
【素粒子】
物質を構成したり、力を媒介したりする基本的な粒子の総称。主に3つに分類される。
従来の分類
・ハドロン:強い力で作用し合う粒子の総称(陽子・中性子など)。
・レプトン:強い力のはたらかない粒子の総称(電子・ニュートリノなど)。
・ゲージ粒子:力を媒介する粒子の総称(光子・グルーオンなど)。
※現在では、ハドロンはクォークからなる複合粒子であり、クォーク自体が素粒子とされる。
【反粒子】
ある粒子と質量が等しく、電気量などの符号が反対の粒子。すべての素粒子に反粒子が対応する。
例:電子e⁻と陽電子e⁺は、互いに反粒子の関係にある。
【反物質】
反粒子からなる物質。
【対消滅】
粒子と反粒子が消滅し、光子などに変わる現象。
e⁻ + e⁺ → 2γ
【対生成】
エネルギーから粒子と反粒子の対が生成される現象。
γ → e⁻ + e⁺
※光子1個からの対生成には原子核などの関与が必要である。
【クォーク模型】
ハドロンがクォークから構成されるとする模型。
【クォーク】
ハドロンを構成する基本粒子。
クォークの分類
電気量 第1世代 第2世代 第3世代
+⅔e アップ(u) チャーム(c) トップ(t)
-⅓e ダウン(d) ストレンジ(s) ボトム(b)
【ハドロンの分類】
バリオン(重粒子):クォーク3個からなり、qqqで表す。
例:陽子(uud)、中性子(udd)
メソン(中間子):クォークと反クォークの対からなり、q q̄で表す。
例:π⁺中間子(u d̄)、π⁻中間子(d ū)
1935年、湯川秀樹は原子核内の陽子・中性子を結びつける核力を媒介する中間子の存在を予言した。
1947年に荷電π中間子(π⁺、π⁻)が発見され、湯川は1949年に日本人初のノーベル物理学賞を受賞した。
【レプトン(軽粒子)の分類】
電気量 第1世代 第2世代 第3世代
-e 電子(e⁻) ミュー粒子(μ⁻) タウ粒子(τ⁻)
0 電子ニュートリノ(νₑ) ミューニュートリノ(νμ) タウニュートリノ(ντ)
【自然界に存在する4つの基本的な力】
力 強さ 到達距離 力を媒介する粒子
強い力(強い相互作用) 1 約10⁻¹⁵ m グルーオン
電磁気力 10⁻² 無限大 フォトン(光子)
弱い力(弱い相互作用) 10⁻⁵ 約10⁻¹⁷ m ウィークボソン(W⁺、W⁻、Z⁰)
重力(万有引力) 10⁻³⁸ 無限大 グラビトン(重力子・未発見)
強い力:核力の起源となり、クォークを結びつけてハドロンを構成する力。
弱い力:クォークやレプトンに作用し、原子核のβ崩壊などを引き起こす力。
※強さと到達距離は目安であり、強い力の到達距離は核力の場合を示す。
現在の素粒子物理学の標準模型では、素粒子は6種類のクォーク、6種類のレプトン、力を媒介するグルーオン、フォトン、W粒子、Z粒子、これらに加えてヒッグス粒子の計17種類に分類される。
ヒッグス粒子は、素粒子に質量を与えるヒッグス場に対応する粒子であり、2012年に発見された。
【力の統一】
異なる基本的な力を共通の理論で説明すること。
電磁気力と弱い力を統一的に説明する電弱統一理論はすでに確立されている。
電弱統一理論と強い力の理論を組み合わせたものが現在の標準模型である。
さらに、3つの力を統一する大統一理論、重力を含む4つの力すべてを統一する超大統一理論(万物の理論)の確立に向けて研究が進められている。
【問題:クォークの電気量と電子・陽電子の対生成・対消滅】
陽子はアップクォークuが2個とダウンクォークdが1個、中性子はuが1個とdが2個からなる。陽子の電気量は+e、中性子の電気量は0である。
(1) アップクォークuとダウンクォークdの電気量をそれぞれ求めよ。
次に、電子と陽電子の対生成・対消滅について考える。
電子と陽電子の質量をともにmとし、真空中の光速をc、プランク定数をhとする。
電子と陽電子の静止エネルギーはともにmc²=0.511 MeVである。
また、hc=1.24×10⁻⁶ eV・mとする。
まず、高エネルギーの光子1個が原子核の近くを通過し、電子と陽電子の対を生成する現象を考える。原子核は十分重く、(2)、(3)ではその反跳エネルギーを無視する。
(2) 電子・陽電子の対生成が起こるために必要な光子のエネルギーの最小値EₘᵢₙをMeV単位で求めよ。
(3) 入射光子のエネルギーが3.00 MeVであり、生成された電子と陽電子の運動エネルギーが等しいとき、それぞれの運動エネルギーKを求めよ。
(4) (2)で求めた最小エネルギーに対応する光子の波長λを求めよ。
次に、静止中の電子と陽電子が対消滅し、同じ振動数の光子2個が放出される現象を考える。
(5) 放出される光子1個のエネルギーEをMeV単位で求めよ。
(6) 放出される2個の光子の進行方向のなす角を求めよ。
(7) 放出される光子の波長λを求めよ。
(8) 静止している電子と陽電子の対消滅において、光子が1個だけ放出されることが不可能である理由を運動量保存則の観点から説明せよ。
【解答】
(1) アップクォークu、ダウンクォークdの電気量をそれぞれx、yとする。
陽子(uud)の電気量:2x+y=e
中性子(udd)の電気量:x+2y=0
これを解くと、
x=+⅔e、y=-⅓e
(2) エネルギー保存則より、光子のエネルギーの最小値は、電子と陽電子の静止エネルギーの和である。
Eₘᵢₙ=2mc²
=2×0.511
=1.022
≒1.02 MeV
(3) エネルギー保存則より、生成された電子と陽電子の運動エネルギーの和は、
3.00-2mc²
=3.00-2×0.511
=1.978 MeV
電子と陽電子の運動エネルギーは等しいから、
K=1.978/2=0.989 MeV
(4) 光子のエネルギーE=hc/λより、
λ=hc/E
=(1.24×10⁻⁶)/(1.022×10⁶)
≒1.21×10⁻¹² m
(5) エネルギー保存則より、電子と陽電子の静止エネルギーの和が光子2個のエネルギーになる。
放出される2個の光子のエネルギーは等しいから、光子1個のエネルギーは、
E=2mc²/2=mc²=0.511 MeV
(6) 電子と陽電子はともに静止しているから、対消滅前の運動量の和は0である。
運動量保存則より、対消滅後の2個の光子の運動量の和も0となる。
運動量は向きをもつベクトル量なので、2個の光子の運動量は大きさが等しく逆向きとなる。
したがって、進行方向のなす角は、
θ=180°
(7) 光子のエネルギーE=hc/λより、
λ=hc/E
=(1.24×10⁻⁶)/(0.511×10⁶)
≒2.43×10⁻¹² m
(8) 静止した電子と陽電子の運動量の和は0である。
運動量保存則より、対消滅後の光子の運動量の和も0でなければならない。
しかし、光子の運動量の大きさは、
p=h/λ=E/c>0
であり、光子1個では運動量を0にできない。
※p=mvは光速に比べて十分小さい速さの場合に成り立つ非相対論的な公式であり、光子には使えない。
