「方程式が少なくとも1つの実数解をもつ条件」は以下で確認。
以下はGeoGebraによる作図です。自分でスライダーを動かしてみてください。自動再生もできます。
(1)\ \ tがすべての実数値をとるとき,\ 直線\ y=2tx-t^2\ が通過する領域を図示せよ.$
$(2)\ \ 実数tが\ 0≦ t≦1\ を動くとき,\ 直線\ y=2tx-t^2\ が通過する領域を図示せよ.$ 直線の通過領域 \\
本問は最も基本的な通過領域の問題であり,\ 3大解法がすべて通用する.
問題で解法を事実上指定されることも多いので,\ 3つすべて習得しておくことが望ましい.
実際に問題を解いていく中で,\ 各方法のメリット・デメリットを確認していくことにする.
[1]\ \ 順像法(1文字固定法) [2]\ \ 逆像法(実数存在条件) [3]\ \ 包絡線の利用
最初に,\ 3つの方法の中で最も重要な逆像法を用いる場合の考え方と解答を示す.
とりあえず,\ 直線$y=2tx-t^2$の$t$を$-\,1$から1まで$1}{16}$ごとに変化させて図示してみる.
実数$t$}に対応して1本の直線が定まり,\ その直線上のすべての点が通過領域}となる.
逆にいえば,\ $通過領域内の点}には,\ 対応する逆像t}が存在しているはず}である.$
この逆像$t$が存在するか否かで座標平面上の点$(x,\ y)$を分類していく.
すると,\ 自ずと条件を満たす点$(x,\ y)$の集合,\ すなわち通過領域が浮かび上がる.
例えば,\ 直線$y=2tx-t^2$は,\ 点$(1,\ -\,3)}$を通過するだろうか.
$(x,\ y)=(1,\ -\,3)$のとき$-3=2t-t^2\ (t^2-2t-3=0)より,\ t=-\,1,\ 3}を得る.$
よって,\ $t=-\,1,\ 3}のとき,\ 点(1,\ -\,3)を通過する}とわかる.$
つまり,\ 点$(1,\ -\,3)$は通過領域に含まれる点である}といえる.
ちなみに,\ 対応する$tが2つあるということは,\ 点(1,\ -\,3)を2回通過することを意味する.$
では,\ 直線$y=2tx-t^2$は,\ 点$(1,\ 3)}$を通過するだろうか.
$(x,\ y)=(1,\ 3)$のとき$t^2-2t+3=0だが,\ D4=-\,2<0より実数解が存在しない.$
よって,\ $どのような実数tに対しても,\ 直線が点(1,\ 3)を通過することはない.}$
つまり,\ 点$(1,\ 3)$は通過領域に含まれる点ではない.}
結局,\ $y=2tx-t^2$を満たす実数$t$が存在するような$(x,\ y)$の集合}を求めればよい.
$(x,\ y)}$の条件が,\ 残りの文字$t}$の実数存在性を追求して求まるという構造が重要である.
(1)\ \ $tで整理すると t^2-2xt+y=0\ \ ・・・・・・\,①$
求める領域は,\ $tの方程式①が実数解をもつような(x,\ y)の集合}である.$
①の判別式を$D$とする
求める領域は下図の斜線部分.\ 境界線を含む.}$}
(2)\ \ 求める領域は,\ $tの方程式①が0≦ t≦1に実数解をもつような(x,\ y)の集合}である.
tの範囲に制限がかかると解の存在範囲(解の配置)問題}となり,\ 単純にD≧0では済まなくなる.
しかも,\ 「少なくとも1つの実数解をもつ」という最も厄介なタイプの解の存在範囲問題}となる.
当カテゴリの「実数解のとりうる値の範囲」の項でも解説したので,\ ここでは簡単な解説に留める.
条件「少なくとも1つの実数解」は,\ 「2個(重解含む)」と「1個」で場合分けするのが基本である.
[1]\ \ 2個(重解含む)となる条件は,\ D≧0,\ 0≦ 軸≦1,\ f(0)≧0,\ f(1)≧0}\ である.
[2]\ \ 1個の条件は,\ 以下のような場合をまとめて\ f(0)f(1)≦0}\ である.
同一平面上に複数の関数を図示するとき,\ 先に共有点の有無や位置を調べる必要がある.
y=x^2\,とy=2x-1を連立すると,\ x^2=2x-1より(x-1)^2=0である.
重解x=1をもつということは,\ y=x^2\,とy=2x-1がx=1で接する}ということである.
y=x^2\,は後で述べるようにy=2tx-t^2\,の包絡線なので,\ 接するのは偶然ではなく必然である.
小さい色塗り部分が[1],\ それ以外が[2]に対応する領域である.
逆像法の強みは,\ 全く同じ考え方で値域・軌跡・通過領域・変換の問題に対応できる}ことにある.
いずれの問題も,\ 結局は媒介変数の実数存在条件を考える}ことに帰着する.
一方で,\ (1)と(2)を比較してわかるように,\ 媒介変数に範囲があると途端に処理が複雑になる.
「少なくとも1つの実数解」問題の理解と演習が不十分だと,\ 細かい部分でのミスが高確率で生じる.
また,\ 逆像法が実戦で有効なのは,\ 主に媒介変数が1種類で2次以下の場合}である.
例えば,\ tの3次以上の方程式が0≦ t≦1に実数解をもつ条件を考えるのは現実的ではない.
とはいうものの,\ 実際に試験で出題される問題の多くは,\ 媒介変数が1種類で2次以下の問題である.
それゆえ,\ 受験数学においては逆像法が最も実戦的な通過領域問題の解法}といえる.
順像法(1文字固定法)を用いる場合の考え方と解答を示す.\ \ $ℓ :y=2tx-t^2$とする.
