複素数$z={a}+{b}$に対して${ z={a}-{b}$を共役複素数という. 共役複素数の図形的意味と性質 $[l} 単純な実数倍・和・差についてはベクトルと同一であり,\ 複素数平面の必然性を感じなかった. ここからは複素数平面を特徴づける性質を追求していくことになる. まず1つ目が共役複素数という複素数特有の概念である. 実数係数の方程式が常にzと zをペアで解にもつように,\ zと zは切り離せない関係にある. よって,\ 複素数平面ではzと zの関連性を最大限意識すると簡潔に解答できる問題が多い. 早速,\ 共役複素数に関してどのような法則が成立するかを確認しよう. まずは共役複素数の図形的意味を考える. zに対し,\ { z\ は実軸対称点,\ -z\ は原点対称点,\ – z\ は虚軸対称点}である. つまり,\ {実軸に関して対称移動したい場合,\ 単に共役をとればよい}わけである. このように,\ 複素数平面は対称移動にもある程度強いといえる. z={a}+{b}\ (a,\ b:実数)とおく. z+ z=({a}+{b})+({a}-{b})=2a=(実数), z z=({a}+{b})({a}-{b})=a²+b²=(実数) [3]は,\ {共役をとることと四則演算の順序が交換可能}なことを示している. 例えば,\ は足した後に共役をとった数と共役をとった後に足した数が等しいことを示している. 実用上は{上のバーが分割できる}ととらえておくのがわかりやすい. 複素数の実数条件・純虚数条件 $$複素数$z={a+{b$に対して (超重要})}$ $[l} 共役複素数 zを用いることで,\ {z={a}+{b}などとおかなくてもzの実部aと虚部bが表現できる.} z={a}+{b}\ と z={a}-{b}\ をaとbの連立方程式とみて解いて導かれる. つまり,\ +よりz+ z=2a,\ -よりz- z=2bi\ から導かれる. なお,\ 実部(real part})をRe}(z),\ 虚部(imaginary part})をIm}(z)と表す. さて,\ より,\ が導かれる. ₀ {実数条件・純虚数条件をzと zのみで表せる}というこの結論は恐ろしく重要で頻繁に利用される. 「zが実数」ときたら瞬時に「z= zだな」と思えるようになってほしい. また,\ 純虚数条件は{z0を忘れやすい}ので注意しよう. [-.8zh] 複素数$z$に対し,\ $w=z²+( z)²$が実数であることを示せ. 複素数$z$に対し,\ $w=z²-( z)²$が純虚数であることを示せ.\ ただし,\ $w0$とする. $ {w=- w\ かつ\ w0\ より,\ 純虚数である.}$} $[l} 実数条件\ w= w\ を示せばよい.\ つまり,\ { wを計算していき,\ wと一致する}ことを示す. wの共役をとった後,\ {α+β}=α+β\ を利用してバーを分割する. 次に,\ {α²}= α\ α=( α)²\ を適用,\ さらに\ { α}=αを適用すればよい. このような基本的な演算を思考なしで自然に行えるまでに慣れることが重要である. 純虚数条件\ w=- w\ を示せばよい.\ つまり,\ { wを計算していき,\ -wと一致する}ことを示す. 最後,\ w0であることも忘れずに確認する. さて,\ 複素数平面の問題では,\ {z={a}+{b}とおいて地道に計算する}という最終手段が常にある. 本問においても別解のようにして示すことができる. ある意味万能だが,\ 計算が面倒になりがちなので,\ あくまで最終手段である. 実は,\ より一般的に{w=z^n+( z)^n\ が実数,\ w=z^n-( z)^n\ が純虚数}が成立する. 2乗程度ならまだしも,\ n乗になるとどちらの方法に分があるかは言うまでもない. 応用性を考え,\ {zのまま処理することに慣れる}べきである. }]$ |} [-.8zh] 複素数$α,\ β$に対し,\ $z=αβ+αβ$が実数であることを示せ. 複素数$α,\ β$に対し,\ $z=αβ-αβ\ (z0)$が純虚数であることを示せ. $ {z=- z\ かつ\ z0より,\ 純虚数である.