等加速度直線運動の公式
初速度$v₀$\ [m/s],\ 加速度$a$\ [m/s$²$],\ 時刻$t$\ [s]における速度$v$\ [m/s],\ 変位$x$\ [m]とする.
高校物理の最重要公式の1つである.\ 以下の物理的な意味合いを理解した上で丸暗記する.
まず,\ 速度や加速度に関する公式なので,\ {自分で軸を設定しなければ使えない公式}と考えておく.
は{速度と時間の関係}を表す公式である.
{初速度v₀の物体はt秒間加速度aで加速すると速度vになる}ことを示す.
は{変位と時間の関係}を表す公式である.
{初速度v₀の物体はt秒間加速すると初期位置からみてxの最終位置に到達する}ことを示す.
xは変位(位置の変化)であり,\ 道のりではないので注意!
数学で微分・積分を学習すると,\ の微分が,\ の積分がになっていることがわかる.
は{速度と変位の関係}を表す式である.\ とからtを消去して導かれる.
tを求めずにv₀,\ a,\ xを求めたい場合に利用すると便利である.
}]$
等加速度直線運動の${v-t}$グラフ
v-tグラフにおける着目点は2点のみである.
まず,\ 傾きは加速度aを表す.\ 等加速度運動ならば一定の傾きになるはずである.
次に,\ 面積は移動距離を表す.\ 実際,\ 長方形の面積v₀tと三角形の面積12at²の和が公式である.
加速度a=0ならば等速直線運動であり,\ このとき(面積)=v₀tとなる.
加速により,\ 等速の場合と比較して移動距離が三角形の分だけ伸びるわけである.
初速度8.0m/sで右向きに動き出した物体が等加速度直線運動をする.\ 6.0秒後の速度
を左向きに4.0m/sとする.
右向きを正として,\ この物体の速度$v$と時刻$t$の関係を図示せよ.
物体の加速度を求めよ.
速度が0になるときの時刻と位置を求めよ.
10秒後の物体の位置と全移動距離を求めよ.
物体が最初の位置に戻るときの時刻と速度を求めよ.
最初の位置から左に9.0mの位置を通過するときの速度を求めよ.
等加速度直線運動なのでv-tグラフは直線になる.
(加速度一定)=(傾き一定)だからである.
よって,\ 次の2点を通る直線を図示すれば済む.
(t,\ v)=(0,\ 8.0),\ (6.0,\ -4.0)
}]$}
$加速度をaとすると -4.0=8.0+a6.0} より a=-2.0$
$ {左向きに2.0\ m/s²}$}
$[l}
{右向きを正と設定}して公式v=v₀+atに代入する.
計算結果が負であることは,\ {加速度が左向き}であることを意味する.
のグラフの傾きを求めてもよい. {-4.0-8.0}{6.0-0}=-2.0
}]$
$時刻をtとすると 0=8.0+(-2.0) t} より t=4.0$
$位置をxとすると x=8.04.0+12(-2.0)4.0²}=16$
$0²-8.0²=2(-2.0) x} より x=16$
$ {4.0秒後,\ 最初の位置から右に16m}の位置.}$}
$[l}
{右向き正}に注意して公式v=v₀+at,\ x=v₀t+12at²に代入する.
v²-{v₀}²=2axにより,\ tを使わずにxを求めることもできる.
xの計算結果が正であることは,\ {求める位置が最初の位置からみて右の地点である}ことを意味する.
のグラフを利用してもよい.\ v=0となるのは{t軸との交点}である.
\ また,\ 色塗り部分の{面積}が4秒間の移動距離を表している.
$全移動距離は 16+16+20}=52$
$ {最初の位置から左に20m}の位置.\ 全移動距離は52m}.}$}
$[l}
位置はと同様である.\ xが負なので,\ {求める位置は最初の位置から見て左の地点}であるとわかる.
全移動距離は単に公式にあてはめるだけでは求められない.\ 公式の丸暗記は通用しないのである.
{物体の運動がイメージできているか}が重要である.\ 目を閉じて問題の物理現象をイメージしよう.
右向きの初速度をもつ物体に左向きの加速度がかかるとどのような運動になるだろうか.
あまり変なたとえ話はしたくないのだが,\ とりあえず加速度を風と考えるとよい.
進行方向と逆向きに風が吹いているならば,\ 速度は徐々に低下していき,\ やがて0になる瞬間がくる.
風はずっと吹いているから,\ その後物体は左向きに運動を開始する.
運動の方向と風向きが等しいければ,\ 速度は徐々に上昇していく(加速する).
