場合の数の数え方、和の法則と積の法則

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当分野の目的は,\ \textbf{起こりうる全ての場合の総数を\textbf{\textcolor{red}{漏れなく重複なく}}数え上げる}ことである. \\[.2zh]   その\textbf{\textcolor{blue}{大原則}}は,\ 中学数学と同様,\ とにかく\textbf{\textcolor{red}{すべての場合を書き出す}}ことである. \\[.2zh]   「\textbf{\textcolor{red}{辞書式配列}}」「\textbf{\textcolor{red}{樹形図}}」「\textbf{\textcolor{red}{表}}」ですべての場合を書き出せば,\ 場合の数は自ずと求まる. \\[.2zh]   しかし,\ 場合の数が多くなると,\ すべての場合を書き出すのは現実的に不可能になる. \\[.2zh]   そこで必要になるのが,\ 「\textbf{\textcolor{blue}{和の法則}}」と「\textbf{\textcolor{blue}{積の法則}}」という場合の数の計算法則である.場合の数・確率分野は,\ この2大法則のみで構成されている}}と言っても過言ではない. \\[.2zh]   当分野を苦手とする学生が多いが,\ この法則の理解不足が大きな要因である. \\\\\\  $[1]$\ \ \textcolor{blue}{\textbf{和の法則}}\ (左下図) \\[.5zh] \phantom{ [1]}\ \  \,2つの事柄A, Bがあり, Aが$m$通り, Bが$n$通りとする. \\[.2zh] \phantom{ [1]}\ \  \,A, Bが\textbf{\textcolor{cyan}{同時には起こらない}}とする(左図). \\[.2zh] \phantom{ [1]}\ \  このとき, \textbf{\textcolor{red}{AまたはBのどちらかが起こる場合の数}}は $\bm{\textcolor{red}{m+n}}$\ \textbf{通り} \bm{和の法則は,\ ベン図(集合)でとらえると超当たり前のことを主張している}にすぎない. \\[.2zh] \bm{共通部分がない}(A\cap B=\varnothing)ならば \bm{n(A\cup B)=n(A)+n(B)=m+n} (左図) \\[.2zh] このように\bm{AかつBが空集合}(A\cap B=\varnothing)であるとき,\ \bm{\textcolor{blue}{AとBは互いに排反である}}という. \\[1zh] AとBが排反でない場合(右図)は和の法則が成り立たない. \\[.2zh] この場合,\ \bm{n(A\cup B)=n(A)+n(B)-n(A\cap B)}\ (個数定理)\ を用いて求めることになる. \\[.2zh] つまり,\ (AまたはBの場合の数)=m+n-(AかつBの場合の数)とする必要がある. \\[1zh] 実戦において重要なのは,\ \bm{「可能な限り排反となるように場合を分けよ」}ということである. \\[.2zh] AとBに場合分けするとき,\ 排反な場合分けであれば,\ 最後は足すだけで済む. \\[.2zh] しかし,\ 排反な場合分けでなかった場合,\ 後で共通部分の場合の数を引く必要が出てくる. \\[.2zh] 2つの集合の共通部分ならまだしも,\ 3つの集合の共通部分を考えるのは相当に面倒である. \\[.2zh] 思考が複雑になり,\ 間違えるリスクも大幅に高くなる. \\[.2zh] 要するに,\ \bm{場合分けした後で和の法則が成り立つか(排反か)を考えるのは順序が違う.} \\[.2zh] \bm{和の法則が成り立つように(排反となるように)場合分けをすることを考える}のが基本である. \\[1zh] ただし,\ 問題によっては排反な場合分けが困難なものもある. \\[.2zh] また,\ あえて排反でない場合分けをして共通部分の場合の数を引いた方が楽なものもある. \\[.2zh] 明確な判断基準はないので,\ 問題ごとに適切に判断する必要がある. \\[.2zh] それを可能にするには,\ 様々な問題演習を積み重ねる他ない. AとBの2人が対戦し,\ 先に3回勝ったほうを優勝とする. \\[.2zh] \hspace{.5zw}最終的にAが優勝するとき,\ 優勝が決まるまでの決まり方は何通りあるか. \\   1回目にAが勝つ場合は6通り,\ Bが勝つ場合は4通りある. \\[.5zh]   \,よって,\ 総数は $\textcolor{red}{6+4}=\bm{10\ (通り)}$ \\\\[.5zh]  \betu\ \ [\,\textcolor{blue}{辞書式配列}\, \bm{樹形図}または\bm{辞書式配列}によりすべての場合を書き出すのが標準解法である. \\[.2zh] どちらにせよ,\ \bm{\textbf Aが3回勝った時点で終了,\ \textbf Bが勝つのは2回まで}の2点に注意を要する. \\[.2zh] 条件が複雑なので,\ 相当慎重に書き出さなければ間違えてしまうだろう. \\[.2zh] すべての場合を書き出す解答は小学生にも可能だが,\ 1ヶ所でも間違えると0点になる危険を伴う. \\[1zh] 1つの樹形図にしてもよいが,\ 縦に長くなりそうなので1回目の勝者が\textbf{AかB}かで分割した. \\[.2zh] これは,\ \bm{1回目の勝者が\textbf{AかB}かで場合分け}したことに相当する. \\[.2zh] ここで,\ 1回目に\textbf{Aが勝つとBが勝つ}は同時に起こらないから,\ この2つの場合は\bm{排反}である. \\[.2zh] よって,\ 各場合を足せば総数を求めることができる(\bm{和の法則}).\\[1zh] 実は,\ 非常にスマートな考え方を用いると,\ 計算で求めることができる(別項で紹介). 