連続する3つの整数の和が3の倍数であることを示せ. 連続する3つの偶数の和が真ん中の数の3倍であることを示せ. 3つの奇数の和が奇数であることを示せ. 文字式の利用 整数の性質 連続する3つの整数のうち最も小さい整数を$n$とする. { }$このとき,\ 3つの整数は\ n,n+1,n+2}$\ と表せる. { }$その和は n}+(n+1})+(n+2})=n+n+1+n+2=3n+3=3(n+1)}$ { }$nは整数なので,\ n+1も整数である.$ { }$よって,\ 3(n+1)は3の倍数}である.$ { }$したがって,\ {連続する3つの整数の和は3の倍数である.}$ 連続する3つの整数のうち真ん中の数を$n$とする. { }$このとき,\ 3つの整数は\ n-1,n,n+1}$\ と表せる. { }$その和は (n-1})+n}+(n+1})=n-1+n+n+1=3n}$ { }$nは整数なので,\ 3nは3の倍数}である.$ { }$したがって,\ {連続する3つの整数の和は3の倍数である.}$ $[l} 例えば,\ 連続する3つの整数1,\ 2,\ 3の和は1+2+3=6なので3の倍数である. 同様に,\ 連続する3つの整数2,\ 3,\ 4の和は2+3+4=9なので3の倍数である. 数学の証明問題では,\ 特定の場合にのみ成り立つことを示すだけでは不十分である. {どの連続する3つの整数に対してもこの規則が成り立つことを示す}必要がある. しかし,\ 整数は無限にあるので1つずつ確認していっても永遠に終わらない. そこで{数の代わりに文字を利用}する.\ 文字はすべての数の代わりとして用いることができる. つまり,\ {文字を用いて示せば,\ すべての数について示したことになる}わけである. まず,\ 連続する3つの整数を文字を用いて設定する. 3つのうち最も小さい整数をnとすると,\ 続く2つの整数はn+1,\ n+2と表せる. 文字としてnを用いたことに特別な意味はなく,\ 別にaでもAでもxでも何でもよい. ただし,\ 整数を表すときはnを用いるのが慣例なので,\ それに従うのがよい. おそらく,\ 数(number})や自然数(natural number})の頭文字に由来しているのだろう. さて,\ {証明問題では数式だけでなく日本語で丁寧に説明を行う必要がある.} いきなりn+(n+1)+(n+2)=などと書かれても,\ nが何であるのかが採点者にはわからない. 解答者が理解できていても,\ それを採点者が見て判断できない場合には減点は避けられない. {自分で文字を設定したときは,\ 何をどう設定したのかを誰が見てもわかるように丁寧に記述する.} 設定後は和を計算するわけだが,\ {あらかじめ最終目標を確認・意識しておく.} 計算問題とは異なり,\ 証明問題では最初から結果がわかっている. よって,\ それを最初に確認しておき,\ そこを目指して計算や思考をしていくべきである. 本問の場合,\ 3の倍数であることを示すことが最終目標である. ここで,\ 3の倍数とは{3を整数倍した数},\ つまり\ {3(整数)の形で表せる数}である. よって,\ {和を3(整数)の形で表すことができれば,\ 3の倍数であることが示されたことになる.} 和が3n+3となるが,\ 3(整数)の形にするために分配法則の逆\ ab+ac=a(b+c)\ を適用する. 3(n+1)となるが,\ これを直ちに3の倍数であると判断してはならない. もし{n+1が整数でない場合,\ 3(n+1)が3の倍数になるとは限らない}からである. 例えば\ n+1=23\ のとき,\ 3(n+1)=323=2\ なので3の倍数ではない. よって,\ n+1が整数であることを示さなければ,\ 3(n+1)が3の倍数であると断定できない. 結局,\ {「nは整数なので,\ それに1を加えたn+1も整数である」という内容の記述が必要になる.} このように,\ {文字を用いると数の場合にはなかった思わぬ落とし穴が生じる}ことがある. 文字はあらゆる数の代用であるため,\ 例外に注意を要するわけである. これらの落とし穴は気付きにくいので,\ 慎重な学習が要求される. 最後,\ 何が示されたかを明確に記述して終える. 別解のように,\ {連続する3つの整数を対称的に設定する}と後の計算が楽になることが多い. 整数を$n$とすると,\ 連続する3つの偶数の真ん中の数を$2n$と表せる. { }$このとき,\ 3つの偶数は\ { }$nは整数なので,\ 2nも整数である.$ { }$よって,\ 32nは3の倍数}である.\ また,\ 2nは真ん中の数}である.$ { }$したがって,\ {連続する3つの偶数の和は真ん中の数の3倍である.} 偶数(2の倍数)とは2を整数倍した数,\ つまり\ 2(整数)\ である. よって,\ 整数をnとして偶数を2nと設定できる. 後の計算を楽にするため,\ 真ん中の数を2nとして対称的に設定した. 最終目標は,\ {和が3(真ん中の数)と表せることを示す}ことである. 真ん中の数2nの3倍であることを強調するため,\ 6nではなく32nとするのがポイントである. 連続する3つの偶数のうち最も小さい数を2nとすると,\ 3つの偶数は2n,\ 2n+2,\ 2n+4\ と表せる. その和は 2n+(2n+2)+(2n+4)=2n+2n+2+2n+4=6n+6=3(2n+2) すなわち,\ 真ん中の数2n+2の3倍であることが示される. この場合もあらかじめ最終目標をみすえて,\ 6(n+1)としてしまわないことがポイントである. $l,\ m,\ n$を整数とすると,\ 3つの奇数は { }$l,\ m,\ nは整数なので,\ l+m+n+1も整数である.$ { }$よって,\ 2(l+m+n+1)は偶数で,\ 2(l+m+n+1)+1}は奇数である.$ { }$したがって,\ {3つの奇数の和は奇数である.}$ $[l} 奇数は{(偶数)+1}と考えると整数nを用いて表現できる.\ {(偶数)-1}と考えてもよい. ここで,\ ,\ とは異なり,\ {3つの奇数が連続しているとは限らない}ことに注意する. よって,\ 2n+1,2n+3,2n+5\ のように連続する奇数として設定してはならない. このように設定すると,\ 連続している場合に限って示したことになってしまう. 連続していない3つの奇数の和についても成り立つことを示さなければならない(5,\ 9,\ 17). そのために,\ {3つの別の文字を用いて3つの奇数を設定する}必要がある. アルファベット順でnと近いl,\ mを用いるのが普通である. nの後のoは0と混同するので数式では普通使わない. なお,\ lも1と混同しやすいので筆記体のℓを使うことを推奨する. 最終目標は,\ {和が2(整数)+1と表せることを示す}ことである. そのためには,\ 2でくくれるものをすべてくくることを考える. 2l+2m+2n+3であるが,\ これを2l+2m+2n+2+1と考えて2をくくり出す. l+m+n+1が整数であることを忘れずに確認する.