1のn乗根の性質

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数IIで学習した1の虚数立方根${ω}$の性質を復習する.  1の虚数立方根$ω$は$x³=1,\ つまりx³-1=(x-1)(x²+x+1)=0$の虚数解である.  さて,\ 以上の性質を複素数平面の観点から見直すために,\ $z³=1$の解を極形式で表す.  $[r³]{3θ}={0} より r=1,\ 3θ=2kπ\ (k:整数)$  $0θ<2π\ とすると\ k=0,\ 1,\ 2\ である.$  この3点は,\ 下図のように複素数平面上の単位円を3等分する.  数IIの時点では3つの解が${1,\ ω,\ ω²}$となることが偶然に思えた.  しかし今,\ 複素数平面の世界に立って眺めるとそれは必然であったことがわかる.  さて,\ 以上の思考から$n$乗根においても類似の性質があると予想される.  以下では,\ 例として1の5乗根の性質を考える.  1の5乗根は${z⁵=1$の解であるから,\ 複素数平面上の単位円を5等分する. \ {α={1}{α}$である.  さらに,\ 実軸に関する対称性を考慮すると,\ 次の性質が導かれる.  また,\ $z⁵-1=(z-1)(z⁴+z³+z²+z+1)=0$であるから,\ 次の性質が成立する. ${α⁵=1,α⁴+α³+α²+α+1=0$} $[l} 一般に,\ {x^n-1=(x-1)(x^{n-1}+x^{n-2}++x²+x+1)}\ と因数分解される(要暗記). x=1のときx^n-1=0なので,\ 因数定理よりx^n-1がx-1を因数にもつことは明らかである. 別の見方もある.\ 1+x+x²++x^{n-2}+x^{n-1}\ は初項1,\ 公比x,\ 項数nの等比数列の和である. よって,\ x1のとき,\ 1+x+x²++x^{n-2}+x^{n-1}={x^n-1}{x-1}\ である. 以下では,\ の解のうち第1象限にあるものを$α$とする. %$α={25π}\ のとき,\ 次の式の値を求めよ.$ $r⁵({5θ})={0$} { }両辺の絶対値と偏角を比較すると $r⁵=1,5θ=2kπ\ (k:整数)}$ $[l} {両辺にz-1を掛けて1のn乗根に帰着させる}のが本質的である. 先に述べた1のn乗根に関する性質の理解があれば自然な解法である. 1の虚数立方根ωの項目では,\ 「x²+x+1を特別な式と考えよ」と述べた. 同様に,\ z⁴+z³+z²+z+1\ なども特別な式と考えなければならないのである. 因数定理「z=αを解にもつ(z-α)を因数にもつ」を用いてz⁵-1を因数分解形で表す. 普通の因数分解の結果と比較して得られた等式にz=1を代入すると目的の式の値が得られる. 一見技巧的だが,\ 数II}で同様の問題を演習していればすんなりと受け入れられる. 別解は\ α⁵=1,\ α⁴+α³+α²+α+1=0\ を利用する直接的な解法である. {α⁵=1が使えるような組合せで展開}していくと後が楽になる. 通分して計算してもよいがかなり大変である. 解答のように組み合わせ,\ {分母分子にαやα²を掛けてα⁵を作り出す}と楽になる. 技巧的だが,\ {α⁴={1}{α},\ α³={1}{α²}\ を用いて次数を下げた}と考えるとわかりやすい. αを代入してド・モアブルの定理を適用後,\ iで整理する. 後は,\ 複素数の相等条件「a}+{b}=0\ (a,\ b:実数)a=b=0}」を適用すればよい. {cosとsinの対等な式を極形式にしてまとめて扱う}という発想をもつようにしよう. の両辺の絶対値をとり,\ αβ}=α}β}\ によって分割する. 後は各絶対値をsinで表すと自動的に値が求まる. 一旦2乗して展開し,\ 整理していく.\ 当然,\ α}²=1である. {4sin²{π}{5=2sin{π}{5\ だがsin{π}{5}>0\ より絶対値がはずれ,\ ようやく1-α}がsinで表される. 本問は図形的意味も重要である.\ 図形的には,\ 1-α}は{1とαの距離(線分の長さ)}を表す. よって,\ 第1式は左図の{4本の線分の長さの積が5}という図形的意味をもつ. 一般に,\ {円の弦の長さは中心から垂線を下ろして三角比を用いると素早く簡潔に求められる.} O},\ 1,\ αは頂角25πの二等辺三角形なので,\ 底辺は {α=2π}{5\ と\ α⁴+α³+α²+α+1=0\ の解の実部の比較}が根幹である. よって,\ いかにしてα⁴+α³+α²+α+1=0\ を解くかが問題になる. この方程式が{相反方程式}であることに気付けばやるべきことは決まっている. 途中,\ α²+{1}{α²}=(α+{1}{α})²-2α{1}{α}={(α+{1}{α})²-2}\ と変形した. また,\ α={1}{α}\ を考慮すると\ α+{1}{α}=t\ なので,\ 4次の相反方程式がtの2次方程式に帰着する. 相反方程式を完全に解くなら\ α+{1}{α}={-15}{2},\ つまり\ α²-{-15}{2}α+1=0\ を解く. しかし,\ cos{2π}{5}\ を求めるだけの今は必要ない.\ tが結局は2cos25π\ だからである. 元々,\ 求めるべきcos{2π}{5}はαの実部である. 一般に,\ {複素数z={a}+{b}の実部は\ Re(z)=a={z+ z}{2\ と表されるのであった. 結局,\ α+α,\ つまりα+{1}{α}\ の値さえ求めればよかったわけである.