次の式を展開せよ. {単項式と多項式,\ または多項式と多項式の積を単項式の和の形に表すこと}を展開するという. 上で示したように,\ {それぞれの多項式のすべての項同士をかけた後に足し合わせる}ことになる. {同類項(同じ文字が同じ個数だけかけ合わされている項)があればまとめ,\ 降べきの順に並べる.} {降(こう)べきの順に並べる}とは,\ {次数の高い項から順に並べる}こと. 2x³+3x²-4x+5 逆に,\ 次数の低い順に並べることを{昇(しょう)べきの順に並べる}という. 5-4x+3x²+2x³ 5+2x³-4x+3x²\ のように並べ直さずに解答しても間違いではないが,\ 絶対にやめて欲しい. このように書くと,\ 入念に観察しない限り何次式なのか,\ 何次の項があるのかなどがわからない. 中学生のうちに数式を整理する癖をつけておかなければ,\ 今後より式が複雑になると混乱する. なお,\ 普通は昇べきの順に並べることはない.\ 降べきの順に並べる. 展開は,\ 結局は分配法則\ a(b+c)=ab+ac,(a+b)c=ac+bc\ を繰り返し用いているにすぎない. 分配法則を適用するために,\ a+b=Aとおく. (a+b)(c+d)=A(c+d)=Ac+Ad=(a+b)c+(a+b)d=ac+bc+ad+bd 途中過程を丁寧に記述してみたが,\ これを省略できるまでに慣れてほしい. 特に,\ やは一発で最終的な答えを書きたい.\ 速い人ならば10秒以内にすべて完了する. 項の数が3つ以上でも同じ要領で展開できる.\ 展開後,\ 同類項をまとめて降べきの順に並べる. 複数の文字がある場合,\ {1つの文字について降べきの順に並べる}のが1つの整理法である. xのみについてみると(yを無視すると),\ x³は3次,\ x²yは2次,\ xy²は1次,\ y³は定数である. 公式を知らなくても,\ (a+b)²=(a+b)(a+b)\ と考えて展開すれば答えにたどりつける. 実際,\ 次のようにして乗法公式が導かれる. (a+b)²=(a+b)(a+b)=a²+ab+ba+b²=a²+2ab+b² (a-b)²=(a-b)(a-b)=a²-ab-ba+b²=a²-2ab+b² (a-b)²については,\ {a+(-b)}²\ とみなして\ (a+b)²=a²+2ab+b²\ にあてはめてもよい. つまり,\ (a+b)²=a²+2ab+b²\ においてbを-bに変えればよい. {a+(-b)}²=a²+2a(-b)+(-b)²=a²-2ab+b² しかし,\ いちいちこのように計算するのは時間の無駄である. 中学生の間はよくても高校生になると通用しなくなる. {公式を暗記しておいてあてはめる}ことに中学生のうちから慣れておきたい. 公式が文字だとわかりにくいと感じる人は次のように考えるとわかりやすいかもしれない. (○+△)²=○²+2○△+△² (○-△)²=○²-2○△+△² -2xを○,\ 3yを△と考えて\ (○+△)²=○²+2○△+△²\ を適用したのが本解である. 一方,\ 3yを○,\ 2xを△と考えて\ (○-△)²=○²-2○△+△²\ を適用したのが別解である. 当然,\ この公式も{暗記}する. (○+△)(○-△)=○²-△²\ と考えてもよい. 一見すると公式の形ではないように見えるが,\ 和を入れ替えると公式が適用できる. 当然,\ (a+b)(a-b)=(a-b)(a+b)=a²-b²\ である. -2aを○,\ 3bを△と考えて\ (○+△)(○-△)=○²-△²\ を適用した. 共通部分がある問題は,\ {共通部分を1つの文字に置き換える}と計算が楽になる. 置き換えてから展開する. (A-5)(A+4)=A²+4A-5A-20=A²-A-20 その後,\ 置き換えた文字を元の式に戻す. 2x+3yをまとめて1つのものとしているから,\ {かっこをつけて元の式に戻す}. かっこをつけずに\ 2x+3y²-2x+3y-20\ とすると間違える. 2乗や-は2x+3y全体にかかってくるのである. さらに,\ (2x+3y)²\ を公式\ (a+b)²=a²+2ab+b²\ を適用して展開する. 置き換えると公式\ (a+b)(a-b)=a²-b²\ が適用できる. さらに,\ (a-4b)²\ に公式\ (a-b)²=a²-2ab+b²\ を適用して展開する. 一見して3y+2=Aとおきたくなるが,\ これはできない. 置き換えるときは,\ それを1つのものとして置き換えることになる. ここで,\ 1つのものとみなすことはかっこをつけることに等しい. 常に記述の必要があるわけではないが,\ 実際には{かっこをつけてから置き換える}扱いになる. たとえばa+b+c=a+(b+c)より,\ b+c=Aとおくと\ a+b+c=a+(b+c)=a+A\ である. 一方,\ a-b+c=a-(b+c)\ {ではない}から,\ b+c=A\ とおくことはできない. a-b+c=a-(b-c)\ より,\ b-c=Aとおいて\ a-b+c=a-(b-c)=a-A\ とはできる. このように,\ {前に-がついている式を置き換える場合には注意が必要である.} 結局,\ 本問は{並び替えるとx+2が共通していることに着目}して置き換える必要がある. よく観察しても共通部分は見当たらない. そこで,\ {-a+b=-(a-b)}\ であることを利用して共通部分を作り出す. 前に-がついている式にかっこをつけると,\ かっこの中の符号が逆になることを利用するのである. 最初は経験がないと難しいが,\ よく使われるのでこの考え方・計算方法を習得してほしい. ただし,\ 上手い方法に気付かなくても,\ 順番に計算していけば確実に求められるのが展開計算である. 最後\ (2b-3c)²\ を展開するとき,\ 全体に前の-がかかってくることに注意する. よって,\ かっこをつけたまま展開する.\ かっこをつけずに\ a²-4b²-12bc+9c²\ としてはならない. {公式\ (a+b)²=a²+2ab+b²\ が適用できるように一部を1つの文字に置き換える.} 本問は,\ 最後に3文字x,\ y,\ zが循環する(x→y→z→x)ように並べるのが普通である. 本問の結果は公式として暗記しておくとよい. {(a+b+c)²=a²+b²+c²+2ab+2bc+2ca} 公式\ (a+b)²=a²+b²+2ab\ を拡張した公式である.