まず,\ $x}$を$k}$と固定する.
そして,\ 実数$t$を動かしたとき,\ 直線$ℓ$が直線$x=k$のどの部分を通過するか}を考える.
これは,\ $ℓ$と$x=k$の交点の$y$座標$2kt-t^2$のとりうる値の範囲を求めることに等しい.
最後に$k}$を動かすと,\ 通過領域が浮かび上がる.
例えば,\ $x=1$と固定すると,\ そのときの直線$ℓ$の$y$座標は$y=2t-t^2$である.
$y=-\,(t-1)^2+1$より,\ $t$を動かしたときの$y$のとりうる値の範囲は$y≦1$である.
図形的には,\ $t$を動かすと,\ 直線$ℓ$は直線$x=1$上の$y≦1$の部分を通過する}ことを意味する.
同様に,\ $x=2$と固定すると,\ $y=4t-t^2=-\,(t-2)^2+4≦4$となる.
よって,\ $t$を動かすと,\ 直線$ℓ$は直線$x=2$上の$y≦4$の部分を通過する.}
一般に,\ $x=k$と固定すると,\ $y=2kt-t^2=-\,(t-k)^2+k^2≦ k^2$となる.
よって,\ $t$を動かす}と,\ 直線$ℓ$は直線$x=k$上の$y≦ k^2$の部分を通過する.}
直線$x=k$上で$ℓ$が通過する範囲の上端$(k,\ k^2)$は$y=x^2$上の点である.
ゆえに,\ 今度は$k$を動かす}と,\ 直線$ℓ$の通過領域が$y=x^2$の下側}であるとわかる.
以上の手法がFAXの原理と似ているため,\ 通称ファクシミリ論法などと呼ばれる. \
m{求める領域は下右図の色塗り部分.\ 境界線を含む.}$}
(2)の基本方針は(1)と同様である.
ただし,\ 0≦ t≦1の範囲でtを変化させたときのyのとりうる値の範囲を求めることになる.
結局,\ 区間固定で関数が動くタイプの2次関数の最大・最小問題}に帰着する.
軸t=kと区間0≦ t≦1の位置関係で場合分けする必要が生じる.\ \ f(t)=2kt-t^2\,とする.
[1]\ \ 軸が区間の左側にあるとき f(1)≦ y≦ f(0)}\ より 2k-1≦ y≦0
[2]\ \ 軸が区間内で中央左側にあるとき f(1)≦ y≦ f(k)}\ より 2k-1≦ y≦ k^2
[3]\ \ 軸が区間内で中央右側にあるとき f(0)≦ y≦ f(k)}\ より 0≦ y≦ k^2
[4]\ \ 軸が区間の右側にあるとき f(0)≦ y≦ f(1)}\ より 0≦ y≦2k-1
順像法のメリットは,\ 極めて汎用性が高い}ことである.
逆像法が厳しい媒介変数が2種類だったり3次以上だったりする問題に対しても有効である.
受験では,\ 大学のレベルが上がるほど逆像法よりも順像法を使うべき出題が増える傾向にある.
\end{array\right]$ \\
最後に,\ 包絡線を利用した解答を示す.
$y=2tx-t^2=-\,(t-x)^2+x^2$より,\ $y=x^2$と$y=2tx-t^2$は常に$x=t$で接する.}
∴ 求める領域は下図の色塗り部分.\ 境界線を含む.}$} \\
tの値によらず常にf(x,\ y,\ t)=0と接するような曲線をf(x,\ y,\ t)=0の包絡線}という.
包絡線を見つけることができれば,\ 直線や線分の通過領域が図形的にわかる.}
tの2次式ならば,\ tで平方完成したときの( )^2\,以外の部分が包絡線}となる.
2tx-t^2=-\,(t-x)^2+x^2\,は,\ x^2-(2tx-t^2)=(t-x)^2\,と変形できる.
ここから,\ y=x^2\,とy=2tx-t^2\,を連立したとき,\ t=x\,を重解にもつ}ことがわかる.
これは,\ y=x^2\,とy=2tx-t^2\,がx=tで接することを意味している.
包絡線さえ求まれば,\ 図形的に接点を動かし,\ 接線y=2tx-t^2\,が通過する領域を考えればよい.
(2)では,\,接点(t,\ t^2)がy=x^2\,の0≦ x≦1の部分を動いたときの通過領域}を考えることになる.
結局,\ t=0のときの接線y=0とy=1のときの接線y=2x-1が領域の境界線となるとわかる.
包絡線の利用は圧倒的に簡潔だが,\ 適用できる問題がかなり限られる}のがデメリットである.
誘導なしでも包絡線が楽に求められるのは,\ 本問のようにtが2次の場合のみ}である.
また,\,動くのが直線(線分)でない場合,\,包絡線がわかっても通過領域を図形的にとらえるのは難しい.}
以下は,\ 最終手段または検算用の裏技}である.\ \ tが2次でない場合でも包絡線を求められる.
包絡線は,\らtを消去}すると得られる(必要条件}). [-.5zh]
\partial}{\partial t}\,は大学数学の偏微分だが,\ 単に「x,\ yを定数とみてtで微分せよ」という意味である.
本問の場合,\ t^2-2xt+y=0をtで偏微分すると 2t-2x=0 よって\ \ t=x
t=xとt^2-2xt+y=0からtを消去すると y=x^2\ (必要条件)
y=x^2\,とy=2tx-t^2\,を連立すると(x-t)^2=0より,\ 確かにx=tで接する(十分条件).
よって,\ y=x^2\,は包絡線である.
高校数学の範囲では,\ ほぼ確実に包絡線となると考えてよい.