つように定義するのが自然である$.
0や負の整数のときに成り立つ法則が正の整数のときと異なっているのは合理的ではない.
ではまず,\ $a^0を指数法則①が成立するように定義しよう.$
$a^ma^n=a^{m+n}\,の両辺でn=0}とすると (左辺)=a^m× a^{0 (右辺)=a^{m+0=a^m$
よって,\ $(左辺)=(右辺)$を成り立たせるためには,\ $a^0=1$と定義すべきである.
次に,\ $a^{-n}を指数法則①が成立するように定義しよう.$
$a^ma^n=a^{m+n}\,の両辺でm=-\,n}とすると (左辺)=a^{-n× a^n (右辺)=a^{-n}+n}=a^0=1$
よって,\ $(左辺)=(右辺)$を成り立たせるためには,\ $a^{-n}=1}{a^n$と定義すべきである.
累乗根の定義
$n$を正の整数とする.
$n乗して実数}\,aになる実数$\ ($x^n=a$を満たす実数}\,$x$の値)を$aのn乗根$という.
$a$の2乗根(平方根),\ 3乗根(立方根),\ 4乗根,\ $・・・・・・$をまとめて$a$の累乗根という.
[1]\ \ $nが奇数$のとき 実数$a$の$n$乗根はただ1つ存在し,\ これを$√[n]{a$と表す.
\ \ $nが偶数}$のとき} \ \ \rei\ \ $5の3乗根は\ √[3]{5}\ のみ,\ \ -\,5の3乗根は\ √[3]{-\,5}=-√[3]{5}\ のみ.$
[2]\ \ $nが偶数$のとき 実数$a$の$n$乗根は正と負が1つ存在し,\ $√[n]{a},\ -√[n]{a$と表す.
\ \ $nが偶数}$のとき} $負の数のn乗根(n乗して負数になる実数)は存在しない.$
\ \ $nが偶数}$のとき} \ \ \rei\ \ $5の4乗根は\ ±√[4]{5},\ \ -\,5の4乗根は存在しない.$
補足①\ \ nが奇数でも偶数でも√[n]{0}=0である.
補足②\ \ √[2]{a}=√ a\ (普通のルートは2乗根のこと)である.\ 決して√ a=√[1]{a}=aではない!}
補足③\ \ aのn乗根とn乗根aは別}である.
\ \ aのn乗根:n乗してaになる数.\ nが偶数ならば2個存在する.
\ \ n乗根a :√[n]{a}\ のこと.
\ \ \rei\ \ 16の4乗根(4乗して16になる数)は,\ √[4]{16}\,(4乗根16)と-√[4]{16}\,(-\,4乗根16)の2個.
\ \ \ \ 当然,\ √[4]{16}=2,\ \ -√[4]{16}=-\,2である.
\ \ \ \ 定義の理解が不足していると√[4]{16}=±\,2などと間違える}.
補足④\ \ 奇数乗根ならば,\ -を前に出せる.
補足⑤\ \ この分野ではすべて実数の範囲で考える.
\ \ しかし,\ 複素数にまで範囲を広げると実数の範囲で考える場合ほど話が単純ではなくなる.
\ \ このような問題が生じるため,\ 高校範囲では虚数の累乗根は考えない.
\ \ √{i}\,のようにルートの中に虚数がある表現もすべきではない.
\ \ ただし,\ 「\,2乗してiになる複素数zを求めよ」といった問題自体は高校範囲である.
\ \ 数II}:複素数と方程式分野で学習済みのはずである.\ 一応略解を示しておく.
{累乗根の性質
指数の有理数への拡張
先程整数全体にまで拡張したが,\ さらに有理数(分数)の範囲にまで拡張する.
$a^{ mn}を指数法則①が成立するように定義することを考える.${a^mと定義すべきである.$
指数法則②
以上をまとめると,\ 以下の指数法則が成立することになる.\ \ $a>0,\ b>0}$とする.
指数$r,\ s$が整数のときはもちろん,\ 分数であっても,\ つまり$r,\ sが有理数$のとき
指数法則②は,\ 指数が正の整数に限られていた指数法則①と全く同じである.
そもそも同じになるようにa^0,\ a^{-r},\ a^{ mn}\ を定義したわけなので当然である.
a>0,\ b>0という前提条件は,\ a^r\,(r:\dot{分}\dot{数})がaが正の数のときのみ定義されている}ためにある.
aが負の場合,\ √{-\,1}=(-\,1)^{12}=(-\,1)^{24}=√[4]{(-\,1)^2}=√[4]{1}=1\ のような矛盾が生じるからである.
また,\ a^{-12}=1}{a^{12=1}{√ a}\ より,\ a=0のときも定義できない.
rが\dot{整}\dot{数}ときはaが0や負数でも定義されるので注意してほしい.