結局,\ 物体は一旦右に16m}の点(v=0の地点)まで運動し,\ その後左に20m}の点まで運動する.
以上をすべて考慮して全移動距離が求まる.
$0=8.0 t+12(-2.0) t²} より t²-8.0t=0$
$よって t(t-8.0)=0 ゆえに t>0 より t=8.0$
$v=8.0+(-2.0) 8.0}=-8.0$
$ {8.0秒後,\ 左向きに8.0m/s$}
$[l}
最初の位置に戻るときは,\ {変位x=0}になるときである.
{右向き正}に注意して公式を適用すればよい.
まずx=v₀t+12at²でtを求め,\ 続いてv=v₀+atでvを求める.
実は,\ {初速度と逆向きに一定の加速度がかかる場合,\ 双方向の運動が完全に対称になる.}
初速度8.0m/s}で運動を開始し,\ t=4.0で折り返す(v=0)がすでに判明している.
この右方向の運動と折り返し後の左方向の運動は対称になる.
よって,\ 原点に戻る時刻がt=8.0で,\ 速度が左向きに8.0m/s}\ であることは計算せずともわかる.
}]$
$v²-8.0²=2(-2.0)(-9.0)} よって v<0 より v=-10$
$ {左向きに10m/s$}
$[l}
v₀,\ a,\ xからvを求める場合,\ v²-{v₀}²=2ax\ を利用する.\ tを求める必要はない.
{右向きを正}とした場合,\ 左に9.0m}はx=-9.0であることに注意する.
v²=100となるが,\ 物理的状況を考慮するとv<0である.
下図は原点から$x$軸上を運動しだした物体の速度$v$[m/s]と時刻$t$[s]の関係を表すグ
ラフである.
物体の加速度$a$[m/s$²$]と時刻$t$[s]の関係を表すグラフを図示せよ.
物体が原点から最も遠ざかる時刻とそのときの位置を求めよ.
11秒後の物体の位置を求めよ.
v-tグラフの傾きが加速度aである.
v-tグラフにおいて直線(傾き一定)なので加速度も一定であり,\ a-tグラフは横線になる.
t=1.0~3.0,\ 8.0~9.0\ は等速運動であるから加速度は0である.
t=0~1.0のときa={3.0-0}{1.0-0}=3.0 t=3.0~8.0のときa={-2.0-3.0}{8.0-3.0}=-1.0
t=9.0~11のときa={0-(-2.0)}{11-9.0}=1.0
グラフから読み取れる時刻,\ 速度,\ 加速度を元に物体の運動をイメージしてみよう.
t=0~1.0では正方向に加速して速度が徐々に増加していく.
t=1.0になると加速度が0になり,\ t=3.0まで等速運動を続ける.
t=3.0になると負方向の加速度がかかり,\ 速度が徐々に減少していく.
t=6.0まで速度は減少するが向きは正方向であり,\ 移動方向も正である.
t=6.0で速度0,\ つまり一瞬停止する.
負方向の加速度がまだかかっているので,\ 速度も負方向になり,\ 負方向に移動し始める.
t=8.0まで負方向に加速され,\ 負方向の速度が増加していく.
t=8.0からは加速度が0になり,\ t=9.0まで等速運動を続ける.
t=9.0からは正方向の加速度がかかり,\ 負方向の速度が減少していく.\ 移動方向は負のままである.
t=11で運動が終了する.
グラフより,\ ${t=6.0}$のとき原点から最も遠ざかる.
$位置は (2.0+6.0)3.012}={12m$
$[l}
で運動の様子がイメージできていれば容易である.\ {速度の正負と運動方向の正負は一致する.}
v>0である6秒後まで物体はx軸正方向に運動し,\ その後負方向に運動し始める.
つまり,\ 6秒後に原点から最も遠ざかるわけである.
加速度の正負と速度・移動方向の正負は一致しないので注意してほしい.
{6秒後までの移動距離はt=0~6.0間の面積}に等しい.
つまり,\ 上底2.0,\ 下底6.0,\ 高さ3.0の台形の面積である.
}]$
$t=6.0~11秒の移動距離は (1.0+5.0)2.012=6.0}$
$ 11秒後の位置は 12-6.0}={6.0m$}
$[l}
速度が負である6.0~11秒の間はx軸負方向に運動する.
このときの移動距離は{t=6.0~11間の面積}に等しい.
結局,\ t=0~6.0で正方向に12m}移動し,\ t=6.0~11で負方向に6m}移動することになる.
よって,\ 最終的な位置(x座標)は6.0である.