核分裂と核融合(原子力発電・太陽エネルギー)

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【核分裂】 重い原子核が2つ程度の軽い原子核に分裂し、大きなエネルギーを放出する現象。 核分裂の前後の質量差ΔMに相当するエネルギー E = ΔMc² が放出される。 【連鎖反応】 核分裂によって、次の核分裂を引き起こす中性子が新たに放出され、核分裂が次々と起こる現象。 ウラン235(²³⁵U)の原子核に1個の中性子(¹₀n)が衝突すると、核分裂が起こり、2つの原子核とともに2~3個程度の中性子(¹₀n)が放出されることがある。 放出された中性子(¹₀n)が別の²³⁵U原子核を核分裂させることで、連鎖反応が生じ得る。 例 ²³⁵₉₂U + ¹₀n → ¹⁴¹₅₆Ba + ⁹²₃₆Kr + 3¹₀n 【臨界】 核分裂の連鎖反応が一定の割合で持続する状態。 【臨界量】 一定の条件下で、核分裂の連鎖反応を持続させるのに必要な核燃料の最小質量。 【原子力発電】 原子炉では制御棒などを用いて核分裂の連鎖反応を制御し、臨界状態を維持する。 核分裂で発生した熱を利用して蒸気をつくり、タービンを回して発電する。 核分裂の連鎖反応を停止しても、放射性物質の崩壊による熱(崩壊熱)が発生し続ける。 冷却機能が失われると、崩壊熱などによって炉心の温度が上昇し、核燃料が高温で溶融する炉心溶融(メルトダウン)が生じることがある。 2011年の東日本大震災では、福島第一原子力発電所の原子炉が自動停止したものの、津波による電源喪失などで冷却機能が失われ、炉心溶融が発生した。 その結果、大量の放射性物質が周辺地域に放出される重大事故となった。 【核融合】 軽い原子核どうしが結合して重い原子核となり、大きなエネルギーを放出する現象。 核融合の前後の質量差ΔMに相当するエネルギー E = ΔMc² が放出される。 正の電荷をもつ原子核どうしを、クーロン斥力に逆らって核力の及ぶ距離まで近づける必要があるため、非常に高い温度が必要となる。 例 重水素と三重水素の核融合反応 ²₁H + ³₁H → ⁴₂He + ¹₀n + 17.6 MeV 【太陽のエネルギー源】 太陽の中心部は約1600万Kの高温・高密度状態にあり、水素原子核が段階的に融合する。 複数の核反応を経て、全体として4個の水素原子核から1個のヘリウム原子核が生成される。 4¹₁H → ⁴₂He + 2e⁺ + 2νₑ + 27 MeV (e⁺は陽電子、νₑは電子ニュートリノ) 【問題】 ウラン235の原子核は、中性子を吸収して次のように核分裂する。 ²³⁵₉₂U + ¹₀n → ¹⁴¹₅₆Ba + ⁹²₃₆Kr + 3¹₀n 光速を c = 3.0×10⁸ m/s、アボガドロ定数を Nₐ = 6.0×10²³ /mol、1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J、1 u・c² = 931 MeV とする。 また、質量欠損は小数第4位、その他は有効数字2桁で答えよ。 原子核・粒子の質量(u) ²³⁵₉₂U:234.9935 ¹⁴¹₅₆Ba:140.8830 ⁹²₃₆Kr:91.9060 ¹₀n:1.0087 ²₁H:2.0136 ³₁H:3.0155 ⁴₂He:4.0015 (1) 上の核分裂反応における質量欠損ΔMをu単位で求めよ。また、この質量欠損はウラン235の原子核1個の質量の何%に相当するか。 (2) (1)の核分裂反応1回で放出されるエネルギーEをMeV単位で求めよ。 (3) 最初に1個の原子核が核分裂し、その後、1回の核分裂から次の世代で必ず2回の核分裂が起こるとする。最初の核分裂を第0世代として、第5世代で起こる核分裂の回数と、第0世代から第5世代までの核分裂の総回数を求めよ。 (4) ウラン235の1.0 kgがすべて(1)の核分裂を起こすとき、放出されるエネルギーの総量E′をJ単位で求めよ。 (5) 石油1.0 kgを完全燃焼させると4.0×10⁷ Jの熱が発生する。(4)のエネルギーは、石油何トンの燃焼による発熱量に相当するか。 (6) (4)の熱エネルギーを利用し、熱効率30%で発電するとする。得られる電気エネルギーをkWh単位で求めよ。 (7) 熱効率30%、電気出力1.0×10⁶ kWの原子力発電所では、1秒間に何個のウラン235原子核が核分裂するか。ただし、熱はすべて(1)の核分裂によって発生する。 (8) 重水素と三重水素の間で、次の核融合反応が起こる。 ²₁H + ³₁H → ⁴₂He + ¹₀n この核融合反応では、反応前の質量の何%がエネルギーに変わるか。また、その割合は(1)の核分裂反応の約何倍か。 (9) 太陽では、4個の水素原子核から1個のヘリウム原子核が生成される核融合反応が起こり、反応前の質量の約0.7%がエネルギーに変わる。太陽の質量を2.0×10³⁰ kgとし、その10%が核融合に利用されるとする。放出されるエネルギーの総量Eₛᵤₙを求めよ。 (10) 太陽が毎秒3.8×10²⁶ Jのエネルギーを一定の割合で放射するとする。(9)の結果から、太陽が核融合によってエネルギーを放射できる期間(寿命)を年単位で見積もれ。