
【半減期 T】
放射性原子核の数が、放射性崩壊によって半分になるまでの時間。
放射性核種に固有の値であり、原子核の数や試料の質量には依存しない。
半減期をT、最初の原子核の数をN₀とすると、経過時間t後の原子核の数Nは
N = N₀ × (1/2)^(t/T)
Nは崩壊した個数ではなく、経過時間t後に崩壊せずに残っている個数であることに注意する。
また、一定時間が経過するごとに一定個数ずつ崩壊するのではないことにも注意する。
半減期Tの間に崩壊する個数は、その期間の開始時点で残っている個数の1/2である。
最初の半減期Tでは、N₀個のうちN₀/2個が崩壊し、N₀/2個が残る。
次の半減期Tでは、残っているN₀/2個のうちN₀/4個が崩壊し、N₀/4個が残る。
このように、半減期Tが経過するごとに、残っている個数は半分になる。
つまり、最初の個数N₀に対する割合は、1 → 1/2 → 1/4 → 1/8 → … と減少していく。
【放射能の強さ】
1秒間に崩壊する原子核の数。単位はBq(ベクレル)。
放射能の強さAは放射性原子核の数Nに比例するため、半減期が経過すると半分になる。
半減期をT、最初の放射能の強さをA₀とすると、経過時間t後の放射能の強さAは
A = A₀ × (1/2)^(t/T)
【放射年代測定】
放射性同位体の含有率を測定して、物質が形成された年代を推定する方法。
放射性核種の半減期は一定であるため、現在の放射性原子核の数やその割合を調べることで、最初の状態からどれだけの時間が経過したかを推定できる。
【放射性炭素年代測定】
生物の遺骸などの年代を調べる方法。
放射性同位体¹⁴Cは宇宙線の作用により大気中で生成され、¹⁴CO₂として生物に取り込まれる。
生物が生きている間は外界と炭素を交換しているため、体内の¹⁴Cの割合は一定に保たれる。
しかし、生物が死ぬと炭素の交換がほぼ停止し、¹⁴Cは放射性崩壊によって減少していく。
¹⁴Cの半減期は約5730年であり、¹⁴Nに変化する。
生物の遺骸に残された¹⁴Cの割合や放射能の強さを測定すると、死後の経過時間を推定できる。
【問題】
放射性原子核Xは自発的に崩壊し、安定な原子核Yに変化する。Xの半減期をTとする。
時刻t = 0にはXのみが存在し、その原子核の数をN₀とする。
時刻tにおけるXの原子核の数をNとする。
log₁₀2 = 0.3010、log₁₀3 = 0.4771
(1) ある時刻において、XとYの原子核の個数比がNₓ:Nᵧ = 1:7であった。この時刻までに経過した時間t₁をTを用いて表せ。
(2) 時刻t = 0における放射能の強さをA₀とする。放射能の強さがA₀の1/16になるまでの時間t₂をTを用いて表せ。また、このときのYの原子核の数NᵧをN₀を用いて表せ。
(3) 2種類の放射性核種P、Qは、それぞれ別の安定な原子核に崩壊する。P、Qの半減期はそれぞれT、2Tであり、互いに崩壊によって生成される関係にはない。現在、Pの原子核の数はPとQの原子核の総数の20%である。現在から4Tだけ過去にさかのぼったとき、PがPとQの原子核の総数に占めていた割合を求めよ。
次に、放射性同位体¹⁴Cを利用した年代測定を考える。¹⁴Cの半減期は5730年である。生物の死亡時の単位質量の炭素当たりの¹⁴Cの個数は、現在の生物と等しいものとする。
(4) ある木片に含まれる炭素の単位質量当たりの¹⁴Cの原子核の数を測定したところ、現在の生きた樹木の60%であった。この木が枯死してからの経過時間t₃を求めよ。
(5) 別の木片Cと木片Dについて、炭素の単位質量当たりの放射能の強さを測定したところ、木片Cは木片Dの3倍であった。どちらも枯死時の条件は同じとする。どちらが古いか答えよ。また、両者が枯死した時期の差Δtを有効数字2桁で求めよ。
(6) ある鉱物には、放射性同位体²³⁸Uと安定な²⁰⁶Pbが含まれている。
²³⁸Uは一連の放射性崩壊を経て²⁰⁶Pbに変化する。²³⁸Uの半減期は44.7億年である。
この鉱物が形成されたときには²⁰⁶Pbは存在せず、現在の²⁰⁶Pbはすべて²³⁸Uの崩壊によって生成されたものとし、中間生成物の量は無視する。
現在、鉱物中の²³⁸Uと²⁰⁶Pbの合計質量に対する²³⁸Uの質量百分率は69.8%であった。
(a) 現在の²³⁸Uと²⁰⁶Pbの原子核の個数比を最も簡単な整数比で近似せよ。
