
光の粒子性と光電効果
光量子仮説
19世紀の電磁気学により, 光が電磁波の一種であることがわかり, 光の波動性が確立された.
しかしその後, 光電効果など, 波動説では説明できない現象が知られるようになった.
アインシュタインは, 光は粒子としての性質をもち, 光量子(光子)の集まりとして振る舞う
という光量子仮説を提唱し, 光電効果の説明に成功した(1905年).
光子のエネルギーE[J] 振動数ν[Hz], 波長λ[m]の光子1個がもつエネルギーは
E=hν=(hc)/(λ) (c[m/s]:真空中の光速)
比例定数h≈6.6×10^-34 [J· s]を
プランク定数という.
光は, 波動性と粒子性の両方をあわせもつ. これを波動・粒子の二重性という.
[
1900年, プランクは黒体放射を説明するため, 振動数νの振動子がやり取りするエネルギーは
hνの整数倍の値しかとれないという仮説を提唱した.
ある単位の整数倍の値のみをとり得る量について, その最小単位を量子という.
原子物理では, 光の振動数をνで表す. 波動分野のv=fλは, 原子物理ではc=νλとなる.
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光電効果
金属に光を当てると, 金属表面から電子が放出される現象を光電効果といい,
光電効果によって放出された電子を光電子という.
光電効果の特徴
① 光電子を放出させられる光の振動数には最小値ν_0[Hz]があり, これを限界振動数,
これに対応する波長λ_0=(c)/(ν_0)[m]を限界波長という. ν_0やλ_0は金属の種類で決まる.
② 光の振動数が限界振動数ν_0以上になると, 弱い光でも光電子はすぐに放出される.
③ 光電子の運動エネルギーの最大値K_0[J]は, 光の振動数が大きいほど大きい.
④ 振動数一定で光を強くすると, 放出される光電子の数は増えるが, K_0は変化しない.
光の波動説では光電効果を説明できない
光が波動ならば, 光の強さは振幅の2乗に比例するため,
光が強いほど金属に与えるエネルギーも大きくなる.
すると, 振動数νが小さくても十分強い光ならば電子が放出されると考えられ,
限界振動数の存在を説明できない.
また, 光を強くすれば放出される光電子のエネルギーも大きくなると考えられ,
運動エネルギーの最大値K_0が光の強さによらず, 振動数νで決まることも説明できない.
I
光量子仮説による光電効果の説明
金属内の電子を金属の外へ取り出すのに必要な最小のエネルギーを仕事関数W[J]といい,
その値は金属の種類によって決まる.
光量子仮説では, 光子1個がもつエネルギーhνが1個の電子に受け渡されると考える.
このうち, 金属の外へ出るために必要なエネルギーが最小のWで済む電子が,
最大の運動エネルギーK_0をもって放出される.
よって, エネルギー保存則より, 光電方程式は K_0=hν-W
限界振動数ν_0ではK_0=0であるから W=hν_0 が成り立つ.
hν>W (ν>ν_0) → 光が弱くても光電子が放出される.
hν<W (ν<ν_0) → 光が強くても光電子は放出されない.
光電効果の実験
真空中で金属板Kに単色光を照射し, 向かい側に置いた電極Aとの間に電圧を加えて,
放出された光電子の運動を調べる.
金属板Kから放出された光電子が電極Aに到達すると流れる電流を光電流という.
I
[1] 電極Aを金属板Kより高電位にすると, 負の電荷をもつ光電子はAに引き寄せられる.
Aの電位が高くなるほど, より多くの光電子がAに到達し, 光電流は増加する.
やがて, 放出された光電子のほぼすべてがAに到達するようになると, それ以上
電位を高くしても光電流は増加しなくなる. このときの光電流を飽和電流という.
[2] 電極Aを金属板Kより低電位にすると, 光電子はAからの反発力を受けて減速する.
Aの電位が低くなるほど, Aに到達できる光電子は少なくなり, 光電流は減少する.
やがて, 最大の運動エネルギーK_0をもつ光電子さえAに到達できなくなり,
光電流が0となる. このときの電圧(電位差)の大きさを阻止電圧V_0[V]という.