ただし、1年を3.2×10⁷ sとする。 【解答】 (1) ΔM = (234.9935 + 1.0087) − (140.8830 + 91.9060 + 3×1.0087) = 0.1871 u (前者は核分裂前、後者は核分裂後の質量。) ²³⁵U原子核1個の質量に対する質量欠損の割合は、 0.1871 / 234.9935 × 100 ≒ 0.080% [数値計算では、最終結果よりも有効数字を1桁程度多く残して途中計算すれば、多くの場合は十分である。 例えば、0.1871 / 234.9935 は 0.187 / 235 ≒ 0.000796 ≒ 0.00080 としても十分な精度が得られる。 ただし、質量欠損など近い値同士の引き算では、途中で丸めると十分な精度が得られなくなることがある。 例えば、0.8888 − 0.8887 = 0.0001 を 0.889 − 0.889 = 0 としてはならない。] (2) 1 u・c² = 931 MeV より、 E = ΔMc² = 0.1871×931 = 174.1901 ≒ 1.7×10² MeV (3) 核分裂の回数は1世代ごとに2倍になるから、第A世代の核分裂の回数は2ᴬ回である。 第5世代の核分裂の回数は、2⁵ = 32回。 第0世代から第5世代までの総回数は、 1 + 2 + 2² + 2³ + 2⁴ + 2⁵ = (2⁶ − 1) / (2 − 1) = 63回。 [数B:初項a、公比r、項数nの等比数列の和の公式 Sₙ = a(rⁿ − 1) / (r − 1)(r ≠ 1)] (4) 1.0 kgのウラン235に含まれる原子核の個数は、 N = (1.0×10³ g / 235 g/mol) × 6.0×10²³ /mol E′ = N × (0.1871×931×10⁶) × (1.6×10⁻¹⁹) ≒ 7.12×10¹³ ≒ 7.1×10¹³ J (0.1871×931×10⁶は核分裂1回のエネルギーをeVで表した数値、1.6×10⁻¹⁹はeVからJへの換算係数。) [²³⁵Uのモル質量は235 g/molであるから、1.0 kgは (1.0×10³ / 235) mol である。] (5) 必要な石油の質量は、 E′ / (4.0×10⁷ J/kg) ≒ 1.78×10⁶ kg ≒ 1.8×10³トン。 (6) 熱効率が30%であるから、得られる電気エネルギーは0.30E′である。 1 kWh = (1.0×10³) W × 3600 s = 3.6×10⁶ J 得られる電気エネルギーは、 0.30E′ / (3.6×10⁶ J/kWh) ≒ 5.93×10⁶ ≒ 5.9×10⁶ kWh。 [kWh(キロワット時)は、1 kWの電力を1時間使用したときの電力量(エネルギー)の単位である。 電力量 = 電力 × 時間 より、1 kWh = 1 kW × 1 h = 1000 W × 3600 s = 3.6×10⁶ J。] (7) 電気出力1.0×10⁶ kWは、1.0×10⁹ W = 1.0×10⁹ J/sである。 熱効率が30%であるから、1秒間に発生する熱エネルギーは (1.0×10⁹ / 0.30) J。 核分裂1回で放出されるエネルギーは (0.1871×931) MeVであるから、1秒間に核分裂するウラン235原子核の個数は、 [(1.0×10⁹ / 0.30)] / [(0.1871×931×10⁶)(1.6×10⁻¹⁹)] ≒ 1.2×10²⁰個。 [電力Wは、単位時間あたりのエネルギーJ/sを表す。 熱効率30%とは、発生した熱エネルギーの30%が電気エネルギーに変換されることを意味する。 よって、電気出力から逆に必要な熱エネルギーを求めるには、0.30で割る。] (8) 核融合反応前後の質量の差は、 ΔM = (2.0136 + 3.0155) − (4.0015 + 1.0087) = 0.0189 u 核融合前の質量に対する質量欠損の割合は、 0.0189 / (2.0136 + 3.0155) × 100 ≒ 0.38%。 (1)の核分裂反応の質量欠損の割合との比は、 [0.0189 / 5.0291] / [0.1871 / 234.9935] ≒ 4.72 ≒ 4.7倍。 (9) 核融合に利用される質量をmとすると、 m = (2.0×10³⁰)×0.10 = 2.0×10²⁹ kg このうち0.7%がエネルギーに変わるから、 Eₛᵤₙ = 0.007×mc² = 0.007×(2.0×10²⁹)(3.0×10⁸)² = 1.26×10⁴⁴ ≒ 1.3×10⁴⁴ J (10) (9)のエネルギーを放射するのに必要な時間は、 Eₛᵤₙ / (3.8×10²⁶ J/s)。 太陽の寿命は、 [Eₛᵤₙ / (3.8×10²⁶) s] / (3.2×10⁷ s/年) ≒ 1.0×10¹⁰年(100億年)。
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高校物理 原子物理
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