不定方程式の発想②:素因数分解の利用 (x²-y²=k型など)

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x^2=y^2+24を満たす自然数x,\ yの組を求めよ.$
$(2)\ \ x^3+xy-2x-5=0を満たす整数x,\ yの組を求めよ.$
$(3)\ \ x^2+xy-x+y-8=0を満たす自然数x,\ yの組を求めよ.$
$(4)\ \ x^3+xy-2y-9=0を満たす整数x,\ yの組を求めよ.$
$(5)\ \ x^2+4x-y^2+2y-2=0を満たす自然数x,\ yの組を求めよ.$ \\
不定方程式の発想② 素因数分解の利用$
 本項では,\ 「素因数分解できる」という整数の性質に着目した不定方程式の解法を紹介する.
 整数は,\ 必ず有限個の素数の積でただ1通りに表すことができるのであった.
 例えば,\ 整数6は$6=2・3$のただ1通りに素因数分解できる.
 よって,\ 条件「\,$xy=6$を満たす\.{自}\.{然}\.{数}$x,\ y$\,」だけで,\ $x,\ y$の値を特定することができる.
 素因数2と3を$x$と$y$にどう分配するかを考えればよく,\ そこには有限個の組合せしかない.
 この場合は,\ $(x,\ y)=(1,\ 6),\ (6,\ 1),\ (2,\ 3),\ (3,\ 2)$の4組というわけである.
 実際の問題では,\ $(文字式)×(文字式)=(具体的な整数)$に変形できないかを考える.
 このように,\ 積の形を作って素因数分解と結びつけることが本項の発想の根幹である.
{x+yとx-yの偶奇は一致する}
右辺を整数24のみにしてみると,\ 左辺が因数分解でき,\ (文字式)×(文字式)=(整数)の形になる.
x^2-y^2=k型}は,\ 積の形を作る最も基本的なタイプの不定方程式で,\ 超頻出である.
ここで,\ 積が24の2整数の組合せは,\ (24,\ 1),\ (8,\ 3)や(1,\ 24)や(-\,1,\ -\,24)等,\ 16組もある.
これらをしらみつぶしするのは面倒なので,\ あらかじめ可能性を絞り込んでおく}ことが重要になる.
よく利用する絞り込みの発想として,\ ここでは以下の2つを習得しておいてほしい.
 「各因数の範囲を調べる」「2つの因数の和・差を求めてみる」}
x,\ yは自然数なのでx+y≧2であり,\ (-\,1,\ -\,24)のような負数の組合せの可能性が消える.
(x+y,\ x-y)=(1,\ 24)の可能性も消えるから,\ これだけで7組にまで絞られる.
加えて,\ 因数の差を考慮すると因数の大小関係}がわかる.
(2,\ 12)のようにx-yのほうが大きくなる組合せの可能性はなくなり,\ 4組にまで絞られる.
ここまででもかなり絞り込めたが,\ 本問の場合はさらに踏み込める.
因数の差が2の倍数となるのは,\ (偶数)-(偶数)または(奇数)-(奇数)}の場合である.
よって,\ 偶数と奇数の組合せである(8,\ 3),\ (24,\ 1)の可能性もなくなり,\ わずか2組に絞られる.
難易度は上がるが,\ このように約数・倍数・余りにも着目}すると,\ より厳しく絞れることがある.
(文字式)×(文字式)=(整数)の形にするという発想さえあれば,\ 何次式でもビビる必要はない.
試しに整数5を右辺に分離してみると,\ 左辺が容易に因数分解できる.
本問のx,\ yは自然数ではなく整数であるから,\ 各因数の範囲を調べて絞り込むことはできない.
実数xの2次以上の方程式では,\ =0の形に変形することが基本である.
これに慣れすぎて,\ 方程式は=0に変形して解くという固定観念をもってしまっている学生が多い.
すると,\ =5に抵抗感や違和感を感じ,\ 本問のような簡単な整数問題でも解けなくなってしまう.
そもそも,\ なぜ実数xの2次方程式を解くとき=0の形に変形するのだろうか.
それは,\ =0の場合にのみ成り立つ「\,AB=0\ ⇔\ A=0\ または\ B=0\,」を利用するためである.
これを利用しないのであれば,\ 無理して=0の形に変形する必要性はない.
整数分野では=5とするほうが自然な変形といえる}ので,\ 当たり前と思えるほどに慣れてほしい.
別解は,\ 次数の低い文字について解く}ものである.