最大の運動エネルギーK_0をもつ光電子が阻止電圧V_0によってちょうど停止するとき,
光電子が電場に逆らって進む間に失うエネルギーはeV_0であるから K_0=eV_0
よって, 阻止電圧V_0を測定することで, 光電子の最大運動エネルギーK_0[J]がわかる.
[
光電効果の実験は難しくはないが, 電子が負電荷をもつため, 電位と電子の運動の関係がややこしい.
陰極Kはアースされているため, その電位は常に0である.
陽極Aの電位を変えると,陰極Kから出た光電子のうちAに到達する個数が変化し,光電流が変化する.
[1] 光の振動数が同じならば, 単位時間あたりに放出される光電子の個数は光の強さに比例する.
よって, 飽和電流も光の強さに比例する.
[2] I=0となっても, 陰極Kで光電効果が起こらなくなったわけではなく,
放出された光電子が陽極Aに到達できなくなっただけである.
阻止電圧V_0は,最大運動エネルギーK_0の電子がちょうど停止する電圧なので,K_0=eV_0である.
一方, 光電方程式K_0=hν-WよりeV_0=hν-W, すなわちV_0=(h)/(e)ν-(W)/(e)である.
よって, 阻止電圧V_0は光の振動数νが大きいほど大きくなり, 光の強さには依存しない.
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電子ボルト[eV]
1個の電子が1Vの電位差で加速されたときに得るエネルギー.
1eV=電気素量(1.60×10^-19C)×1V=1.60×10^-19J=e[J]
原子や電子に関するエネルギーは, J単位では非常に小さな値になるため,
原子物理ではeV単位が用いられることが多い.
I
真空中で金属板Kに単色光を照射し, 金属表面から放出される光電子について調べる.
金属の仕事関数をW, プランク定数をh, 電気素量をe, 光速をcとする.
放出された光電子の最大運動エネルギーをK_max, 阻止電圧をV_0とする.
ただし, 金属板Kに入射した光子1個につき1個の光電子が放出されるものとする.
(1) 振動数νの単色光を照射したとき, 光電方程式をh, ν, W, K_maxを用いて表せ.
また, K_maxをe, V_0を用いて表せ.
ある金属に波長λ_1の単色光を照射したところ阻止電圧はV_1であり,
波長λ_2の単色光を照射したところ阻止電圧はV_2であった.
(2) プランク定数hをc, e, λ_1, λ_2, V_1, V_2を用いて表せ.
λ_1=5.0×10^-7m, λ_2=4.0×10^-7m,
V_1=0.10V, V_2=0.70V,
c=3.0×10^8m/s, e=1.6×10^-19Cとする.
(3) プランク定数h [J・s]を求めよ. また, この金属の仕事関数W [eV]を求めよ.
さらに, この金属の限界振動数ν_0と限界波長λ_0を求めよ.
(4) 波長λ_2の光を金属板Kに照射するとき, 光子1個のエネルギーEを求めよ.
また, この光の単位時間あたりのエネルギーが2.4×10^-3J/sであるとき,
1秒間に金属板Kに入射する光子の個数Nを求めよ.
さらに, 陽極Aの電位が十分高く飽和電流が流れているとき,その大きさI_sを求めよ.
(5) 単色光の振動数νを変化させながら阻止電圧V_0を測定したところ,
V_0とνの間には直線関係が得られた.
横軸をν, 縦軸をV_0とするグラフについて, 直線の傾きと横軸との交点はそれぞれ
何を表すか. また, グラフからプランク定数hと仕事関数Wを求める方法を示せ.
(6) 図の実線は, ある振動数の単色光を照射したときの電圧Vと光電流Iの関係である.
次の各場合のI-Vグラフの概形を図に書き加えよ.
(i) 光の振動数を変えずに, 単位時間あたりに入射する光子の個数を増やした場合.
(ii) 単位時間あたりに入射する光子の個数を変えずに, 光の振動数を大きくした場合.
(iii) 光の振動数と単位時間あたりに放出される光電子の個数を変えずに,
(iii) 仕事関数の大きな金属にした場合.
I
(1) 光電方程式は K_max=hν-W
阻止電圧V_0で最大運動エネルギーをもつ電子がちょうど停止するから K_max=eV_0
[
電気量qの荷電粒子が電位差Δ Vだけ移動するとき, 電気的な位置エネルギーの変化は Δ U=qΔ V
阻止電圧V_0では,電子(q=-e)が陰極からV_0だけ低電位の陽極へ進むから,Δ U=eV_0だけ増加する.
