凸多面体 多面体のうち,\ どの2つの頂点を結んだ線分もその多面体内に含まれるもの.
凸多面体の頂点(Vertex),\ 辺(Edge),\ 面(Face)の数をそれぞれ$V,\ E,\ F$とする.
このとき,\ オイラーの多面体定理(暗記必須)が成立する.
オイラーの多面体定理V-E+F=2
正多面体 以下の3条件を満たす多面体.\ 5種類のみ存在する.
[1]\ \ 凸多面体である
[2]\ \ 各面が合同な正多角形である
[3]\ \ 各頂点に集まる面と辺の数が等しい.
正四面体正六面体 正八面体 正十二面体 正二十面体
面の形 & 正三角形 & 正方形 & 正三角形 &正五角形 & 正三角形
面の数(Face) & 4 & 6 & 8 & 12 & 20
頂点の数(Vertex) & 4 & 8 & 6 & 20 & 12
辺の数(Edge) & 6 & 12 & 12 & 30 & 30
自己双対
正四面体} & 正六面体} & 正八面体} & 正十二面体} & 正二十面体} \\
V-E+F=2には有名なゴロ合わせもあるが,\ 次元に着目して覚える}のが本質的である.
3次元の凸多面体}では,\ (0次元の頂点数)-(1次元の辺数)+(2次元の面数)=2}が成立する.
正多面体であるための条件は,\ [1]と[2]のみではなく[3]も必要であることに注意する.
[3]がないと,\ 正四面体を2つ合体した六面体も完全に対称でないのに正多面体に含まれてしまう.
正十二面体と正二十面体が双対関係にあることの認識があれば,\ 頂点の数を覚える必要はない.
また,\ 辺の数Eも,\ FとVが既知ならば,\ V-E+F=2よりE=30と求められる.正多面体の双対
双対多面体 ある立体の頂点と面を入れ替えた立体各面の重心を新たな頂点とする立体)}
正多面体に関するある種の問題では,\ 正多面体の双対を利用すると簡単になる.
特に,\ 正四面体の自己双対(左)と,\ 正六面体と正八面体の双対(右2つ)が重要である. \\
正多面体が5種類しか存在しないことを示せ. \\
1つの頂点に集まる内角の和が360$°$未満であることを利用}\,]
正多面体の各面が正$n$角形,\ 1つの頂点に集まる面の数が$m$枚であるとする.
正$n$角形の1つの内角は$(n-2)×180°}{n}$であるから
正多面体を構成するには,\ 以下の2条件を満たしている必要がある.
[1]\ \ 1つの頂点を3枚以上の面が共有する}(2面だけでは立体にならない).
[2]\ \ 1つの頂点に集まる内角の和が360°\,未満である}(360°\,以上あると凸の頂点を作れない).
これを踏まえると,\ 正多面体が5種類しか存在し得ないことはほぼ明らかである.
各面が正六角形(1つの内角120°)のとき,\ 3面のみで120°×3=360°\,になってしまう.
よって,\ 正六角形以上の正多角形(内角120°\,以上)の面をもつ正多面体は存在しない(下段右).
正三角形(内角60°)なら,\ 5面までならば1つの頂点に集まる内角の和が360°\,未満になる(上段).
正四角形(内角90°)なら,\ 3面の場合のみ1つの頂点に集まる内角の和が360°\,未満になる(下段左).
正五角形(内角108°)なら,\,3面の場合のみ1つの頂点に集まる内角の和が360°\,未満になる(下段中).
結局,\ 条件[1],\ [2]を満たすパターンは5つに限られるわけである.
これで十分なのだが,\ 解答で示したのはよく知られたより数式的な方法である.
n角形は,\ 右図のようにn-2個の三角形に分割できる.
よって,\ n角形の内角の和は(n-2)×180°\,である.
特に,\ 正n角形の1つの内角の大きさは\,(n-2)×180°}{n}\,である(中学数学). \\[-7zh]
条件[2]を立式して整理すると,\ nm-2m-2n<0となる.
これは,\ axy+bx+cy+d<0型の不定不等式}(整数問題)である.
この型は,\ 無理矢理(文字式)×(文字式)(整数)}の形に変形するとよいのであった.
オイラーの多面体定理を利用}\,]
正多面体の頂点が$V$個,\ 辺が$E$本,\ 面が$F$枚であるとする.
また,\ 各面が正$n$角形,\ 1つの頂点に集まる面の数が$m$枚であるとする.
$F$枚の面は$n$個ずつ頂点をもつが,\ 1個の頂点を$m$枚の面が共有するから $V=Fn}{m$
$F$枚の面は$n$本ずつ辺をもつが,\ 1本の辺を2枚の面が共有するから $E=Fn}{2$
オイラーの多面体定理$V-E+F=2$}\ より $Fn}{m}-Fn}{2}+F=2
2つ目の方法は,\ VとF,\ EとFの関係式をオイラーの多面体定理に組み込む}ものである.
結局,\ 1つ目の方法と同じ不定不等式に帰着する.