1文字について解いてそれが整数になる条件を考える}というのは,\ 非常に汎用性が高い考え方である.
x≠0を確認した上でxで割りy=の形にすると,\ 分数が整数になる条件}を考えることに帰着する.
xが整数のとき -x^2+2は必ず整数となるから,\ 後は\,5x\,さえ整数になればyも整数になる.
分子が定数の分数であれば,\ それが整数になる条件は「分母が分子の約数」}である.
なお,\ 分数が整数になる条件については,\ 分子が定数でない場合も含め,\ 別項で改めて取り上げる.
8を右辺に分離してみても,\ 左辺を因数分解することはできない.
だからといって,\ ここで(文字式)×(文字式)=(整数)への変形をあきらめてはならない.
とりあえず,\ 複数の文字を含む因数分解の基本に従い,\ 次数が低い文字で整理してみよう.}
1次のyで整理すると (x+1)y+x^2-x-8=0
ここで,\ 整数問題では右辺は整数ならば何でもよいから,\ 左辺の定数項は自由に変更できる.}
よって,\ 8でなくても,\ (x+1)y+x^2-x+A\ (A:整数)が因数分解できればよい.
これが因数分解できるように,\ 以下のように無理矢理共通因数(x+1)を作ることを考える.
 (x+1)y+x^2-x+A=(x+1)y+(x+1)(x+B)\ \ (B:整数)
つまり,\ x^2-x+A=x^2+(B+1)x+Bが成り立てばよく,\ A=-\,2,\ B=-\,2とすればよい.
以上を踏まえると,\ 実際には以下の手順で変形していけばよいことがわかる.
 (x+1)y+x^2-x-8=0
 (x+1)y+x^2-x-2=6
 (x+1)y+(x+1)(x-2)=6
 (x+1)(y+x-2)=6
後は,\ 各因数の範囲を考慮した上で組合せを考えればよい.
因数の差x+y-2-(x+1)=y-3≧-\,2\ (\,\because\ y≧1\,)まで考慮すると,\ (1,\ 6)も除外できる.
1次のyについて解くと,\ 2次式}{1次式}\,の分数式ができる(別解).
分数式の基本的な扱い方は数II}の学習内容なので,\ 軽く触れるに留める.
分数式は,\ 分子の次数を分母よりも低くする}のが基本である(整式の割り算を利用).
本問は分母が1次式なので,\ 分子を定数のみにすることができる.
この考え方ならば,\ 本解のように技巧的な変形をせずとも,\ 自然な流れで解答できる. \\[-9zh]
式の形的には(2)と似ているが,\ 9を分離しても因数分解できない.\ 結局,\ (3)と同様の扱いとなる.
 (x-2)y+x^3-9=0 (1次のyで整理)
 (x-2)y+x^3-8=1\ \ ・・・・・・\,①
 (x-2)y+(x-2)(x^2+2x+4)=1
 (x-2)(y+x^2+2x+4)=1
①は,\ 共通因数(x-2)を作るための変形である.
公式a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)の利用を想定する必要がある. \\[-9zh]
2を右辺に分離してみても,\ 左辺を因数分解することはできない.
また,\ xもyも2次なので,\ 次数の低い文字で整理して共通因数を無理矢理作ることもできない.
2次式であれば,\ とりあえず平方完成してみる}とよい.
本問の場合,\ xとyのそれぞれについて平方完成することができる.
もしかしたら,\ X^2+Y^2=kの形を作り出せるかもしれない.
そうすると,\ 常にX^2≧0,\ Y^2≧0を利用して絞り込むこめるのは,\ 前項で学習した通りである.
しかし,\ 本問は( )^2-( )^2-5=0となるために,\ 不等式で絞り込むことはできない.
万事休すかと思いきや,\ (2乗)-(2乗)であれば因数分解できる}ではないか.
定数5を右辺に移項すると,\ X^2-Y^2=k型}に帰着する.
x^2+ax± y^2+by+c=0型は,\ 平方完成によりX^2+Y^2=kまたはX^2-Y^2=k型に帰着する.
x+y+1の範囲を考慮するだけで,\ 組合せは1組に絞られる.
なお,\ x+y+1-(x-y+3)=2(y-1)≧0\ (\,\because\ y≧1\,)\ より,\ x+y+1≧ x-y+3\ もわかる.
解の公式を用いて1文字について解く方針で求めることも可能である.
しかし,\ 本問は双曲線型ゆえに単純にD≧0での絞り込みができない.\ 詳しくは別項で取り扱う.