その分運動エネルギーが減少し, 最大運動エネルギーをもつ電子がちょうど停止するとき K_max=eV_0
]
(2) 波長λ_1, λ_2の光について, それぞれ光電方程式を立てると
eV_1=(hc)/(λ_1)-W, eV_2=(hc)/(λ_2)-W
2式の差をとってWを消去すると e(V_2-V_1)=hc((1)/(λ_2)-(1)/(λ_1))
よって h=(e(V_2-V_1))/(c((1)/(λ_2)-(1)/(λ_1)))
=(eλ_1λ_2(V_2-V_1))/(c(λ_1-λ_2))
(3) (2)より h=(1.6×10^-19)(5.0×10^-7)(4.0×10^-7)(0.70-0.10)(3.0×10^8)(5.0×10^-7-4.0×10^-7)
h=6.4×10^-34J· s
波長λ_1のときの光電方程式より
W=(hc)/(λ_1)-eV_1=(6.4×10^-34)(3.0×10^8)5.0×10^-7-(1.6×10^-19)(0.10)
W=3.68×10^-19J=3.68×10^-191.6×10^-19=2.3eV
限界振動数ν_0ではK_max=0であるから W=hν_0
ν_0=(W)/(h)=3.68×10^-19J6.4×10^-34J・s=5.75×10^14/s≈5.8×10^14Hz
λ_0=(c)/(ν_0)=3.0×10^8m/s5.75×10^14/s≈5.2×10^-7m
[
結局, 光電効果における重要公式は, K_max=hν-W, K_max=eV_0, W=hν_0 の3つである.
K_max:光電子の最大運動エネルギー, h:プランク定数, ν:光の振動数, W:仕事関数,
e:電気素量, V_0:阻止電圧, ν_0:限界振動数
1[eV]=e[J]=1.60×10^-19[J]であるから, [eV]→[J]はe倍, [J]→[eV]は1/e倍となる.
]
(4) 光子1個のエネルギー E=(hc)/(λ_2)=(6.4×10^-34)(3.0×10^8)4.0×10^-7=4.8×10^-19J
1秒間に入射する光子の個数 N=2.4×10^-3J/s4.8×10^-19J=5.0×10^15個/s
光子1個につき1個の光電子が放出されるから, 1秒間にN個の光電子が放出される.
飽和電流では放出された光電子がすべて陽極Aに到達するから
I_s=eN=(1.6×10^-19)(5.0×10^15)=8.0×10^-4A=0.80mA
[
電流とは, 単位時間あたりにある断面を通過する電気量であり, その大きさはI=(Q)/(t)で表される.
1秒間にN個の光電子が陽極Aに到達するとき, 1秒間に運ばれる電気量の大きさはQ=eNである.
よって, 飽和電流はI_s=(Q)/(1)=eNとなる.
]
I
(5) K_max=eV_0とK_max=hν-Wより V_0=(h)/(e)ν-(W)/(e)
よって, V_0-νグラフの傾きはh/eを表す.
横軸との交点ではV_0=0であるから,
K_max=eV_0=0となる.
光電子がちょうど放出される振動数であるから,
その振動数は限界振動数ν_0=W/hを表す.
プランク定数hと仕事関数Wを求める方法
グラフの傾きaを読み取ると h=ea
横軸との交点ν_0を読み取ると W=hν_0
(6)
[
(i) 単位時間あたりに放出される光電子の個数が増加すると, 飽和電流は大きくなる.
(i) 光電子1個の最大運動エネルギーK_max=hν-Wは変化しないため, 阻止電圧V_0は変化しない.
(ii) 振動数νを大きくすると, K_max=hν-Wより, 光電子の最大運動エネルギーは大きくなる.
(ii) よって, K_max=eV_0より, 阻止電圧V_0は大きくなる(I=0となる点が左側へ移動).
(iii) 仕事関数Wの大きな金属にすると, K_max=hν-Wより, 光電子の最大運動エネルギーは小さく
(iii) なる. よって, K_max=eV_0より, 阻止電圧V_0は小さくなる(I=0となる点が右側へ移動)