1つ目の方法より高度だが,\ 汎用性の高い方法である.
正二十面体の各辺の中点を通る平面で,\ すべてのかどを切り取ってできる多面体$A$の面の数$f$,\ 辺の数$e$,\ 頂点の数$v$を求めよ. 1個の頂点を1枚の正五角形と2枚の正六角形が共有する凸多面体(サッカーボール型多面体)\,Bがある.\ この凸多面体の面は正五角形と正六角形がそれぞれ何枚あるか.
(1)\ \ 正二十面体の面の数は20,\ 辺の数は30,\ 頂点の数は12である.
正二十面体は,\ 1個の頂点を5枚の正三角形が共有している.
よって,\ 1つのかどを切り取ると正五角形の面が1枚増える.}
正二十面体の頂点は12個あるから $f}=20+12}=32}$
多面体$A$のすべての辺は,\ 1枚の正五角形の面の1本の辺である.}
正五角形の面は12枚あるから $e}=12×5}=60}$
オイラーの多面体定理}より $v-60+32=2}$ ∴\ \ v=30}$
多面体Aがどのような立体かを直接的にイメージしたり図示したりすることは難しい.
正二十面体の見取り図を書き,\ かどを切り取ったときの面,\ 辺,\ 頂点の数の変化を考える}ことになる.
正二十面体の見取り図は一見複雑だが,\ 対称性があるのでポイントさえおさえれば図示は難しくない.
一例を挙げると,\ 以下のようにして図示することができる.
[1]\ \ 半径1と半径1.5の同心円の円周をそれぞれ6等分した点を取る.
[2]\ \ 内円に内接する逆正三角形,\ 外円に内接する正六角形を書く.
[3]\ \ 内円に内接する逆正三角形の頂点と外円の一番近い3つの頂点を結ぶ.
[4]\ \ 実線の図を上下逆にした図を点線で書く. \\
まず,\ 正二十面体の面,\ 辺,\ 頂点の数を確認する.
暗記や見取り図を書いて数えるのもよいが,\ 以下の計算で求められるようにしておくと応用が利く.
1本の辺を2枚の面が共有している}から 辺の数は20・3・12=30
1個の頂点を5枚の面が共有している}から 頂点の数は20・3・15=12
さて,\ 見取り図を用いて試しに3つのかどを切り取るとどうなるかを考える.
新たに正五角形(赤色)の面が3枚でき,\ 元の面は水色の部分のみ残る}ことがわかる.
結局,\ f,\ e,\ vを求める上で重要なのは以下の2点である.
(.15zw}i.15zw})}\ \ 1つのかどを切り取るたびに正五角形の面が1枚増える.}
(ii)}\ \ 元の正二十面体の辺と頂点は消え,\ 新たに増えた正五角形の辺と頂点がAの辺と頂点になる.}
f,\ e,\ vのうち2つが求まれば,\ オイラーの多面体定理によって残り1つが直ちに求まる.
解答ではvをオイラーの多面体定理で求めたが,\ (ii)}を元に直接求めてもよい.
正五角形の面が12枚あり,\ 1個の頂点を2枚の正五角形が共有しているから v}=5・12・12=30}
正十二面体の見取り図の書き方も紹介しておく.\ 正二十面体と似たようなものである.
[1]\ \ 半径1と半径2の同心円の円周をそれぞれ10等分した点を取る.
[2]\ \ 内円に内接する正五角形,\ 外円に内接する正十角形を書く.
[3]\ \ 内円に内接する正五角形の頂点と外円の一番近い頂点を結ぶ.
[4]\ \ 実線の図と上下逆にした図を点線で書く. \\
(2)\ \ 多面体Bに頂点が$V$個,\ 辺が$E$本,\ 面が$F$枚あるとする.
また,\ 正五角形と正六角形の面の数をそれぞれ$a,\ b$とする.
1個の頂点を3枚の面が共有しているから $V=5a+6b}{3$
1本の辺を2枚の面が共有しているから $E=5a+6b}{2$
$F=a+b}$
オイラーの多面体定理}より $5a+6b}{3}-5a+6b}{2}+(a+b)=2}$ ∴\ \ a=12$
ここで,\ 頂点の数に着目すると $5a=6b}{2$ ∴\ \ b=20$ 正五角形12枚,\ 正六角形20枚}$} \\
V,\ E,\ Fと面の数a,\ bを関係を立式し,\ オイラーの多面体定理に組み込む.}
ただし,\ a,\ bの2つの変数があるので,\ これだけではbが求まらない.
面が1種類でない場合,\ 頂点の数に着目すると異なる面の枚数の間にある関係式を導ける.}
多面体Bの1個の頂点を1枚の正五角形と2枚の正六角形が共有している.
よって,\ 正五角形の面の頂点の数と,\ 正六角形の面の頂点の数の\,12\,は等しい}はずである.
各辺の中点を通る平面で正二十面体のすべてのかどを切り取って多面体Aができた.
各辺の3等分点を通る平面で正二十面体のすべてのかどを切り取ると多面体Bができる.