(b) (a)の結果を用いて、鉱物が形成されてからの経過時間を有効数字2桁で求めよ。
【解答】
(1) Nₓ:Nᵧ = 1:7より、現在の原子核Xの数は
N = N₀/8
1/8 = (1/2)³であるから、経過時間は
t₁ = 3T
(2) 1/16 = (1/2)⁴であるから、経過時間は
t₂ = 4T
このとき、残っている原子核Xの数は
N = N₀/16
原子核Yの数は崩壊したXの数に等しいから
Nᵧ = N₀ − N₀/16 = 15N₀/16
(3) 現在のPとQの原子核の個数比は
Nₚ:NQ = 20%:80% = 1:4
4Tの間に、Pは半減期が4回、Qは半減期が2回経過している。
よって、4T前の個数比は
Nₚ₀:NQ₀ = (1 × 2⁴):(4 × 2²) = 16:16 = 1:1
したがって、求めるPの割合は
1/(1 + 1) × 100 = 50%
(4) 現在の¹⁴Cの原子核の数は枯死時の60%であるから
(1/2)^(t₃/5730) = 3/5
両辺の常用対数をとると
(t₃/5730)log₁₀(1/2) = log₁₀(3/5)
∴ t₃ = 5730 × (log₁₀5 − log₁₀3)/log₁₀2
= 5730 × (1 − 0.3010 − 0.4771)/0.3010
≒ 4.2 × 10³ 年
【補足】
N = N₀ × (1/2)^(t/T)を
N/N₀ = (1/2)^(t/T)
と考えると、N/N₀は残存割合(残存率)である。
半減期の問題では、1/2の整数乗にならない場合、常用対数(数学Ⅱ)を利用して計算できる。
対数の性質
logₐ(MN) = logₐM + logₐN
logₐ(M/N) = logₐM − logₐN
logₐ(Mʳ) = r logₐM
log₁₀(1/2) = log₁₀1 − log₁₀2 = 0 − log₁₀2 = −log₁₀2
log₁₀5はlog₁₀2から求めることができる。
log₁₀5 = log₁₀(10/2) = log₁₀10 − log₁₀2 = 1 − log₁₀2
(5) 炭素の単位質量当たりの放射能の強さは、時間経過と共に減少するから、木片Dの方が古い。
枯死時の木片Cと木片Dの単位質量当たりの放射能の強さをA₀、測定時の木片Cと木片Dの放射能の強さをそれぞれAᴄ、Aᴅ、木片Cと木片Dの経過時間をそれぞれtᴄ、tᴅとすると
Aᴄ = A₀ × (1/2)^(tᴄ/5730)
Aᴅ = A₀ × (1/2)^(tᴅ/5730)
∴ Aᴅ/Aᴄ = (1/2)^((tᴅ − tᴄ)/5730)
= (1/2)^(Δt/5730) = 1/3
指数法則:aᵐ/aⁿ = aᵐ⁻ⁿ
(1/2)^(Δt/5730) = 1/3
の両辺の常用対数をとると
(Δt/5730)log₁₀(1/2) = log₁₀(1/3)
∴ Δt = 5730 × log₁₀3/log₁₀2
= 5730 × 0.4771/0.3010
≒ 9.1 × 10³ 年
(6) (a) ²³⁸Uの質量百分率が69.8%であるから、²⁰⁶Pbは30.2%である。
原子核1個の質量は質量数に比例するから、現在の個数比は
Nᵤ:Nₚᵦ = (69.8/238):(30.2/206)
≒ 0.293:0.147
≒ 2:1
(b) 鉱物の形成時には²⁰⁶Pbが存在せず、1個の²³⁸Uから最終的に1個の²⁰⁶Pbが生じる。
(a)より、最初の²³⁸Uの原子核数に対する現在の残存率は
Nᵤ/Nᵤ₀ = 2/(2 + 1) = 2/3
鉱物が形成されてからの経過時間をt億年とすると
(1/2)^(t/44.7) = 2/3
両辺の常用対数をとると
(t/44.7)log₁₀(1/2) = log₁₀(2/3)
∴ t = 44.7 × (log₁₀3 − log₁₀2)/log₁₀2
= 44.7 × (0.4771 − 0.3010)/0.3010
≒ 26億年
【補足】
(a) 合計質量を100gとすると、²³⁸Uと²⁰⁶Pbの質量は、それぞれ69.8g、30.2gである。
また、モル質量はそれぞれ238g/mol、206g/molであるから、
(69.8g)/(238g/mol):(30.2g)/(206g/mol)
はmol(物質量)の比であり、原子核の個数比に等しい。