}$} $[l} 上の問題との共通点に気付けるだろうか. z²の共役をとると\ {z²}=( z)²\ であるから,\ z²と( z)²は共役複素数の関係にある. つまり,\ A=z²とすると,\ w=z²+( z)²=A+ A\ より,\ wは{互いに共役な複素数の和}である. また,\ αβ\ の共役をとると\ {αβ}=αβ\ であるから,\ αβ\ と\ αβ\ は共役複素数の関係にある. よって,\ B=αβ\ とすると,\ z=αβ+αβ=B+ B\ より,\ zは{互いに共役な複素数の和}である. 結局,\ {互いに共役な複素数の和であれば常に実数といえる}わけである. A={a}+{b}\ (a,\ b:実数)とすると,\ A+ A=2a=(実数)\ となるのは先に述べた通りである. 同様に,\ {0でない互いに共役な複素数の差であれば常に純虚数といえる}. A- A=2bi=(純虚数) なお,\ αβ+αβ\ と\ αβ-αβ\ は互いに共役な複素数の和・差というだけでなく,\ 特別な意味をもつ. この式の意味合いは別の項目で述べる. [-.8zh] 複素数$z={x}+{y}$が$1 z+1z4$を満たすとき,\ $z$の存在範囲を図示せよ. [-.8zh] 虚数には大小関係が存在しないことが本問の最大のポイントである. つまり,\ 不等式が示されている時点で${z+1z}$が実数であることが大前提となる. $z+1z={x}+{y}+{1}x}+{y={x}+{y}+x}-{y{x²+y²}=(x+{x}{x²+y²})+(y-{y}{x²+y²})i$ $z+1z\ は実数}であるから y-{y}{x²+y²}=0}$ $よって y=0}またはx²+y²=1}$ $y=0}のとき z+1z=x+1x より 1 x+1×4}$ { }$x<0のとき明らかに不等式を満たさないから,\ x>0である.$ { }よって $x x²+1 4x}$ { }$x²-x+1=(x-12)²+34>0より,\ x x²+1は常に成立する.$ { }また $x²-4x+10 より {2-3 x2+3} (x>0を満たす)$ $x²+y²=1}$のとき { }$z+1z=2x より 1 2×4} よって {12 x2}$ $ ,\ より {求めるzの存在範囲は下図となる.}$} $[l} iと0に大小関係があるならば,\ {i>0,\ i=0,\ i<0 のいずれか1つのみが成立する}はずである. i=0と仮定して両辺にiを掛けるとi²=0だが,\ -1=0となるから矛盾である. i>0と仮定して両辺にiを掛けるとi²>0だが,\ -1>0となるから矛盾である. i<0と仮定して両辺にiを掛けるとi²>0だが,\ -1>0となるから矛盾である. 最後は,\ 負であるiを両辺に掛けたことで不等号の向きが逆転したことに留意してほしい. このように,\ {実数における大小の性質を自然な形で虚数にまで拡張することができない.} 結局,\ 虚数の大小は定義されず,\ 2と2iや{1}+{2}と{1}+{3}の大小関係などは考えないのである. まず,\ 大前提である\ z+1z\ が実数となるためのx,\ yの条件を求める. y(1-{1}{x²+y²})=0\ より,\ y=0\ または\ {1}{x²+y²}=1\ である. 後はそれぞれの場合について不等式を満たすためのx,\ yの条件を考えればよい. y=0のとき,\ 1 x+1×4\ に帰着する.\ x>0を確認したうえで分母を払う. なお,\ x=0とするとy=0よりz=0となってしまう.\ 問題の式に\ 1z\ がある時点でz0である.\ 後はx x²+1\ かつ\ x²+14x\ と考えてこれを満たす実数解xを求めればよい. x x²+1の解はすべての実数なので,\ 結局\ 2-3 x2+3\ が解になる. y=0のときz=xであるから,\ は単純に{zが実数のとき}を考えたことになる. 一方,\ は{zが虚数のとき}を考えている. このとき,\ zは半径1の円周上で実部が\ 12 x2\ を満たす部分に存在する. 結局,\ 2-3 x2+3\ (y=0),\ または\ x²+y²=1(12 x2)\ が求める存在範囲となる.