
理想気体の状態方程式
理想気体 ボイルの法則やシャルルの法則が厳密に成り立つ仮想的な気体.
物質量 粒子6.02×10²³個の集まりを1molという.
アボガドロの法則 温度・圧力一定のとき, 気体の体積は物質量(分子数)に比例する.
気体の状態方程式
ボイル・シャルルの法則より PV/T=(一定)
アボガドロの法則より, n[mol]の気体では体積がn倍になる.
よって, 比例定数をR(気体定数)とすると PV/T=nR
∴ PV=nRT
1molの気体の体積は標準状態(0℃, 1.013×10⁵Pa)で22.4Lである.
R=PV/(nT)=(1.013×10⁵Pa×22.4L)/(1mol×273K)=((1.013×10⁵N/m²)×(22.4×10⁻³m³))/(1mol×273K)
≒8.31(N·m)/(mol·K)=8.31[J/(mol·K)]
〔 化学ではR=8.31×10³[Pa·L/(mol·K)]を用いるが, 物理では8.31[J/(mol·K)]を用いる.
n(物質量)が一定ならばnRも一定になるのでPV/T=(一定)となる.
要は, 物質量が変化しなければボイル・シャルルの法則, 変化するならば状態方程式を用いればよい. 〕
密閉されていない体積Vの容器が絶対温度Tの室内におかれている. この容器を3Tになるまで温めたとき, 容器内の気体の物質量は最初と比べて何倍になるか.
温める前の容器内の物質量をn, 温めた後の容器内の物質量をn’とする.
また, 大気圧をP, 気体定数をRとする.
温める前の容器内の気体の状態方程式は P×V=n×R×T ……①
温めた後の容器内の気体の状態方程式は P×V=n’×R×3T ……②
∴ n’=1/3n より 1/3倍
〔 密閉されていない場合, 容器内の物質量(mol)が一定とは限らない.
よって, ボイル・シャルルの法則は適用できず, 状態方程式を立式することになる.
ボイル・シャルルの法則はPV/T=P’V’/T’とすることで変化の前後を一発で関連づけられた.
しかし, 状態方程式の場合, 変化前と変化後のものをそれぞれ立式した後連立する必要がある.
このとき, 未知のものはとにかく自分で文字を設定してでも立式する.
また, 密閉されていない容器内の圧力は常に外部の圧力(大気圧)と等しいことにも注意する.
なお, 状態方程式の連立では2式の両辺を割るのが基本である.
②/① より (PV)/(PV)=(3n’RT)/(nRT) ∴ 1=(3n’)/n 〕
体積Vの容器Aと体積2Vの容器Bがコックがついた細い管で接続されている. 容器Aに圧力P, 絶対温度Tの理想気体をいれた. 容器Bは真空である.
(1) コックを開いて全体の絶対温度を5Tにしたときの圧力P’を求めよ.
(2) さらに, 容器Aの絶対温度を4T, 容器Bの絶対温度を3Tにしたときの圧力P”を求めよ.
(1) ボイル・シャルルの法則より (P×V)/T=(P’×3V)/(5T) ∴ P’=5/3P
(2) 最初の全物質量をn, 最後の容器A内の物質量をn_A, 容器B内の物質量をn_Bとする.
最初の容器A内の気体の状態方程式は P×V=n×R×T
最後の容器A内の気体の状態方程式は P”×V=n_A×R×4T
最後の容器B内の気体の状態方程式は P”×2V=n_B×R×3T
全物質量は保存するから n=n_A+n_B
∴ (PV)/(RT)=(P”V)/(4RT)+(2P”V)/(3RT) より P”=12/11P
〔 (1) 初期状態と比較すると圧力, 体積, 温度いずれもが変化する. 一方, 気体の物質量は変化しない.
よって, ボイル・シャルルの法則を適用して求めることができる.
(2) 最終状態は容器Aと容器Bで異なる. また, 物質量も変化する.
よって, 別々に状態方程式を立式する. なお, 接続されている容器Aと容器B内の圧力は等しい.
さらに, 初期状態の状態方程式も立式する. (1)の状態方程式でもよいがわずかに面倒である.
Rは定数であるから, 未知なのはP”, n, n_A, n_Bの4文字である.
物質量保存の式も加えると4つの式ができ, 連立すれば求まる.
各状態方程式をn=の形に変形して最後の式に代入するとよい. 〕
