放射線・放射能と放射性崩壊(α崩壊・β崩壊・γ線放出)

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放射線・放射能と放射性崩壊 【放射線・放射能の基本事項】 放射線 高いエネルギーをもち、物質を電離する能力をもつ粒子線や電磁波。 放射能 不安定な原子核が自発的に放射線を放出する性質(能力)。 放射性物質 放射能をもつ物質。 放射性同位体(ラジオアイソトープ) 放射能をもつ同位体。 【放射線の種類と性質】 電離作用 原子や分子から電子をたたき出し、陽イオンと電子を生じさせる作用。 電離作用が強いほど物質中でエネルギーを失いやすく、透過力は小さくなる。 α線 本体:ヘリウム原子核(⁴₂He) 電荷:+2e 電離作用:大 透過力:小 β線 本体:電子(e⁻) 電荷:−e 電離作用:中 透過力:中 γ線 本体:電磁波 電荷:0 電離作用:小 透過力:大 中性子線 本体:中性子 電荷:0 電離作用:小 透過力:大 【電場内・磁場内の放射線の分離】 電場内では、荷電粒子は電場から静電気力(大きさ F=|q|E)を受ける。 よって、正電荷をもつα線は負極側、負電荷をもつβ線は正極側に曲がる。 磁場内では、荷電粒子は進行方向と磁場の両方に垂直なローレンツ力を受ける。 進行方向と磁場が垂直なとき、その大きさは F=|q|vB である。 よって、磁場に垂直に入射したα線とβ線は、磁力線に垂直な平面内で曲がる。 γ線は電荷をもたない光子であるため、電場でも磁場でも曲がらず直進する。 【放射性崩壊】 不安定な原子核が自発的に放射線を放出し、別の原子核や低いエネルギー状態に変わる現象。 放射性崩壊は確率的に起こり、個々の原子核がいつ崩壊するかは予測できない。 ■ α崩壊 原子核からα粒子(⁴₂He原子核)がα線として放出される崩壊。 質量数が4減少し、原子番号が2減少する。 ᴬ_ZX → ᴬ⁻⁴_(Z−2)Y + ⁴₂He ■ β崩壊 原子核内の中性子1個が陽子1個に変化し、電子を放出する崩壊。 質量数は変化せず、原子番号が1増加する。 ᴬ_ZX → ᴬ_(Z+1)Y + ⁰₋₁e(e⁻) ■ γ線放出 励起状態にある原子核がγ線を放出し、より低いエネルギー状態に移る現象。 質量数も原子番号も変化せず、原子核のエネルギーだけが減少する。 ■ 崩壊系列 放射性崩壊によって生じた原子核も不安定な場合、さらに崩壊を繰り返す。 このように、不安定な原子核が次々と別の原子核に変化していく過程を崩壊系列という。 例えば、ウラン²³⁸₉₂Uはα崩壊とβ崩壊を繰り返し、最終的に安定な鉛²⁰⁶₈₂Pbとなる。 α崩壊やβ崩壊で生じる原子核は励起状態にあることが多く、γ線放出でより低いエネルギー状態に移る。 γ線放出も放射性崩壊の一種として扱われるが、原子番号や質量数は変化しない。 【放射線の人体への影響】 人体が放射線を受けることを被曝(ひばく)という(爆弾の攻撃によるのは「被爆」)。 外部被曝 体外にある放射性物質などから放射線を受けること。 内部被曝 呼吸や飲食を通して体内に取り込まれた放射性物質から放射線を受けること。 【放射線の測定単位】 ■ 放射能の強さ 単位:Bq(ベクレル) 1秒間に崩壊する原子核の数。 ■ 吸収線量 単位:Gy(グレイ) 物質1 kgあたりに吸収された放射線のエネルギー。 1 Gy=1 J/kg ■ 等価線量 単位:Sv(シーベルト) 吸収線量に放射線の種類による人体への影響の違いを考慮した量。 ■ 実効線量 単位:Sv(シーベルト) 等価線量に臓器・組織ごとの放射線に対する感受性の違いも考慮した量。 