中線定理の5通りの証明(図形を扱う5分野の解法比較)

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$△$ABCにおいて,\ 辺BCの中点をMとする. このとき,\ $AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)}$\ が成り立つことを示せ. \\中線定理の証明 \\  高校数学には,\ 図形を扱う分野が5つある.   ①\ \ 座標平面(数II)   ②\ \ 三角比(数I)・三角関数(数II)   ③\ \ 初等幾何(数A)   ④\ \ ベクトル(数B)   ⑤\ \ 複素数平面(数III)  試験で図形問題を見かけたとき,\ どの分野の問題としてとらえるかの選択に迫られる.  各分野のメリット・デメリットを考慮した上で,\ 解法を選択する必要がある.  中線定理は,\ どの分野の問題としてとらえても割と容易に証明できる定理の代表である.  本項では5分野すべての証明を示したので,\ 比較してみてほしい. 座標平面の利用\,]   座標平面上に辺BCの中点Mは原点}となる. まず,\ 文字を用いて一般性を失わないように頂点の座標を設定する.} つまり,\ 文字に適切な数値を代入するとどんな三角形でも表せる}ように設定する. だからといって,\ A(a_1,\ a_2),\ B(b_1,\ b_2),\ C(c_1,\ c_2)}のように文字を6つも用いる必要はない. 0が多く,\ 文字が少なくなるように設定}すると,\ 後の計算が楽になる. 全ての△ABC}は,\ 回転することで辺BC}をx軸と重ねることができる. さらに,\ 平行移動により辺BC}の中点を原点に重ねることができる. よって,\ B(c,\ 0),\ C(-\,c,\ 0)}としても一般性を失わない. 今回は対称性にも着目}し,\ 辺BCの中点Mが原点となるように設定した.} 問題によっては,\ 1点が原点となるようにB(0,\ 0),\ C(c,\ 0)}と設定した方がよいこともあるだろう. なお,\ A(0,\ a),\ B(-\,c,\ 0),\ C(c,\ 0)}と設定してはならない. 点A}が常にy軸上にあることになり,\ 二等辺三角形しか表せなくなるからである. 設定さえしてしまえば,\ AB,\ AC,\ AM,\ BM}の長さを2点間の距離の公式}で求めるだけである. 2点(x_1,\ y_1),\ (x_2,\ y_2)間の距離   √{(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2} 特に,\ 2点(0,\ 0),\ (x_1,\ y_1)間の距離 \,√{{x_1}^2+{y_1}^2} 座標平面の最大のメリットは,\ 圧倒的な汎用性の高さ}である. ほとんどの図形問題は,\ 座標設定すると,\ 知識や工夫がなくとも機械的な計算のみで答えに至る. 時間が限られた実際の試験では非常に重要で,\ 試行錯誤した挙げ句0点になるリスクが極めて低い. 一方で,\ 計算量が多くなりがちになる}のがデメリットである. また,\ 角度の扱いに難があり,}\ 角度の条件を扱う場合には三角比の併用も考えなければならない. 三角比・三角関数の利用 2つの三角形に余弦定理}\ a^2=b^2+c^2-2bc\cosθ\,を適用する. その後補角の公式}\cos(180°-θ)=-\,\cosθ\,も適用して導かれる. 三角比・三角関数のメリットは,\ やはり角度の扱いに強い}ことである. しかし,\ \sin,\ \cos,\ \tan\,の関連公式を用いた変形に慣れている必要がある. 特に,\ 数II}の三角関数で学習する公式の利用が必要な場合には難易度が一気に上がる. 本問の場合は,\ たまたま数 Iの三角比の範囲内で済むので容易である. ベクトルの場合,\ 始点をどこにとるかで後の計算量が大きく変わる.} 通常は三角形の頂点を始点とするが,\ 問題によっては対称の中心を始点とする}と楽になる. 本問は辺BCの中点Mを始点とすると,\ 後は自然な流れで計算するだけで証明できる. ベクトルのメリットも,\ 座標平面と同じく汎用性の高さ}にある. 基準となるベクトルを設定してしまえば,\ 後は機械的な計算のみで答えに至る. また,\ 点のx座標とy座標を同時に扱えるため,\ 座標平面よりも文字数を減らすことができる. さらに,\ 空間図形に強い}のがベクトル最大のメリットである. デメリットは,\ 計算量が多くなりがちになる}ことである. また,\ 角度の扱いに弱い.}\ ただし,\ 直角の扱いには抜群に強い.} 複素数平面の利用 複素数平面は,\ もともとベクトルとの関連性が高い分野である. 本問の場合,\ ベクトルとほぼ同様の流れで証明できる. 本問では生かされていないが,\ 角度,\ 特に回転に強い}ことが複素数平面のメリットである. 一方で,\ z}^2=z z\ のような特有の計算にかなりの慣れが必要になる. 初等幾何の利用\頂点Aから下ろした垂線の足Hが線分MC上にある}とき}頂点Aから下ろした垂線の足Hが頂点Cと一致する}とき}$ \,においてHをCとすれば同様である.{頂点Aから下ろした垂線の足Hが辺BCのC側の延長線上にある}とき}とすれば同様である.AB≦ AC$のときも同様である. 初等幾何のメリットは,\ 最小限の計算で済む}ことである. 頂点Aから辺BC}またはその延長線上に垂線を下ろし,\ 三平方の定理}を適用する. 次に,\ BHとCHを辺BCの中点M}で分割し,\ BM=MCも考慮して整理する. 最後,\ 再び三平方の定理}を適用すると証明できる. スマートな解法が可能になる初等幾何だが,\ うまい補助線を引くなどひらめきや工夫が必要になる.} 実は,\ 初等幾何には他にも重大なデメリットがある. それは,\ 一般的に示すことが思いの外難しい}ことである. 本問の場合,\ [1]を示しただけでは全ての三角形で成り立つことが示せたことにはならない.} あくまでも[1]の図の鋭角三角形の場合についてのみ証明されたにすぎない. 自分の都合のよい図の場合のみを証明して安心してしまいがちなので注意しなければならない. 場合によっては,\ 1つの場合を巧みに証明できても,\ 他の場合にはまた別のひらめきが必要になる. 本問はたまたまどの三角形の場合も同様の発想で証明できるので,\ 簡潔な記述に留めることができる.