不定方程式の発想①:不等式による絞り込み、整数問題で問われる精神力

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2x^2-3x+y-9=0を満たす自然数x,\ yの組を全て求めよ.$
$(2)\ \ x+2y+3z=10を満たす自然数x,\ y,\ zの組を求めよ.$
$(3)\ \ x^2+2xy+3y^2=19を満たす整数x,\ yの組を求めよ.$ \\
%$(4)\ \ 4x^2+3y^2+z^2-2yz-32=0を満たす整数x,\ y,\ zの組を求めよ.$ \\
{不定方程式の発想① 不等式による絞り込み$
 方程式の数よりも未知数の数が多く,\ 解が定まらない方程式}を不定方程式という.
 ただし,\ これに「整数解」という条件が加わると解が定まることがある.
 整数係数不定方程式の整数解を求めることが整数分野の最大テーマの1つである.
 当カテゴリでは,\ 不定方程式の整数解を求める問題のパターンと発想を紹介する.
 パターンとはいっても,\ 整数分野では明確に各問題の扱いが決まっているわけではない.
 多くの問題に共通して通用する発想そのものを習得し,\ 問題ごとに試行錯誤する必要がある.
 さて,\ 整数問題というからには,\ 整数の特徴を生かして問題を解くことになるはずである.
 そうでなくては,\ わざわざ整数という条件がついている意味がない.
 他の数(分数や無理数など)にはない整数だけがもつ特徴が以下の3つである.
「とびとびの値をとる(離散性)」「素因数分解できる」「余りで分類できる」
 これらに基づき,\ 必然的に整数問題の3大方針が以下となる.
「不等式で絞り込む」「因数分解で積の形を作る」「余りを考える」
 本項では,\ このうち「離散性」に着目した不定方程式の解法を紹介する.
 離散性により,\ 「実数」に比べて「整数」という条件は格段に厳しい条件となる.
 例えば,\ $「\,20またはx≧1}$}である.
 さらに,\ 2次方程式となる場合,\ $D≧0$を満たしていなければならない.
 (1)\ \ $y$は自然数であるから
 $x$についての2次方程式$2x^2-3x+y-9=0$を解くと $x=3±√{81-8y{4}$
$x$が整数になるためには,\ $81-8y$が平方数となることが必要}である.
$-\,8y+81≧0$\ より $y≦81}{8}$
$y=1,\ 2,\ ・・・,\ 10$のうち$81-8y$が平方数となるのは,\ $y=4,\ 7,\ 9,\ 10}$のときである.
∴ xが自然数となるのは (x,\ y)=(1,\ 10),\ (2,\ 7)}$}
x,\ yは自然数であるから,\ x>0,\ y>0}あるいはx≧1,\ y≧1}という範囲があることになる.
この条件を利用するための最も単純な方法は,\ 「\,1つの文字について解く」}ことである.
次数が低い文字について解く}ほうが簡単なので,\ y=とするのが自然である.
y>0からxの範囲が求まり,\ さらにも考慮するとxの値が2つにまで絞られる.
後は,\ xの値をy=-\,2x^2+3x+9に代入してyの値を求めればよい.
「\,yは自然数\ ⇒\」であるから,\ y>0はyが自然数であるための必要条件}である.
これの逆は成り立たない(だからといってyが自然数とは限らない).
よって,\ 十分性(yが自然数となること)を確認}した上で最終的な答えとする.
y≧1ではなくを利用する解法を示したことに本質的な意味合いはない.
本問はたまたまとするとうまく因数分解できるというだけである.
√{73}≒8.5がわかりにくいならば,\ 例えば次のように考える.\ この場合は結局と同じになる.
とにかく,\ 範囲を限定するという目的さえ達成できれば,\ その手法や過程は自由である.
何が楽かは試してみなければわからないので,\ 時間が限られた実際の試験では運要素も絡む.
別解は2次のxについて解くものである.\ 因数分解できないので,\ 解の公式}を利用することになる.
x>0とすると面倒になるので,\ 根号の中身に着目する}発想を習得してほしい.
xが自然数となるためには,\ それ以前に実数である必要がある(必要条件}).
つまり,\ 根号の中身が0以上}でなければならない.\ \ D≧0}と考えても同じことである.
さらに,\ xが自然数となるためには根号がはずれる必要がある(必要条件}).
つまり,\ 根号の中身が平方数}(整数の2乗で表される整数)でなければならない.
D≧0より1≦ y≦10がわかるから,\ 81-8yに順に代入して平方数となるものを探せばよい.
最後に,\ 十分性(xが自然数となること)を確認}した上で最終的な答えとする.
y=4,\ 9のように答えにならない値が含まれていたのは,\ 絞り込みが甘かったせいである.
より厳しくyの値を絞り込むことを考えよう.
分母が4であるから,\ 分子が正の4の倍数(4,\ 8,\ ・・・)であればxは確実に自然数}となる.
ここで,\ yが81-8y≧0を満たす自然数のとき,\ 常にある.\ が正の4の倍数となることはない.
ここまで考慮すると不必要なyの値を完全に排除できるが,\ どこまで考慮すべきかは場合による.
変に工夫している暇があれば,\ 絞り込みが多少甘くともしらみつぶししたほうが速いことも多い.
様々な絞り込みの発想を習得した上で,\ 臨機応変に対応することが重要である.
一見して,\ 自然数x,\ y,\ zはあまり大きい値ではないはず}だと思えるようになってほしい.
少なくとも,\ x,\ y,\ zはいずれも10未満であることは明らかである.
そして,\ 限界があるならば,\ 何らかの手法で絞り込めるはずである.
本問の場合は,\ x≧1,\ y≧1}としたほうがより厳しく絞り込める.
また,\ 係数が最大の文字zの項に着目}すると最も効率がよい.
zさえ求まれば,\ x,\ yは絞り込まずともすぐに特定できるだろう.
もちろん,\ 2y=7-x≦7-1=6よりy=1,\ 2,\ 3と絞り込んでもよい.
さて,\ 本問を含む整数問題を解くときに一番大事なことは「ビビらない」}ということである.
「数学に精神論?」と思ったかもしれないが,\ 数学的能力以外の理由で解けない学生が実に多い.
そもそも,\ 高校生が本問を解けないなんてことは本来ありえない.
以下のように表現するともはや小学校の算数であり,\ 数学的な知識も能力も必要ないからである.に入る0より大きい整数を答えてください.
しかし,\ 2x+6=3のような実数xの方程式に慣れきった高校生は以下のように考え自滅する.
 「初見では無理・・・」「実数じゃなくて自然数?」「文字が3つも・・・」「うまい解法は・・・」
本問を解くのに必要なのは,\ チャレンジ精神とほんのわずかな思考力のみである.
自然数ではなく整数(負数もありえる)なので,\ 一見してx,\ yの値を絞り込むことはできない.
そこで,\ (0以上の整数)+(0以上の整数)=(具体的な自然数)}\ という形を作ることを目指す.
作れるか否かはやってみなければわからないが,\ とりあえず試してみるわけである.
2次式の場合,\ 1つの文字の式と見て平方完成}すると,\ この形を作り出せることがある.
常に( )^2≧0}であることを利用するのである.\ こうして,\ 本質的に(2)と同じ問題になる.
後は,\ 係数が大きい2y^2\,のほうに着目して絞り込む.
さらに,\ y^2\,や(x+y)^2\,は平方数である}ことも利用するとより厳しく絞り込める.
実は,\ x^2+2yx+3y^2-19=0で\ D4=y^2-(3y^2-19)=-\,2y^2+19≧0\ としても同じ式になる.