【放射線量の参考値】 等価線量では、β線、γ線、X線の1 Gyは1 Sv、α線の1 Gyは20 Svに相当する。 実効線量の参考値 胸部X線撮影:約0.06 mSv 1年間の自然放射線(日本平均):約2.1 mSv X線CT検査:約2.0~13 mSv 放射線業務従事者の線量限度:1年間で50 mSv、5年間で100 mSv 一度の全身被曝で半数が死亡:約3000~5000 mSv(X線またはγ線) 【問題】 (1) ²³⁸₉₂Uは、放射性崩壊を繰り返して原子番号82のPbになる。 このときの鉛の質量数を、206、207、208、209の中から選べ。 また、α崩壊とβ崩壊は、それぞれ何回起こるか。 (2) 質量0.20 kgの物質が放射線から4.0×10⁻³ Jのエネルギーを吸収した。 吸収線量を単位Gyで求めよ。また、この放射線がγ線の場合とα線の場合の等価線量をそれぞれ求めよ。 放射線加重係数はγ線で1、α線で20とする。 (3) ある放射性物質はα崩壊のみを起こし、1回の崩壊でα粒子を1個放出する。 放出されたα粒子の80%を金属板で受け止めたところ、金属板と接地間に接続した電流計に6.4×10⁻¹¹ Aの電流が流れた。 この放射性物質の放射能を単位Bqで求めよ。 電気素量は e=1.6×10⁻¹⁹ C とする。 【解答・解説】 (1) α崩壊では質量数が4減少し、β崩壊では質量数が変化しない。 よって、質量数を4で割った余りは変化しないから、 鉛の質量数:206 α崩壊の回数をa、β崩壊の回数をbとする。 α崩壊では質量数が4、原子番号が2減少し、β崩壊では原子番号が1増加する。 質量数の変化より、 238−4a=206 ∴ a=8 α崩壊:8回 原子番号の変化より、 92−2a+b=82 ∴ b=6 β崩壊:6回 〔補足〕 先に、β崩壊の影響を受けない質量数の変化に着目する。 質量数はα崩壊によって4ずつ減少するため、238から4の倍数だけ減少した値となる。 選択肢の中でこの条件を満たすのは206のみである。 238から4を8回引くと206になるから、α崩壊は8回起こっている。 このとき、原子番号は2×8=16減少し、92−16=76となる。 Pbの原子番号は82であるから、原子番号を1ずつ増加させるβ崩壊は82−76=6回起こっている。 (2) 吸収線量=(4.0×10⁻³ J)/(0.20 kg) =2.0×10⁻² Gy 等価線量は、吸収線量に放射線加重係数を掛けたものである。 γ線の場合 (2.0×10⁻² Gy)×1=2.0×10⁻² Sv α線の場合 (2.0×10⁻² Gy)×20=4.0×10⁻¹ Sv (3) 放射能をx Bqとすると、1秒間に放出されるα粒子はx個である。 α粒子1個の電気量は+2eであり、その80%が金属板に到達するから、 電流は1秒間に流れる電気量であることより、 I=2e×0.80x ∴ x=I/(2e×0.80) =(6.4×10⁻¹¹ C/s)/{2×(1.6×10⁻¹⁹ C)×0.80} =2.5×10⁸ Bq 〔補足〕 1 Bqは、1秒間に1個の原子核が崩壊する放射能を表す。 本問では1回の崩壊でα粒子を1個放出するため、1秒間の放出数はx個となる。 電流Iは単位時間あたりに流れる電気量であり、 I=Q/t(A=C/s) で表される。 金属板に到達するα粒子は1秒間に0.80x個で、金属板に与える電気量は1秒間に2e×0.80xである。
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高校物理 原子物理
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