積の法則}} \\[.5zh] \phantom{ [1]}\ \  Aが$\bm{m}$通り起こり, その\textbf{\textcolor{cyan}{いずれの場合に対しても}},\ Bが$\bm{n}$通り起こる. \\[.2zh] \phantom{ [1]}\ \  このとき, \textbf{\textcolor{red}{AとBがともに起こる場合の数}}は \textbf{$\textcolor{red}{\bm{m\times n}}$通り} \\\\\\ }硬貨を3回投げるとき,\ 表裏の出方は何通りあるか. 積の法則は,\ \bm{樹形図でその意味合いを理解する}ことが重要である. \\[.2zh] 本問の場合の数を樹形図を書いて求めるとき,\ すべての場合を書き出す必要があるだろうか. \\[.2zh] 途中まで書き出した段階で\bm{明確なパターンがある(均等に枝分かれする)}ことに気付くはずである. \\[.2zh] このような場合,\ すべて書き出さずとも計算で求めることができる. \\[1zh] その計算法則を示したものが「積の法則」である. \\[.2zh] 1回目は表と裏の2通りがある. \\[.2zh] \bm{1回目の2通りのいずれの場合に対しても,\ 2回目は表と裏の2通りがある.} \\[.2zh] つまり,\ 1回目の表に対して2回目は表と裏の2通りがある. \\[.2zh] また,\ 1回目の裏に対しても2回目は表と裏の2通りがある. \\[.2zh] よって,\ 硬貨を2回投げるときの出方は,\ 2\times2=4\ 通りと求められる. \\[.2zh] さらに,\ 2回投げるときの4通りのいずれの場合に対しても,\ 3回目は表と裏の2通りがある. \\[.2zh] よって,\ 硬貨を3回投げるときの出方は,\ 4\times2=8\ 通りと求められる. \\[1zh] 結局,\ \bm{積の法則は,\ 枝分かれが均等ならば掛けるだけという超当たり前のことしか主張していない.} \\[.2zh] しかし,\ この小学生レベルの主張を正しく理解できていない高校生が非常に多い. \\[.2zh] その結果,\ 「ここは足し算ですか?掛け算ですか?」という質問をする学生が多発する. \\[.2zh] 足し算か掛け算かは,\ 公式やパターンとして丸暗記するようなものでは決してない. \\[.2zh] 和の法則と積の法則の正しい理解があればその都度自分で判断できるし,\ 間違えようもない. $大小2個のサイコロを投げるとき,\ 出た目の和が偶数になる場合の数は何通りあるか.$ \\ 出る目が\textcolor{cyan}{どちらも偶数}であるときの場合の数は $\textcolor{red}{3\times3=9}\ (通り)$ \\[.5zh]   (ii)\ \ 出る目が\textcolor{cyan}{どちらも奇数}であるときの場合の数は $\textcolor{red}{3\times3=9}\ (通り)$ \\[1zh] \centerline{$\therefore \text{(\hspace{.13zw}i\hspace{.13zw}),\ (ii)}は\textcolor{magenta}{互いに排反}なので,\ 求める場合の数は \textcolor{red}{9+9}=\bm{18\ (通り)}$} \\\\[1zh]  \betu\ \ [\textcolor{blue}{\,表の利用\,}] \\[1zh] 和が偶数になるのは\bm{(偶数)+(偶数)}の場合と\bm{(奇数)+(奇数)}の場合である. \\[.2zh] この2つの場合は同時には起こらないから,\ 互いに排反である. \\[.2zh] よって,\ 一旦場合分けして別々に求め,\ 最後に足せばよい(\bm{和の法則}). \\[1zh] 大小2個のサイコロがいずれも偶数となる場合を考える. \\[.2zh] 1個のサイコロの出た目が偶数となる場合の数は,\ 2,\ 4,\ 6の3通りである. \\[.2zh] また,\ \bm{2個のサイコロの出る目は,\ 互いに影響しない.} \\[.2zh] よって,\ \bm{一方のサイコロの3通りのおのおのに対し,\ もう一方も3通り}ある. \\[.5zh]  大サイコロ2に対して,\ 小サイコロ2,\ 4,\ 6の3通り. \\[.2zh]  大サイコロ4に対して,\ 小サイコロ2,\ 4,\ 6の3通り. \\[.2zh]  大サイコロ6に対して,\ 小サイコロ2,\ 4,\ 6の3通り. \\[.5zh] ゆえに,\ ともに偶数である場合の数は,\ \bm{積の法則}により9通りと求められる. \\[.2zh] 奇数の場合も,\ 1個のサイコロに対して1,\ 3,\ 5の3通りがあるから同じである. \\[1zh] なお,\ もし試験で「サイコロ2個」「サイコロ2回」の問題が出たならば超ラッキーである. \\[.2zh] 36通りを表にして書き出せば確実に求まるからである(別解). \\[1zh] \bm{「大小」}とあるのは,\ \bm{2つのサイコロが区別できる}ことを意味している. \\[.2zh] よって,\ (2,\ 4)と(4,\ 2)は2通りと数えることになり,\ 上のように単純に求まる. \\[.2zh] もし,\ サイコロが区別できない場合,\ (2,\ 4)と(4,\ 2)は1通りの扱いになり,\ 話がややこしくなる. \\[.2zh] (1,\ 1)のようにペアがないものもあり,\ 単純に18通りを2で割るわけにもいかない. \\[.2zh] 18通りから(1,\ 1),\ (2,\ 2),\ \cdots,\ (6,\ 6)の6通りを除いた12通りを2で割ることになる. \\[.2zh] (1,\ 1),\ (2,\ 2),\ \cdots,\ (6,\ 6)の6通りと12\div2=6通りを足して6+6=12通りと求められる. \\[.2zh] このように,\ \bm{場合の数分野では区別できるか否かで話が大きく変わる}ので注意が必要である.